一章〔15〕四時間の無駄足
死なないと決めたものの状況は最悪だ。牛語しか話せないうえ、魔法も使えない。そもそもどうやって牧場から抜け出そうか。
牧場の端の方を見ると柵がある。あそこを越えれれば出れるだろう。柵の方を目指し歩いていく。
1時間。進んでいる気がしない。
2時間。半分くらい来たのだろうか。
3時間。周りに牛がいなくなってきた。
そんなこんなで4時間歩き続け柵に着いたのだった。遠くから見たら越えられそうな高さだったがいざ近づいて見てみると牛2頭分ある。1人で超えることが出来なそうだ。
〈も〜!!! 〉
とりあえず鳴いておく。スッキリした。思っていたよりも牧場は大きかった。そして、牛歩でしか進めない。走ってもすぐ疲れてしまう。
どうしよう。
とりあえず帰路につく。四時間かけて帰るのはめんどくさいが、ここにいてもどうしようもできない。そして、歩いている中で色々思い出してきた。さっき死んだのは夢じゃなかった。俺は殺されたんだと。
次の鐘がなる前に帰らないと多分怪しまれてまた殺される。ただ帰れる気がしない。可能性があるとしたら、スキルの加速や転移魔法だろう。
とりあえず魔法は「うーんっ! 」ってやれば出ることがわかったが、ガイアードしか今のところ使えない。スキルも「ドーンっ! 」てやれば出るのだろうか?
ものは試しだ。なんか強く願ってみる。スキルスキルスキルスキル……
いける気がする__
【反芻】
胃の中から何か上がってくる感覚。まずい。
〈ゴボォォォオェェェ〉
辺り一面に吐しゃ物を撒き散らす。不思議なことに気持ち悪くない。ただ中から外に出る感覚というのだろうか、スッキリした!
ただこれがスキルと言われても、ちょっと、なんか思ってたのと違う。もっと、なんか強くなるとか、そういうの期待してた。しょぼい。そんな事を考えていると声がした。
「んぉ〜、そこの牛体調悪いのか? んぉ、この台車に乗りぃ」
見た目はかなりのおじいちゃん。めちゃくちゃ牧場主ぽい。さっきの黒肌美少女のお祖父ちゃん? なのだろうか。とりあえず乗らせてもらう。
「んぉ〜、それにしてもなんでこんな遠いところにいるんじゃ? んぉ、鐘を鳴らしても来ないから心配したんじゃぞ」
このお爺ちゃんは優しい。この人なら助けてくれるかもしれないという希望を見出した。
しかしながら、しょぼいと思っていたスキルのおかげで助けられたんだな。
ありがとうスキル。
ありがとう反芻。
ありがとう嘔吐。
そんなしょうもないことを考えながら台車の上で眠りについたのだった。




