一章〔12〕牛
〈クッサぁぁ!!〉
物凄い匂いで目を覚ます。なんだか視界がきもい。真横が見える。周りには乳牛がいっぱいいる。
〈ここ、天国か?〉
状況を全く理解できない。さっき焼き焦げて死んだはずだ。周りには草原が広がっている。牧場のような気がするが、さっき俺は死んだはずだ。
あと『もぉ』としか音を発せられない。何を言っても『もぉ』という音になる。喉の構造が人間と違うからだと思う。
とりあえず何かできることはないかと周りを探る。広大な草原、端っこのほうには森が見える。牛舎のような建物も見える。周りには自分と同じ姿の牛しかいない。人の気配は感じられない。
〈もぉ〜!〉
とりあえず牛になったので存分に鳴いておこうという謎の行為をして落ち着く。周りの牛から変な目で見られてる気がするがこんな機会滅多にないのでとりあえず鳴く。
〈もぉぉ〜!!〉
正直かなり詰み状態だ。生きてるのか死んでるのかも分からない。死んだら牛になって牧場に行く可能性もあるだろう。だって死んだこと一度しかないから。二回転生なんてできるのだろうか。あとここはどっちの世界なのかも分からない。なので魔法が使えるかどうかを試してみることにした。
集中して、なんかパーってやる!!
見えた!
《ガイアード》
目の前に巨大な土の塊が浮かびかけ崩れる。上手く使えない。そして反動でくらくらする。しかし前に比べてわりといける。昔調子に乗って飲んだお酒の感じと似ている。魔法酔いという感じだろう。視界も気持ち悪いし吐き気がすごい。
〈大丈夫とよ?〉
こちらに牛が声をかけてきた。も〜と言う音しか聞こえないが意味を理解できる。不思議な感覚だ。
〈大丈夫!心配しないで!〉
〈そうとよ?またなんかあったらいうとよよ!〉
気のいい牛だ。とりあえず今は1人で頑張ってみよう。前のように誰かを危険に巻き込みたくない。
そういえばチアキは無事に逃げれたのだろうか。とりあえずここが天国ではない事は分かった。そして魔法が使えることからここはさっき死んだ世界と同じだろう。
とりあえずもう一度魔法を試してみる。先ほど失敗した理由が分からないと困る。
《ガイアード》
やっぱりうまく魔法が使えない。砂煙は上がるがすぐ霧のように消えていく。
おそらく体が拒絶反応を示しているのだろう。チアキが言っていたランクと何か関係があるのだろうか。そんなことを考えていると……
〈バタンッ〉
音を立てながら横に倒れ再び目を閉じるのだった。




