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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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洗脳魔法でお金を儲ける

 父と母は田舎の実家へと帰って行った。私一人だけこのオガルコフ家に留まる事を決める。


 自分にはまだやる事があるからと両親には伝えた。終わったら必ず家に帰ると約束をして、笑顔で二人と別れた。


 オガルコフ家の屋敷の中をゆっくりと歩いて見回る。高価な家具や装飾品が至る所に置かれている。全部、元当主のサーガとヴァシリーサお嬢様の持ち物だ。


 こんな贅沢な物を無駄に買うから町の人が飢えるんだ。税金を増やし過ぎるんだ。


 私は意を決し、背後に付いている悪魔に言葉を掛ける。


「ねぇ、ダヴィ−ド。この高価な家具とか売りたいんだけど、良い商人を知らないかしら?」


「あぁ、知っているぜ。俺の洗脳の魔法に掛かっている腕の良い奴が何人か。全部売るのか?」


「えぇ、必要ないから。ついでにこの大きな屋敷も売りたいんだけど、あなたに頼んでも構わないの?」


「構わない。お安い御用だ」


 "洗脳の悪魔"はニヤリと笑みを浮かべる。


 この悪魔、やっぱり頼もしいな。

 

 私はそう感じ、次の仕事に取り掛かる。


 騎士やメイドたちに食料の調達の指示を出す。彼等はダヴィ−ドに洗脳してもらわなくても、サーガ経由で動く。調達した食料はすぐさま町の人達へ提供した。


 数週間後、ダヴィ−ドは大きな袋を二つ引っさげて戻って来る。彼は笑みを浮かべ、その袋の中身を私に見せる。中にはまばゆいばかりの金貨がギッシリと詰まっていた。


「どうしたの? そんなお金?」


 私は驚き、悪魔に問う。予想は何となくつく。多分、良からぬお金だ。


「もちろん家具を売った金だ」


 ダヴィ−ドは淡々と応える。


「いくら高級な家具だと言っても、そんな大金になるわけがないでしょ?」


「あぁ、普通はな。でも、俺は洗脳の悪魔だぜ。商人を洗脳して、通常の三倍の値段で売り付けて来た」


 まただ。大変な事をサラッと言う。私は呆れた顔になり、言葉を返す。


「商人の人がかわいそうでしょ? そんな事止めてよ」


「大丈夫だ。アイツは金持ちから騙し取って商売をしている悪党だから。少々、余分に金を受け取っても差し支えはない」


 彼の言葉で、私は苦笑いをしてしまう。そんな私を見て、"洗脳の悪魔"は話を続ける。


「食料の調達も手配した。今日、馬車で到着するはずだ」


「え、そうなの? 仕事が早いわね」


「町の倉庫に備蓄しておけば、町の人間は問題なく生活をしていける」


 私の気持ちを何から何まで理解していて、ダヴィ−ドは話しているようだ。私の望み通りの行動を彼は起こしてくれている。そんな悪魔に対し、私は笑顔を返す。


「ありがとう、ダヴィ−ド。これで町の人達は救われるわ。良かった」


 私は泣きそうになり、口元を押さえる。


「いや、それだけではダメだ。今のままでは、いずれまたこの町は崩壊する。町の奴等が自立して生活して行くシステムを作らないといけない」


 彼の言葉で私はハッとする。


 そんな事まで考えていたの? スゴい。やはり、魔法使いという職業の人達は頭が良いのね。


 私は感心し、彼を尊敬の眼差しで見つめる。


「農業の面と商業の面の強化の為に、この金を使う。田畑の改良をし、穀物の生産を大幅に上げる。そして、この町に金が落ちるように商人を補充する。そうすれば、この町は活性化し、町の人間の顔色も良くなるだろう」


 ダヴィ−ドはそう言いながら、私に微笑む。私は一緒ドキッとする。そして、彼から目を逸らし、平静を装う。


「私はその辺の事はよく分からないわ。だから、あなたに任せる。ダヴィ−ドにばかりに色んな負担を掛けて、ホントにゴメンなさい」


「いや、気にするな。全部俺の暇つぶしであり、俺が楽しんでやっている事だ。アンタはアンタの思う行動を取れば良い。ただ生きて、俺を面白くさせてくれればそれでいい」


 ダヴィ−ドはそう言って、商人や農家の人達に指示を出している。恐らくこの人達も洗脳の魔法を掛けられているのだろう。言われた事に素直にうなずいている。まるで操り人形のようだ。私は苦笑いをし、まぁいいかと納得をする。


 こうして、オガルコフ家領の町は変革していくのであった。



   *   *   *



 1ヶ月後、町は大きく変化していた。町の人々は明るさを取り戻し、顔色も良くなっていた。町全体が活気づいている、私はそう感じ嬉しくなっていた。


 子供たちも元気に走り回っている。仮面を付けた私とダヴィ−ドは町の状況を確認しながら、ゆっくりと歩く。


 飢えて倒れそうな人は居ない。町の治安も心なしか良くなっているように見える。


 私は軽く微笑み、隣に居る”洗脳の悪魔”に話し掛ける。


「こんなに早く町が生まれ変わるなんて思わなかったわ。みんな幸せそうに暮らしている」


「当然だ。俺は他人の心を自由に操れる。だから町の復興など朝飯前だ」


 ダヴィ−ドはそう言って、ニヤリと笑顔を返して来る。


 ホントにこの人は最強だな。味方になってくれて良かった。


 私はそう感じ、ずっと考えていた想いを口に出す。


「ダヴィ−ド、ホントにありがとう。これで町の人達は安心して生きていけるわ。私の役目もう終わりね。だから、この辺で私も田舎の実家に帰ろうと思うの」


 ダヴィ−ドは真顔になり、私を見つめる。


「貴族同士の戦いはどうするんだ? 王子の事はもういいのか?」


「私は元々貧乏な農家の娘よ。貴族同士の争いはただ巻き込まれただけ。関係ないのよ。それに王子様の事だって。貴族ではないニセモノの私なんかが結婚していい相手ではないのよ。だから、私は両親と田舎で静かに暮らすわ」


 私はそう言って遠くを見つめる。


 そうだ。そうなんだ。私のような身分の低い人間が王子様と結婚してはいけない。王子様とお話が出来ただけでも幸せと思わなければ。


 私は妙に清々しい気持ちになる。隣のダヴィ−ドの表情が気になり、チラリと覗く。彼は何だか浮かない顔をしている。”洗脳の悪魔”は私の方に向き直り、ポツリと言葉を呟く。


「アルダ、それはダメだ。アンタは戦いに足を踏み入れてしまったんだ。途中で止める事はもう出来ないんだ」


 




 

小説を読む方は頭が良く、人の気持ちの分かる人だと聴きます。

そんな優秀な読者の皆さんの為に、面白い小説を書いていきますので、これからも読んで頂けると大変嬉しいです。

もし良かったら、今後も宜しくお願いします。


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