一章〔18〕異世界友達
〈とりあえずわかったとよ。なんか、おかしいとよと思ってたとよ〉
意外とすんなり信じてくれたことに驚いた。チアキもそうだがこの世界の住民はみんな優しいし、すぐ信じてくれる。
〈本物の2362番はどこにいるとよ?〉
〈ごめん。分からない〉
2頭の間に沈黙が訪れる。まだ自分の能力について何も理解できていない。
〈嘘はなさそうとよね。〉
〈ありがとう。ごめん、ずっと、黙ってて〉
〈これからどうするとよ?〉
〈俺はここから出たい。だから、助けてほしい〉
この牛に頼ったところでどうにかなるとは思えない。でも、頼れるのはこの牛しかいない。
〈一つだけ約束とよ。絶対に死んだらだめとよ〉
〈分かった。そういえば前に2364番が牧場外にいるって話してなかったか?〉
〈ミノタは特別とよ。出るのは相当難しいとよ〉
ミノタ、ここにいる牛は全員番号で呼ばれていると思っていた。そしてここから出れた前例があるということに驚いた。
〈どうやって出たの?〉
〈牛舎の奥に出れる通路があるとよ。そこまで行けば出れるとよ〉
〈分かった。とりあえず見に行ってくる。〉
〈待つとよ!!〉
突然の大声に驚く。いつもとは違う雰囲気だ。
〈今行っても死ぬだけとよ。これまでも何匹も死んでいったとよ〉
〈なんで、そんな外にでたがる牛が多いんだ?〉
〈ラヴィルが原因とよ。あれは化け物とよ。会うだけで感じる恐怖。でも、あれがいる間は出れないとよ〉
恐らくラヴィルとは黒肌美女のことだろう。どこかで聞いたことのあるような名前だが思い出せない。
〈じゃあ、どうすれば?〉
〈チャンスは夕方から夜とよ〉
そういえば前倒れたときは夕方だった。朝から昼はラヴィル、夕方から夜はあのお爺さんがここの管理をしているのだろう。
〈なら今日の夕方に出るよ。いろいろありがとうね〉
〈一人で行くつもりとよ?〉
〈一緒に来てくれるのか?〉
〈案内する代わりに頼みがあるとよ〉
牛は顔を赤らめながら頼みの内容を話し始めた。
〈なら、名前をつけてほしいとよ〉
頼み事は意外なことだった。
〈だめとよ?〉
〈いいよ、もちろん!〉
よだれで滝が出来そうなレベルで口から液体が溢れている。それに、首と尻尾をブンブン回しながらなんかすごいテンション上がってる。
だが、いざ名前をつけるとなると難しい。ペットと違ってこの牛は会話ができる。人間風の名前のほうがいいのか、ペット的な、名前にするべきか……
〈早く決めてとよ!とよとよ!!とよーとよよぉ!〉
とよ、とよ…
なんかいいのが、降ってきそう。何か、来てる。
頭の中にぼんやりと浮かんだ言葉を口に出す。
〈トヨの助!〉
なんか古臭い名前だが、かなり上出来だと思う。
〈ありがとうとよ!!トヨの助いい名前とよ!気に入ったとよ!本当にありがとうとよ!〉
本人も喜んでるしとりあえずいいだろう。
〈どういたしまして、トヨの助!〉
こうして異世界で初めての友人ができたのだった。




