一章〔1〕目覚める明星
「ガァォァア!!! うがっ、、」
全身を針で突き刺したかのような痛みで目を覚ます。
死んだよな俺。
先程、俺はカラオケに向かう途中トラックに轢かれた。あんまり記憶はないが、確実に死んだはずだ。
そう思いつつもとりあえず辺りを見渡す。
薄暗く狭い洞窟。端の方にはキラキラと光る何かがある。鉱石なのだろうか。
上を見ると大きな穴が空いていてそこから風が吹いてきている。
今自分は一体どこにいるのだろう。
よく分からないがここは生と死の間の空間なのだろうか。
今、身体は少し痺れているがまだ動く。
しかし、全身が痛い。 視界もグラグラと揺れていてよく見えない。
あんまり、動きたいとは思わない。このまま死ぬのだろうか。
いや、もう死んでいるのだろうか。
洞窟の中でただ横になり時間だけが過ぎていく。
何もかも放棄してこのまま消えてしまいたい。もう疲れた。
痛みが体を襲い続けている。意識を手放そうとしてもできない。今、手放してしまったら、俺は本当に死ぬのではないだろうか。
それは魂が死ぬことになるのではないだろうか。
「んぇ、? 大丈夫!?」
声がした気がする。こんな場所に人などいないはずだ。きっと幻聴だろう。視界は白くぼやけ先程より見えなくなっている。
もう時期何も見えなくなるだろう。
「ねぇ生きてる!?」
やっぱり声がする気がする。白くぼやけた視界の中に光のようなものが差し込んでいる。これは天使なのだろうか、神なのだろうか。
ついに迎えが来たのか。
「え、死んでる? これ死んでるやつなのかな? なんか、動いた気がしたんだけど、気の所為だったのかな、、、? あの、生きてますか?」
身体を揺らされ、肩を叩かれ、声を聞いた。
「まだ、生きてそう。とりあえず回復させなきゃ」
《リライフ》
体を柔らかな光が包み覆う。
そして、視界が少し回復してそこにいる者がみえた。
その声の主は天使でも、神でもなくただの可愛い少女だった。
痛みからか、疲れからかはたまた安心からだろうか、再び自分は意識を失った。
どのくらい時間が経ったのだろう。 気づいたら柔らかい感触が頭の下にある。
そして、上を向くと心配そうにこちらを見ている紺色の髪の少女がいた。
「起きた? よかった、生きてて。 とりあえずは大丈夫そう?」
青い瞳に少し丸顔の可愛らしい顔。耳障りの良いはっきりとした声。白い制服のようなものを着ていてとても似合っている。
「まだ、無理はしなくていいよ。もう少しおねんねする?」
とても優しい少女だ。見ず知らずの自分を回復させて、今膝枕もしてくれている。
「もぶ、だいぜうぶ。ありがとう」
しばらくぶりに声を出したからか喉が詰まり、上手く発音できてなかった。ただ最初の方の痛みや視界の揺れはほとんどなくなっていた。
「えっと、どういたしまして。 あ、敬語じゃないとだめだよね! うんと、とりあえずあなたは誰なんでしょうですか?」
敬語かは分からないが頑張っているのは伝わる。
「 起きてすぐにごめんなさいです!なんかね色んな人から知らない人と関わるなみたいなの言われてるから。だから知ってる人になってほしいの!」
何を言ってるか意味がわからない。初対面だけど自己紹介したら知り合いになる的なことだろうか。
「俺は、明星 朝日です。えっと、18歳の学生です」
「学生? 分かりませんなのです。あれ、てか同い年なんだね。じゃあ敬語やめていいでしょうですか?」
「うん」と頷きながら相手の顔をみる。 すごく可愛い。こんなに可愛い人はテレビでも見たことがない。
「なら敬語やめるね!私は騎士隊第4部隊所属のチアキ・ブレードっていうの! チアキってよんでね!」
騎士隊?
「アケボシくんよろしくね!」
手をこちらに差し伸べ握手を求めてくる。初対面にしては近すぎる距離感に戸惑いつつも「よろしく」と握手を返し頭をフル回転させる。
明らかに色々とおかしい。少し落ち着いて状況が把握できるようになった。
俺はトラックに轢かれて死んだはずだ。そして今よく分からない洞窟の中にいる。
痛みが体を襲っていたが柔らかな光でその痛みや視界等が治った。
そして、目の前には紺色の髪で青い瞳の少女がいる。よく耳を見てみると先が少し尖っている。それに、白い制服をしていて腰には短刀が入っている。
明らかに普通の人間ではない。
先程騎士と言っていたり、魔法のようなものがあったことを踏まえて考えるとこれは、
異世界転生…?
今考えられるのはこれくらいしか思いつかない。
見える範囲で自身の体をよく見ると腕や足が全く知らない。自分の体とは全然違う。喉の違和感だったり不可思議な現象の理由も自分が異世界転生したとしたなら、無理矢理納得できる。
「どうしたの? 難しい顔してるよ? まだ痛い?」
チアキ・ブレードと名乗った少女はこちらを心配そうに覗き込んでくる。
「ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫。もう平気」
「そっか! ならよかった! でもなんかあったら言ってね!」
今はまだ何もわからない。
けれど、自分が今やるべきことは彼女に少しでも恩返しすることだろう。
そして始まったのだ。
星を喰らう者の物語が。




