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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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ともだち

「何を調子に乗ってるの、この平民風情が」


 金髪のファシーお嬢様が顔を真っ赤にして、拳をプルプルと握り締めている。私の提案など受け入れられない、そんな感じだ。


 ドン家のお嬢様の事を諦め、もう一人のお嬢様に希望を託す。黒髪の黄色のドレスのお嬢様は顔を上げ、私に微笑み答えを返す。


「わたくしも同じ事を考えてましたの。こんな争い事、望んでいませんから。わたくしも王子様の事を諦めますわ。ファシー様、王子様と結婚して王女になって下さいませ」


 キーネ家のお嬢様はファシーお嬢様にそう告げると、再び私に視線を合わせる。私は嬉しくなり、笑顔で応える。


「ありがとうございます。キーネ家のアゲリーナお嬢様。私の意見に賛同して頂いて。ファシーお嬢様、これで私たちが争う必要は無くなりました。王子様とご結婚なされて、幸せになって下さい」


 ファシーお嬢様に伝えると、アゲリーナお嬢様に視線を移す。


 そう、彼女は四大貴族の一つ、キーネ家のアゲリーナお嬢様だ。初対面のお嬢様の名前を今になって私は思い出したのだ。


 貴族の娘たちは皆、ヴァシリーサお嬢様やファシーお嬢様のようにプライドが高く、庶民を馬鹿にする傾向があると思っていた。でも、アゲリーナお嬢様は違うようだ。


 嬉しくなり、私はまた笑顔になる。すると、不機嫌そうな表情のファシーお嬢様が私に返す。


「あなた達、そうやって私を油断させて、寝首を掻こうと言うつもりね。そんな話、信じる訳ないでしょ、バーカ。やっぱり無駄な時間だったわ。サヨナラ」


 ファシーお嬢様は席を立ち、みんなが集まっている方へと歩いて行く。彼女の背を淋しく見つめる。残された私とアゲリーナお嬢様は互いに見つめ合う。


「ありがとうございます。アゲリーナお嬢様。私の意見に賛同して頂いて。とても嬉しかったです」


「わたくしもよ、ヴァシリーサさん。私たち、良いお友達になれそうね」


 アゲリーナお嬢様の言葉に思わず息を呑む。


 オガルコフ家に攫われてから、今までそんな優しい言葉を言ってくれる人は居なかった。今はダヴィ−ドが味方になってくれているが、それまではずっと独りだった。友達なんて居なかった。


 私の目から涙が零れ落ちる。私は声を上げて泣きそうになり、口元を手で抑える。泣いちゃダメだと思いながら、アゲリーナお嬢様に返事をする。


「ありがとうございます。私もあなたとお友達になりたいです」


「良かった。仲良くしましょうね」


 アゲリーナお嬢様が微笑む。彼女の顔を見て、思い出したかのように私は訂正を挟む。


「あ、お嬢様。実は私、ヴァシリーサお嬢様ではなくて、アルダって言います。本物のお嬢様はダンスパーティーの時に亡くなられて、私はニセモノの影武者なんです」


 アゲリーナお嬢様はじっと私を見た後、ニコリと笑顔に戻る。


「やっぱり噂は本当だったのね。昔のヴァシリーサさんと雰囲気が違うなって、変だなと思ったの。ヴァシリーサさんなら、王子様の花嫁候補を辞退するなんてあり得ないしね」


 アゲリーナお嬢様と私は同時に笑う。本物のヴァシリーサお嬢様を演じ切れていない、影武者としては失格だな。そんな事を思いながら、少し舌を出す。


 アゲリーナお嬢様は私が平民のニセモノであると知ってもなお、好意的に見てくれているように見える。


「それじゃ、王子様との会談、お互い断るの頑張りましょうね」


 アゲリーナお嬢様はそう告げると席を立つ。自分の従者たちが居るところへとゆっくりと戻って行く。私は微笑みながら、彼女の背を見つめる。


 そうなんだ。私が求めていたのは、王女の座じゃなくて、優しい友達だったんだ。


 私も席を立ち、オガルコフ家のテントへと帰って行った。



   *   *   *   *



 王子様と各々の貴族の娘たちの最終会談の時間となった。この結果如何によって、この国の王女が決定するのだ。場の雰囲気が緊張に包まれる。


 王子様との会談の順番はファシーお嬢様、アゲリーナお嬢様、最後に私という事になった。


 庭園の中央のテーブル席に王子様が座っている。王子様とテーブルを挟んだ正面に席が一つ存在している。あそこに順番に貴族の娘たちが坐り、王子様とお話をするというシステムのようだ。


 トップバッターのファシーお嬢様が王子様の待つ席へと向かう。自信満々の顔をしながら、王子様の元へと堂々と歩いて行く。


 この勝利者のような振る舞いは私たちが辞退をすると発言したからではない。彼女は私たちが辞退しようがしまいが関係なく、自分が王女になれると確信しているからだ。


 そんなファシーお嬢様を私が見ていると、突然、”洗脳の悪魔”ダヴィ−ドが話し掛けてくる。


「あんた、何か変な事を考えていないか?」


「い、いいえ。何も考えてなんかいないわよ」


 やっぱり、彼は鋭い。これから私が王子様に辞退の旨を伝える事に勘付いているみたいだ。


 私を警戒しているようにダヴィ−ドは見て来る。私は気まずいなと思いながら、彼と視線を合わさずに王子様とファシーお嬢様に顔を向ける。


 ファシーお嬢様が王子様が居るテーブル席に着く。


 こうして私たち花嫁候補と王子様の最終面談が始まった。



 








読んで頂いきありがとうございます。

これからも面白い小説を書いて行くので、良かったら宜しくお願いします。

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