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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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悪役令嬢と悪役令嬢

 そして、ダンスパーティーの当日。


 パーティー会場は、王様や王子様の住むこの国のお城の大広間だ。大人数が今夜、大広間に集まるという話だ。オガルコフ家の面々もパーティーに参加する為に、朝から準備に大忙しだった。


 今のところ、私は仮面を付け、メイド服でお嬢様のお世話をする予定になっている。状況が変われば、お嬢様と同じドレスを着て、仮面を外し、お嬢様の代役をしなければならない。


 そう、つまり王子様とダンスを踊ったり、お話をしたりしないといけないのだ。


 だから、今日の私は朝からスゴくドキドキしていた。生まれて初めて、この国の王子様に謁見するのだ。しかも、状況次第では、王子様と手と手を繋いで、くっついてダンスを踊る。緊張しない訳がなかった。


 眩し過ぎて、王子様をまともに見られるのかな。恥ずかしい。私みたいな貧しい農家の娘が、一生の内で会えるかどうか分からないような天の上の人だ。どうしよう? 困ったな。


 そんな風に色んな妄想や不安が頭の中を駆け巡る。落ち着かない自分が居る。身体が小刻みに震える。


 しかし、次の瞬間、淡い期待のようなものから厳しい現実に戻される。


 お嬢様の代わりを演じるという事になれば、それは他のライバル貴族達に命を狙われる危険が非常に高くなるという事だ。


 つまり、私は今夜、お嬢様の代わりに暗殺されるかもしれないのだ。


 それは違う意味で、スゴく緊張する。イヤだ、パーティーに出たくない。私は恐怖を感じ、また震えが止まらなくなる。


 やっぱりヴァシリーサお嬢様が王子様のお相手をするのが一番だなと、私はウンウンと納得をする。




   *   *   *



 オガルコフ家一同は昼過ぎには、お城に到着をしていた。当主様とお嬢様は馬車で、他の従者達は馬や徒歩で移動して、この決戦の地へと赴いた。私はもちろん徒歩での参加だった。


 オガルコフ家の一同は騎士やメイド達を含め、百名ほど。他のライバル家達よりも大人数を投じてやって来たみたいだった。


 当主サーガとヴァシリーサお嬢様を先頭に、大群を引き連れて、お城の中へと一団は入って行く。私も仮面を付け、メイド服姿でお嬢様のすぐ後ろを付いている。


 周りは全身黒ずくめの鎧で固めた騎士ばかりだ。皆、腰に剣を装備している。ダンスパーティーに行くというよりか、むしろ戦争に行くような、そんな集団の姿だった。


 緊張している私はキョロキョロと周りを見回す。赤いカーペットが視界に広がって来る。豪華なシャンデリアが遥か頭上から明かりを照らしている。


 二階へと向かう正面の階段が威圧的な存在感を放っている。吹き抜けになっている為、二階からの通路がここからでも確認出来る。そこから私達を品定めするように見下ろしている着飾った人達が嘲笑っている。


 イヤな雰囲気だ。まるで私達は敵の仕掛けた罠の中に入って行く感じがする。


 私はそんな風に怯えながら、オロオロと周りを見ている。対照的にお嬢様は風を切るように堂々と胸を張って歩いている。


 その時だ。


 ヴァシリーサお嬢様が何かを発見し、急に足を止める。私達を含めた一団も進行をストップさせる。お嬢様は腕組みをし、一点を睨み付ける。


「あ〜ら、これは、これは、ドン家のファシーさんではありませんか? ごきげんよう」


 ヴァシリーサお嬢様は正面に居る若い女性に軽く会釈をする。その女性は金髪の長い髪で白の高価そうなドレスを着ている。この人も貴族なのかなと、その綺麗な女性に見入ってしまう。


「オホホホホ、お久しぶりですわ。オガルコフ家のヴァシリーサさん。お元気でして? 随分、大人数で参加されるのですね? そんなに臆病者でしたかしら?」


 金髪の令嬢は嘲笑したような表情を浮かべ、嫌味のような言葉を浴びせる。ヴァシリーサお嬢様の顔が引きつる。しかし次の瞬間、再び笑みを浮かべて、反論し始める。


「いえいえ、わたくしの事がみーんな大好きみたいで、どうしても参加したいというものですから。仕方なく、連れて来ましたの、ホホホ。愛される、人望がある人間は辛いですわぁ。あら? ファシーさんのお連れの方は一人ですの? 淋しくありません? もしかして、お友達がいらしゃらないのかしら?」


 ヴァシリーサお嬢様の見下した視線の先を私も目で追い掛ける。確かに金髪の令嬢の隣には、一人の男性しか付いていない。しかし次の瞬間、私は背筋の凍るような感覚に襲われる。


 その隣の男は、真っ白な透き通るような顔をしている。黒髪の短髪で、ガリガリの細身の身体だ。タキシードを着て、武器などは持っていないように見える。

 

 でも何故か、この男から異様なオーラのようなものを感じる。決して、この男を敵に回してはならない。そんな警告を私の五感が発している。


 すると、どこからともなく、金髪のファシー目掛けて、何かが飛んで行く。令嬢の隣に居た男がすぐさま、令嬢の前に立ち、飛んで来た物を右手で掴み取る。男の摑んだ物は矢のような物であった。


「まぁ、ご丁寧に早速仕掛けて来ましたの? せっかちですわね、お宅のところの番犬は? でも、こんなもの、わたくしには通用しませんわよ」


 ファシーはそう言うと、クルリと背を向ける。隣の男も矢をポイと捨て、令嬢の後を追って行く。矢はカランと音を立て、赤いカーペットの上に転がる。


「では、ヴァシリーサさん。また、会場でお会いしましょう」


 ファシーは手を振りながら、二階の階段を登って行く。私の前に居るお嬢様が怒りで震えている。この時に私は悟った。


 もう、殺し合いの合図の鐘は打ち鳴らされたのだと……。




 



 






 



この小説まで辿り着いてくださって、ありがとうございます。

出来るだけ面白い展開を書いて行きますので、これからも宜しくお願いします。

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