春夏冬(あきなし)秋(あき)
他人と友達。他人と恋人。
その境は何処にあるんだろうか。
そういう曖昧なものに対して高校1年生、15歳の春夏冬秋は考えるのを辞めた。
「春夏冬、ちょっといいか?」
放課後、いつも通りにスタコラサッサと誰にも誘われることもなかったし、誘わなかったので、そのまま帰ろうと、教科書ノートを詰め込んで席を立ち上がったら、忘れてたと言わんばかりに呼び止められた。
めんどくさい予感が凄くする。
帰ってからなにか熱心にやる訳でもない。
ただ時間を浪費していくだけなのに、それを邪魔されるとなると少し嫌だなと思ってしまうのは器の大きさなのか。
「悪いんだけどさ」
私のげんなり顔をみて、苦笑いしている。
多少なり申し訳ないという気持ちはある様だ。
大人相手なので演技でしたということも勿論あるかもしれないが。
「……悪い事には加担しないと決めてるんで」
「いや、悪事を働けという意味合いじゃない。分かってて言ってるだろ」
適当に躱して帰ろうと思ったけど、切り返された。
ノリが大変よろしい先生である。
これが若さ故の順応か。
仕方ない。話くらいは聞いてあげようと、思う。
願わくば、
「楽な頼み事でありますよーに」
「口に出ちゃってるな」
おっといけない。慌てて両手でお口を塞ぐ。
沈黙は金とはよく言ったものである。
心という物事を思ってしまうものがあるせいで、口という言葉にするもおがあるせいで、思ったことしか口にしない。
「有栖川の家に行ってくれないか?」
その名前を聞いて、私はどんな表情をしただろう。
折り合いの着いていない彼女との関係。
クシャクシャにした紙が伸ばしても皺が残るように、彼女とはもう、元には戻れないというのに。