一章〔22〕意味のある別れ
餌を食べ終わり、太陽は沈む。オレンジ色に光る美しい牧場。
俺は今ここから出る。作戦は単純だ。端っこの方に行って、あとは全力で走る!
〈行くぞ!トヨの助!〉
〈とよ!〉
ただの牛2頭。相手は化け物のような強さのラヴィル。星の力でどこまで抗えるか。さっき食べた草のおかげか少し気分がハイになってる。魔法も使える気がする。
〈とよは柵まで行ったら牧場に戻るとよ〉
〈え、?〉
〈2頭で行っても目立つだけとよ〉
〈でも、それだと殺されるかもだぞ。ラヴィルに怪しまれるぞ〉
〈とよは、足手まといになるとよ。それに、とよがおとりになれば時間は稼げるとよ〉
トヨの助が言ってることもわかる。2頭で行っても目立つだけだ。それに能力がないトヨの助は足手まといになる。その上、俺では守りきれない。前のアースの時とは違って俺は弱い。でも、友達を置いて逃げ出したくはない。
〈とよは助けられなかったとよ。2362番のことを〉
〈それは俺のせいだ。トヨの助は何も悪くない〉
自分が奪った。命を。俺は生前の2362番を知らない。
〈最近、2362番はよく自分の体を舐めてたとよ。朝日は分からないかもしれないかもとよけど、不安とかストレスとか感じてるとあーなるとよ。たまにふらついて変な方向行ったりとか、急に奇声をあげたりとかしてたとよ〉
あまり詳しくはないが、死期を悟った動物が変な行動を取ると聞いたことがある。牛達がどこまで理解できているのかはわからない。でも、何かを感じたのだと思う。
〈とよは、朝日が来てくれて良かったとよ。2362番は苦しんでたとよ。それを解放してくれたとよ。きっと、苦しまずに行けたと思うとよ。空の楽園に。だから友達を救ってくれて、ありがとうとよ。今度はとよが助ける番とよ〉
本当にこれが正しい選択なのだろうか。自分一人だけ逃げだして。本当に2362番は苦しまなかったのだろうか。この力は誰かを救うことができるのだろうか。命を奪うだけの力ではないのだろうか。
まだ、分からない。
〈ついたとよ後は、朝日は走って外に出るとよ。〉
〈トヨの助、今は一緒に外に出れない。でも、必ず迎えに来る。だから待っててくれ〉
〈楽しみに待ってるとよ。だから生きて出てくとよ〉
さようならは言わない。ただ、お互い目を合わせ頷いた。それだけで十分だった。
そして、俺は柵へと走り出した。




