一章〔26〕蟻地獄
懐かしいなと過去に思いを馳せる。
俺は突然変異種だ。ほかのミノタウロスとはランク的にも、生物的にも違う。他のミノタウロスが〚呪い〛として〚狂牛病〛を所持してるのに対し、俺のは【スキル】だ。
自由にミノタウロス形態と獣人形態を変えれる。そもそも、普通のミノタウロスに獣人形態はない。これは突然変異種の俺だからあるものだ。
人の言葉も、牛の言葉も話せるのは獣人形態があるおかげだ。しかし、獣人形態時はAランク程度の力しかない。
だが、サイズは小さくなり、消費する体力も少ない。だから、普段は獣人形態でいる。
ミノタウロスになるのは余程のことがないとない。そもそも俺のことを襲ってくる魔物はこの森には少ない。
俺は現在SSランクである。通常のミノタウロスはSランクであるが俺は
突然変異種だ。だからほかよりランクは高い。ただ、突然変異種にはまだ可能性が残されている。
それは覚醒。
能力を使いこなせるようになったとき。覚醒しSSSランク、なかには神ランクになるものもいる。
俺はこの森の中で唯一の突然変異種であり森の中の魔物としては一番強い。だから俺を襲おうとするのは自我も何もない食べることしか考えられない馬鹿な魔物だけだ。この森にはそんな馬鹿がたくさんいる。
前に、魔物が結託してラヴィルの牧場を襲ったことがある。30体ほどのAからSランクの魔物だ。しかし、誰一人と生きて帰ってくることはなかった。それに、牧場の牛も全員無事。
ラヴィルが全ての魔物を一瞬にして倒し、無傷で帰っていったのだ。
ラヴィルは神ランクだ。それだけ、ランクの差というのは絶対的な差なのだ。
話を戻そう。今目の前にいる牛は、Sランクの魔物に対し無傷で今ここにいる。
だが、2364番は病気がちでそんなに動けないはずだ。それに、
〈あのぉ、できたら、早く助けていただきたいです〉
こんな喋り方じゃなかった。もっと、なんかハキハキしてた。病気がちだったけど元気はいいやつだった。
まぁ、違和感があるが、どっちみち助けるつもりではあった。
「そこで待ってろってよ」
〈ミノタさんありがとう!〉
とりあえず砂のせいで上がれない状況だ。何か足場があれば登ってこれるだろう。
「上から木をぶん投げるってよ!それに乗って出てこいってよ!」
〈わかった!〉
ん?
そういえば俺は人間の言葉で話している。この牛は、何で理解できてるんだ?
まぁ、とりあえず。近くの木の枝を折って斜面に投げ入れる。
「これで登れるかってよ?」
〈まじ助かった!!ありがと!〉
「一つ質問していいか?なんでお前は人の言葉理解できるってよ?」
〈あ、いろいろ、ありまして、〉
「そのいろいろが知りたいんだが、とりあえず家の洞窟来るってよ!」
ここは魔物が多く危ない。とりあえず家の洞窟に案内することにした。こいつは怪しいが悪いやつではなさそうだ。
見た目は2364番なのに何もかも違う。
〈助けてくださりありがとうございます!〉
礼儀正しいし、元気もいい。
「あのよ、お前は誰なんだってよ?」
〈俺は明星 朝日です!〉
この時の自分はどんな顔をしていたのだろう。
この牛は、いや彼は、俺の光になるのだろうか。
今の俺には分からなかった。




