悪魔とただ今、ケンカ中
「執事長さん、サーガさんに伝えて。王様から花嫁候補の娘は会食パーティーに参加せよとの御達しがあったわ」
私が執事長に伝えると、彼は息切れしながら応える。
「やはり、そうでございますか? 分かりました。旦那様に今すぐ伝えて参ります」
そう言って、踵を返し走って行く。そんな執事長を見ながら、手元にある手紙にもう一度目を通す。
王子様とまた会える。すごく嬉しい。
でも、ヴァシリーサお嬢様が殺された時のように他の貴族の娘たちも来る。すなわち、護衛の悪魔たちも一緒に来る。
また命を懸けた戦いが始まるの?
私は天を仰ぎ、考える。
今の私は一人では無い。味方の悪魔が居る。頼もしい味方が……。
そう思って少し安心したが、改めて考え直す。
そう言えば、今、彼とは喧嘩してるんだった。"炎の悪魔"との戦いから、あまり喋れていない。どうしよう?
あの後、彼に謝ろうと何回か考えた。しかし、どう考えても人を簡単に殺す事には賛同出来ない。私の方が正しい。でも……。
そうやって、ずっと悩んだ結果、結局何も行動を出来ないまま今に至るという状態なのだ。
そんなギクシャクした心と状況の中、王子様からのお誘いが来た。
どうする? 行くべきか、断るべきか?
今の私は以前と違って、オガルコフ家の当主たちから言いなりでは無い。人質の父と母は取り戻した。彼等の権力に抗えるほどの悪魔を味方に付けている。参加するかどうかの決定権は私には有るのだ。
正直、ダヴィ−ドに相談したい。でも、彼なら間違いなく参加と応えるであろう。そして、そこで他の悪魔たちやライバルの娘たちを殺すと明言するはずだ。
でも、これは私の望む未来ではない。だから、また彼と言い争いになり、仲が悪くなりそうな予感がする。
私はまた、考える。
どうする形が一番理想的なのかを……。
すると、ある考えが思い浮かぶ。私にしては良い妙案を思い付いたと自分でも感心してしまうくらいのアイデアだ。
私の口元が緩む。そして、私はその計画を実行しようと準備をする事にした。
* * * *
そして、王族主催の会食パーティーの当日となる。
パーティー会場は王族所有の庭付きの別荘だ。王族の方々が主に休養などに使う綺麗な庭園のある気持ちの良い場所だ。今回はその自然豊かな手入れされた美しい庭園での屋外パーティーとなっている。
例の如く、他家の貴族が従者や護衛を連れ、陣取っている。テントを張り、貴族の方々に休んで頂く様に椅子や机を設置している。
今回の参加は四大貴族の内の三貴族のみだ。参加していないのは、もちろんあのターキ家である。
私たちが戦いの末にターキ家のトリミティーお嬢様と"炎の悪魔"を亡き者にしてしまった。だから、不参加となっているのは当然の結果であった。
向こうで一際目立つように豪華に陣取っている集団が居る。身なりが綺麗な方や鎧で固めた強そうな騎士達が大勢居る。その中心に物凄いオーラを漂わせている方が居た。
その方は貴族の娘たちがみな憧れる存在、この国の王子様だった。
やっぱり、カッコイイ。ずっと見ていられる素敵な方だ。
私の頬が熱くなる。胸がドキドキしている。
そんな風に王子様に見とれていると、後ろに居たダヴィ−ドが急に声を掛けて来る。
「ホントに良いんだな、アルダ? 俺の思うようにしても。隙があれば、ここに居る敵を全員皆殺しにする事になるぞ」
「えぇ。構わないわ。私が間違っていたから。本当にこの間はごめんなさい。あなたと揉めても私にメリットが無いのに。自由にして頂戴」
この非常事態になって、やっと彼に謝る事が出来た。でも、もちろんこれは私の本心では無い。
ダヴィ−ドが不審そうに私を見ている。急に私の態度が変わったからだ。
私の計画が見破られたのかなと感じる。でも、彼の機嫌が少し良くなったので、私の気持ちも少し楽になる。こうして、私たちはパーティーのスタートの時間を待つ。
そして、一同を介した会食パーティーがいよいよ始まる。庭園の中央に大きなテーブルと椅子が設けられている。その席で王族と貴族のみ座って食事するパーティーのスタイルの様だ。
オガルコフ家からは私とサーガさんのみがテーブルに着く。その他の従者や騎士達は後方で立って見護るような形になっている。恐らく敵の悪魔たちもその中に交じっているはずだ。
正面側の席は王族の方々が座られている。この国の王様、お妃様、私の知らない身なりの良い方たちが座っている。
私は王子様を探し始める。すると、彼も私の事を探していたのか突然目が合ってしまう。王子様は私の方を見るとニコリと笑顔を見せ、正面に向き直る。
私は急に恥ずかしくなり、うつむいてしまう。すると、私の横の方から殺気めいた憎悪のような物を感じ取る。私は顔を上げ、その方向を確認する。ドン家のファシーお嬢様が私の方を鬼のような表情で睨んでいる。
以前、ドン家のファシーお嬢様は"死の悪魔"を引き連れて、私の命を狙いに来た。その時に、ダヴィ−ドが居てくれたから、私はまだ生きていられているのである。
その時の恐怖を私は思い出し、身震いしてしまう。
すると、この国の王、つまり愛しの王子様のお父様が声を発する。
「そうか、ターキ家の令嬢は不慮の事故に遭い、亡くなってしまったのか。だから、ターキ家は不参加なのだな。残念な事よ」
王様は自慢の顎髭をいじりながら、フムフムと頷いている。
トリミティーお嬢様の件は事故として処理されているの? ダヴィ−ドが殺してしまった事を隠蔽して。
自分が関わっているだけにかなり罪悪感を持ってしまう。気まずいなと思いながら、私はまた下を向いてしまう。
すると、ファシーお嬢様と逆側からまた違う視線を感じる。
誰かに見られてる?
私はそちらの方に静かに視線を移す。
私の視線の先に居たのは、四大貴族の一つ、キーネ家のお嬢様の姿だった。
読んで頂きありがとうございます。また頑張ります。




