表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ジャック&ミレンシリーズ

この勇者パーティーの中に一人裏切り者がいるらしい

作者: リィズ・ブランディシュカ




 世界中の人々を困らせる魔王。


 魔王ラストゲイト。


 千年に一度封印から解放されるその魔王は、定期的に討伐しなければならない存在だった。


 魔王を好きにさせておくと、魔物の活動が活発になるだけでなく、各地に闇の魔力が瘴気として噴き出してしまうからだ。


 だから、その時代に復活した魔王を、誰かが倒す必要があった。






 そんな魔王討伐を任される事になったのは、勇者である一人の少女ヒカリだ。


 ラストゲイトを倒すために、人々は勇者ヒカリにすべての希望を託した。


「困っている人たちのために、私はこの剣をささげます。志を同じくするものは、私達のもとに。一緒に戦いましょう!」


 ヒカリの意志に呼応した者達がつぎつぎとやってきて、勇者パーティーが結成された。


「よろしくお願いしますヒカリ様、治癒はお任せください」


「よろしくなヒカリ。攻撃は俺に任せておけ」


「初めましてヒカリお姉ちゃん、魔法なら僕がばっちりだよ」


「やあ、ヒカリお嬢ちゃん。魔王討伐のために一緒に頑張ろうぜ」






 勇者ヒカリは、頼もしい仲間たちとともに、魔王ラストゲイトを倒すべく、研鑽を積み、めきめきと実力をつけていく。


 武器や防具を至急してくれるものもいたし、騎士団も力をかしてくれた。


 ヒカリたちは団結し、大きな力で、魔王の脅威に立ち向かっていった。


「勇者様がいれば怖くない!」


「魔王だってきっとやっつけてくれるに違いないよ!」


「魔王討伐は時間の問題だな!」


 このまま順調にいけば、魔王討伐も可能だと、誰もがそう思っていた。


 しかし、彼女は途中で多くの仲間を失ってしまう。


 魔王軍幹部と討伐するために、旅を進めていた勇者達と騎士団は、待ち伏せをうけて、ひどい損害を出した。








 タイミングの悪さを怪しんだヒカリは、騎士団に調査を依頼した。


 すると、一人の人物が裏切り者として名前があがった。


 その人物の名前はジャック。


 彼はたびたび、パーティーから外れて、行方をくらますことがあった。


 確信がほしかったヒカリはさらなる調査を始める。


 一人で行動するジャックの後をつけたり、嘘に反応する魔道具を使ったりした。


 様々な調査を行った結果。


 ジャックが裏切り者である事が確定。


「どうして私達を裏切ったのですか」とヒカリは問い詰めた。


 すると。


「お金が欲しかったんだよ、だから裏切った」


 と、ジャックが答えた。


「お金は一体何に?」

「ただの女遊びさ、贅沢をしたかっただけだ」


 ジャックは軽薄で、女遊びの激しい若者だった。


 それでもジャックは勇者パーティーにふさわしくて、強く、有能であった。


 休憩時間には仲間たちを得意の冗談で楽しませるジャックを、ヒカリは信じていたかった。


 




「分かりました、ならば私が直々にあなたを成敗してさしあげます」


 勇者は怒り、せめてもの情けと、ジャックをその手にかけた。


 けじめとして、大勢の者達を困らせた人物をこの手で。


 ジャックの裏切りでなん十人もの死者が出ていたのだから、そうする以外に方法はなかった。


 しかし、そんな事をしても誰も幸せにはならない。


 ただこれからの安全が確保されただけで。


 失った仲間たちは戻ってこなかった。


 ヒカリは虚しさを抱えたまま、魔王との最終決戦へ向かっていく。


 仲間たちはそんなヒカリを心配していたが、ヒカリは気丈にふるまう。


「どんなに辛くても、人々の期待を背負った勇者が、逃げ出すわけにはいかない」と。


 しかし、結果は敗北だった。


 勇者は心を疲労させた影響で魔王に破れてしまう。


 勇者を欠いた世界は、魔王に蹂躙されるしかなくなり、やがてその世界は滅びてしまう。





 勇者なき世界は「なぜ」と嘆いた。


 なぜこんなことになってしまったのか。


 なぜ、魔王を倒せなかったのか。


 人々は諸悪の根源を一人に定め、その人物を呪うしかできなかった。


 裏切り者ジャック。


 彼さえいなければ、世界の平和は守られたのではないかと。





 人類が絶滅するまで、時はそうかからなかった。


 ジャックの名前は最後の最後まで憎しみの対象として、人々に語り継がれる。


 隠れひそんでいた人類の、最後のコロニーが魔王軍幹部によって暴かれた時、人々はジャックの存在を呪いながら死に絶えていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ