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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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17/22

洗脳の悪魔の慈善活動

 目を覚ますと、暗い夜は明け、朝になっていた。


 昨日は色んな事があり過ぎて、かなり疲れていた。そのせいか、ベッドに入った途端、意識が飛んだみたいに爆睡したようだ。


 ベッドに横たわっていた身体を起こすと、ソファで眠る悪魔が視界に入る。敵が襲って来るかもしれないのに、いびきをかいて、よだれを垂らしている。


 彼が居たから、私は安心して眠れたのかもしれないな。そんな事をつい考えてしまう。ニヤけてしまう自分が居る。


 しかし次の瞬間、その考えを全力で否定する。なぜなら、彼は”洗脳の悪魔”だ。そんな無警戒でいると、あの悪魔に簡単に洗脳されてしまうかもしれない。注意しなければと、心のガードを固くする。


 私は起き上がり、自室を抜け出す。私にはやる事があるのだ。


 屋敷の台所へと向かう為に、階段を降りて行く。すると、後ろで物音が聴こえる。


 誰か居る。まさか、他家の悪魔?


 人の気配に気付いた私は急いで振り返る。


「早いな。もう起きたのか?」


 後ろで私を付けて来たのは、ダヴィ−ドだった。


「えぇ、あなたも起きたのね。爆睡してたから昼まで起きないかと思ったわよ」


「俺は優秀な魔法使いだ。何か異変を感じれば、すぐに目を覚ますさ」


 彼は私をジロジロと見ながら、話を続ける。


「どこかに行くつもりなのか? 朝早くに行動をしているし、何かの準備に取り掛かっているように見える」


 この男には、嘘はつけないな。私はそう感じ、正直に応える。


「今から、町に行って、町の人たちに食べ物を分けてあげるのよ」


「なるほど。例の慈善活動だな。いいだろう。俺も協力をしよう」


 そう言って、ダヴィ−ドは台所へと入って行く。屋敷にはまだ誰も帰って来てはいない。使用人に見られたら問題が大きくなる。早くしなければ。


 私も小走りで台所へと入り、食料を大きな袋へと詰めて行く。パンやハム、野菜や果物など持てるだけ運び出す。


 こうして、私は悪魔と共に町へと食料を配布しに行くのであった。



   *   *   *



 外は爽やかな風が吹き、天気も快晴であった。私とダヴィ−ドは大きな袋を一つずつ持ち、町へと向かう。


 私はいつもの仮面とマントで全身を隠して移動をしている。貴族のお嬢様が町へ食べ物を運んだとあっては、トラブルになりかねないと感じたからだ。ダヴィ−ドもいつものマントとフードで身を隠した姿だ。


 マントとフードを被った二人組が大きな袋を担いで、町をウロウロとしている。客観的に見れば、怪しい二人組だな。そう思いながら、目的の場所を目指す。


 朝からこの町は人の往来が多い。相変わらず、頬の痩せこけた疲れている人たちばかりだ。


 当主様の政治が変われば、もっとこの人たちは豊かになれるのに。


 私はそんな事を思いながら、町の広場へと足を運ぶ。あそこが一番人が集まりやすい。私と悪魔は町の広場に辿り着き、袋の口を開け、声を上げる。


「食料を持って来ました。どなたでも構いません。欲しければ、持って行って下さい」


 私のその声で、人々がこちらに顔を向ける。そして、袋の中身を見た途端、顔色を変え、一斉にこちらへと走り出して来る。


「あの仮面の姉ちゃんだ。またパンを持って来たのか」


「昨日から何も食べてないの。私に食料を分けて下さい」


 町全体が騒然と化す。いつもの事だが、少し恐いと感じる。しかし、袋から食べ物を取り出し、みんなに分けて行く。


 隣を見れば、ダヴィ−ドも私と同じように人々に食料を配っている。悪魔なのに付き合わせて悪いなと、私は少し苦笑いをする。


 そんな風に私が食べ物を手渡していたその時だ。


「貴様たち、そこで何をしている」


 突然、大きな怒鳴り声が私たちの耳に飛び込んで来る。そして、食料をもらう為に並んでいた人たちが次々となぎ倒されて行く。


 何が起こったのかと、私は呆然とし、その原因に視線を移す。黒い鎧を着た二人の騎士たちが町の人たちに暴力を振るっている。どうやら、オガルコフ家で雇われている騎士たちのようだ。彼等はこちらを睨みながら、勢いよく近付いて来る。


「お前か。以前からオガルコフ家の許可なく、食料を配っている輩は」


 見つかった、どうしよう?


 私は戸惑い、ダヴィ−ドの顔を見る。彼は何事もなかったかのように冷静に騎士たちを見ている。


 町の男の子の一人がこちらに歩いて来る。彼は騎士たちに気付いてないみたいだ。そして、子供は私からパンをもらおうと手を伸ばす。


「邪魔だ、ガキ! ぶっ殺すぞ!」


 黒い騎士は男の子のお腹を思いっ切り蹴り飛ばす。その子は大きく吹き飛び、転がり回る。子供はお腹を抑えながら、苦しみ泣いている。息がまともに出来ていないようだ。


 しかし、誰も彼を助けようとはしない。手助けすれば、どうなるのか町の大人たちは分かっているみたいだった。


「ひどい。あんまりだわ」


 私は思わず口にしてしまう。それを聴いた騎士たちは表情を変える。怒った表情の彼等は私のすぐ側までやって来る。


「おいおい、仮面の姉ちゃん。俺たちがする事に文句があるようだな。俺たちに逆らうって事は、ここの領主の貴族オガルコフ家を敵に回すのと同じ事だぞ。分かっていて、言葉を吐いているのか」


 騎士たちは腰に差していた剣を抜き、叫んでいる。私はグッと拳を握り締め、考える。


 ここで私が仮面を取れば、彼等は退いてこの場は丸く収まるかもしれない。ニセモノの悪役令嬢の私なら止められる。


 私は仮面に手を掛ける。取るしかない、そう思った時だ。私の目の前に”洗脳の悪魔”が現れる。騎士たちから私を護るような立ち位置だった。


「仮面は取らなくていい。俺が洗脳の魔法でコイツ等を黙らせる」


 悪魔は私の方に振り返り、笑みを浮かべた。

 










長編になりますが、どうかお付き合い頂ければ幸いです。

読んで頂き、ありがとうございました。

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