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【コミカライズ】婚約破棄された令嬢は隣国で愛される ~毒親育ちでトラウマだらけですが幸せになれました~

作者: てんきどう

こんな物語が読んでみたいと思って書きました。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


コミカライズされました。

2025/7/17に実業之日本社から、『悪役令嬢からの華麗なる転身2』で出版していただけました。

よかったら、お手にとっていただけると幸いです。


誤字脱字報告をありがとうございます! 

あとがきに、その後のお話を追加いたしました。


異世界恋愛で

10/26 日間36位をいただけました。皆様のおかげです。本当にありがとうございます!

10/27 日間24位をいただけました! 本当に本当にありがとうございます!

10/28 日間20位をいただけました! 信じられません! 本当に本当にありがとうございます!

10/29 日間18位をいただけました! 本当に本当にありがとうございます! 何が起こっているんでしょう……。


皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。


「グエンダ・ハドック侯爵令嬢! 貴様との婚約を破棄する!」



 胸の奥がキシキシと嫌な音をたてて痛む。

 痛みに涙があふれてくる。 

 恐怖と罪悪感で頭がおかしくなりそうだ。

 仕方ないだろう。私はそうやって育てられてきたのだ。


 逆らうやつは駄目な子だと。意見を持つのはイヤな子だと。

 頭の中で私は悪くないと分かっていても、重苦しさに潰されそう。


 いつか分かってくれるかもしれない。

 いつか認めてくれるかもしれない。

 家族になる方なんだから……。

 そう思って努力していた。何年も何年も。



 投げ捨てられた指輪に駆けより、私は涙があふれた。

 私の元婚約者は、薄汚いものでも見るように顔を歪ませ、うすら寒い顔で笑った。

 彼の腕にくっついている可愛らしい平民の女性は、「たいしたことない」とせせら笑った。

 この指輪は、私の唯一の、大切な愛情を形にしたものだったのに。




 指輪を握りしめた瞬間、前世の記憶が甦る。

 私は日本人だった。

 毒親育ちだった。そして、いろんな本を読んで対処法を学んでいた。

 話し合える親ではなかった。

 物理的に距離を取るために、必死で勉強して大学進学して、一人暮らしを勝ち取った。

 そして交通事故で亡くなったのだ。


 私は、元婚約者の顔を見た。

 彼は、前世の親と同じタイプだ。

 ……逃げなければいけない。

 私の愛を利用されていただけだった。



「婚約破棄を承りました」


 私はそう告げると、よろよろと歩き出した。城から逃げ出すために。

 頭では分かっていても、心が泣き叫ぶ。

 私は、元婚約者の望むような令嬢になれなかった。

 私は、物語の主人公みたいに生きられはしない。

 カッコ悪く這いつくばるように、泣きながら歩いていく。


 頭の中で自分はクズだと、今まで生きてきた自分が叫ぶ。

 私は自分の体を抱きしめた。


「大丈夫、大丈夫、大丈夫よ……。ここには私を氷のような目で断罪する人はいない。安全で安心して休める場所にいこうね、私……。暖かくしてゆっくり眠って、それから美味しいものを味わって食べるの……きっと楽しいと思えるわ」


 心が折れそうなほど、頭の中でもう1人の自分が警鐘を鳴らす。

 私は「大丈夫、大丈夫」と呟きながら歩いた。

 否定するもう1人の私も自分なのだ。私が家族に酷い目に合わされないように、警告してるだけなのだ。

  繰り返し大丈夫だと言い聞かせていれば、もう1人の自分の警告は、小さくなっていくはず。嫌なことを思い出してしまうのは、危険を回避しようとする本能だ。

 前世で学んだことを思い出す。脳の仕組みなのだ。



 私は、必死で楽しかったことを思い出そうとした。

 少しでも気持ちを強くもつために。

 メモしておけばよかった。なかなか思い出せない。


 ふらふらしながら、私はやっと眠れそうな場所を見つけた。

 誰にも見送られず、歩き続けた。馬車もいなかった。

 そこは、お城から離れた場所にある猟師達の小屋らしい。

 ドレスを脱ぎ、小屋にあった簡易な服に着替える。

 代金代わりに、宝石のついたアクセサリーを置いておく。

 薄い毛布に身を包み、体を休める。



 今日は本当に酷い1日だった。

 疲れきってしまった。こんな時は考えてはいけない。

 なんでもいいから、自分を褒めなければ。

 ……私は頑張った。自分は偉い。今は生きてるだけでいいよ!

 ゆっくり休めば、きっといい考えも浮かぶ。



朝早く目覚めた私は、必死で自分の脳に暗示をかける。

今日はきっといいことがある……

今日はきっといいことがある……

私は自分が嫌いじゃない……私は私が好き……


朝一番に、いいイメージを潜在意識に植えつけるのだ。

いいイメージを植えつければ、脳はそうなるように働いてくれる。反対に、悪いイメージを植えつけてしまうと、悪い方へ行動してしまう。

 前世の知識だ。自己啓発本なんて、この世界にはない。

 落ち着いたら、そういう本を書いて売ってもいいかもしれない。




私は、長年王宮で暮らして王子妃教育を受けていた。

そんな私が、突然みすぼらしい姿で実家にもどると大騒ぎになった。


王家の決定には従わなくてはならない。

婚約破棄をされた娘など、次の嫁ぎ先もなかなか決まらないことだろう。

たとえ相手の浮気が原因でもだ。


「お父様。私がこの国にいては、王家ともうまくやれないでしょう。外国へ留学したいのです」

「ううむ……。口うるさい貴族達につけこまれるよりは、そうした方が安全だな」


 貴族の矜持を大切にされるお父様と交渉して、私は外国へ留学することが決まった。

 あの王子のことだから、難癖つけて追いかけてきて、私をまた利用するだろう。簡単に想像できる。

 彼が、手が出せないほど遠くの国へ行きたい。


 私は、留学という形で遠い国へ旅立った。

 本当はとても迷っていた。

 ここまでされても、貴族の娘として王子に尽くすのが正しいのではないかと。

 でも相談にのってくれた家庭教師が、背中を押してくれた。


「留学をする前に諦めるのではなく、やるだけやってみたら」

「ありがとうございます。思い切って実行してから、考えることにいたしますね」


 ありがたかった。

 他に肯定してくれる人はいなかったから。

 家族も、私のことは影でボロクソにけなしていた。

 廊下の影で、偶然聞いてしまった。

 ずっとそうだった。母などは、駄目な子にけなげに尽くす悲劇のヒロインをしている。それに追従する家族。哀しい……。

 もうそれを変えようと努力する気力も体力も残っていない。

 疲れきってしまった。




★★★★★




 華やかな帝国の王立学園に、私は留学した。

 学生寮の部屋も、1人部屋だがランクを落とした。侍女もいない。

 帰国する気がないので、将来のことを考えてお金は節約した。

 今まで生活費のことなどを考えたことがなかったから、どのくらい必要なのかも分からない。

 とりあえず、使ったお金をノートに書いていくことにする。


 学園では勉強に励んだ。自分で収入を得る方法を見つけたかった。

 王子妃教育のおかげで、言葉には困っていないのが幸いだ。

 友達を作りたいけれど、人との距離感が分からない。

 毒婚約者に洗脳されて育ったせいで、信じすぎて騙されたり嫌われてしまうのだ。

 人間関係に疲れて、もうぼっちが楽ですわと勉学に励んでいる。




「隣の席、いいですか?」

「はい。どうぞ」

「いつもここで勉強してるよね。凄いなと思ってたんだ」

「まあそんな……」

「俺はアルト。アルト・コリンズ」

「私はグエンダ・ハドックですわ」

 

 図書館で勉強していると、眼鏡をかけた男性が声をかけてくれた。

 確か、成績上位者の方で、裕福な商家の方です。

 明るい茶色の髪に金色の瞳、笑うと可愛いと女子に人気だった。


「俺も頑張ってるんだけどさ、なかなか集中が続かないんだよね」

「そうですね。集中力が続く時間は約50分ですから。1日だと4時間が限界らしいです。それ以上は、生産性が下がるんです」

「そうなんだ!」

「大切なことは、その4時間に集中させると効率がいいと思います」

「やってみるよ。ありがとう!」

 


 これも前世の知識だ。前世でたくさん本を読んでてよかった。

 その日以来、私達は一緒に勉強することになった。

 会話は勉強のことばかりだったが、気楽に話すことができた。

 

「休憩の時に、甘い物を食べると気分転換になるんだよね。俺が作ってきたんだ。一緒に食べようよ」

「いいんですの? 自分でお料理ができるなんて素晴らしいですわ」

「喜んでもらえて嬉しいよ」

「美味しいです! フルーツを焼き込んでいますのね」

「ああ。砂糖は高いから、フルーツを多く入れてある」

「私もお料理ができればよかったですわ」


 学園の食堂のお菓子は、貴族用で高級品だ。節約したい私は我慢していた。

 街にお菓子を買いに行く時間があれば、勉強をしていた。


「作り方、教えようか?」

「よいのですか」

「ああ。いつもいろいろ教えてくれるお礼だ」

「ありがとうございます」

 

 彼はニカッと可愛く笑った。

 胸の奥が暖かい。ポカポカする。なんだろう、この感じ。


 学園の調理室をお借りして、私達はクッキーを作った。

 そこら辺にあるものをボウルに入れようとする私を、彼が必死で止めていた。

 出来上がったクッキーは、形が崩れていたり焦げたりしていたが、なんとか食べられた。


「このクッキー、数学の先生にそっくりだな」

「まあ! 本当ですね。不思議だわ」

「いつも難しいテストしやがって! 食ってやる!」


 私はなんだか楽しくて笑った。心から笑うなんて何年ぶりだろう。

 彼はそんな私を見て嬉しそうに笑った。彼の頬が赤くなっていたのは気のせいだろうか。




 楽しい時間を過ごして寮の部屋に戻ると、実家から手紙が来ていた。

 楽しい気持ちが、一気に沈みこんだ。

 読んでみると、元婚約者の王子が私に会いたがっているという内容だった。

 平民の娘の王子妃教育が上手くいっていないらしい。

 そこで、私を彼女の侍女にして仕事をさせたいらしい。

 私は涙が溢れた。懐かしくてたまらない。


「帰りたいですわ……。今度こそ認めてもらえるのかしら」


 いつも完璧さを求められてきた。

 少しのミスを見つけられては、叱られていた。叩かれることもあった。

 尽くして気をつかってばかりだったけれど、いつかきっと、分かってくれる日がくると信じていたあの頃。

 ……アルトの笑顔が、ふっと浮かんだ。


「アルトに明日相談してみましょう。話を聞いていただけるかしら」


 人との距離感が分からない。

 アルトには嫌われたくない。重いと思われて離れていかれたらどうしよう。

 私は、崖から飛び降りる時のような気持ちだった。


 翌日、話があるからとアルトを学園の喫茶室に呼び出して事情を話した。

 貴族のご令嬢達が、お茶会などに使う部屋だ。

 予約すれば、メイドが話の聞こえない所で控えてくれている。

 人に聞かれたくない話をするには、いい場所なのだ。


「……というわけなの。アルトの考えを聞かせてほしいんです」

「うん。そんな事情があったなんてなあ。大変だったな」

「そう言っていただけて嬉しいです。いつか認めていただけると信じてたんです。国に帰って侍女をすれば認めてもらえると思いますか」

「1人でずっと頑張ってたんだな。俺はお前の気持ちが聞きたい。おまえはどうしたいんだ?」

「え? 私の気持ち? 私は……分からないわ。だって自分で決めたことって、あまり無かったから……。私の意見は聞いてもらえなかった。いつも……」


 そうだ。着る物も食べる物も言うことも決められていた。趣味も進路も嫁ぎ先も全部。

 私は、自分のことなのに自分のやりたいことが分からないなんて……。


「ごめんなさい。私は自分のことを放り出しすぎていたんですね」

「遅すぎるだろ。気づくの……」


 彼はポロポロと涙を流した。

 あああ、泣かせてしまった。どうしよう! 私も情けなくて落ち込んでしまった……。

 アルトは暖かい心の持ち主だわ。私と違って。

 彼といると、私も心の暖かさを分けてもらえる気がする。



「私は……」

「うん」

「あなたと一緒にいたいわ。今はそれだけしか分かりません……」

「待った」

「え?」


 アルトは、椅子から立ち上がり、私の前にひざまづいた。


「俺から言わせてくれ」

「なに?」

「誰よりも優しく聡明で美しいグエンダ。俺と結婚しよう。一緒にいろんな事を体験しよう。国に帰らないでくれ。俺はおまえとなら、きっと面白おかしく生きていけると思う」


 いきなりのプロポーズだった。

 私は頭の中が真っ白になった。


「私は外国人で、国では婚約破棄された傷モノです」

「うん」

「人との付き合い方が分かりません。お料理もできません」

「うん。分かってる」

「そんな私でもいいですか?」

「もちろん!」

「私も……! 私ももちろんです! 」


 私達は飛び上がって抱きしめあった。嬉しい! 凄く嬉しいわ!

 アルトは私を抱き上げて、クルクルとまわった。私は嬉しくて声を上げて笑ってしまった。

 部屋付きのメイドが驚いて、飛び出してきた。


「大丈夫です。なんでもありません」

「『善は急げ』なんだろう? おまえに教わった言葉だ。今から指輪を買いに行こう!」

「まあ! 嬉しいですわ! 行きましょう!」


 祖国にいた頃の貴族の流儀とはほど遠い。

 それでも楽しくて仕方がなかった。こんな自分は知らなかった。

 私はアルトに手を繋がれて、街へと飛び出した。街一番の宝石店へ乗り込んだのだ。

 宝石店で、アルトは丁寧に対応されていた。彼は裕福な商家の息子だ。この店とも付き合いがあるのだろう。

 個室の用意をする間、私は店先のソファーに座って1人で待った。



「グエンダじゃないか。こんな所で会えるなんて」


 後ろから、急に声をかけられた。よく知っている声だ。

 私の体が恐怖ですくむ。


「どうした? なぜ立ち上がって臣下の挨拶をしない?」

「…………」


 彼がこんなところにいるはずがない。新聞で彼の動きはチェックしていた。

 この国に元婚約者の王子はいないはずだ。 お忍びだろうか。ラフな格好をしている。


「グエンダ! いい加減にしろ!」

「……アルト! アルト!! ……助けて!!」


 王子が私の腕を掴んで引っ張り上げた。私は恐怖で固まる喉を叱咤した。必死で叫んだ。

 王子には、気持ち悪さしか感じなかった。

 アルトが慌てて駆けつけてくれた。


「グエンダに触るな!」


 アルトが、思い切り王子を殴りつける。

 王子が思わず倒れてうずくまる。生まれてから一度もぶたれたことないだろうに。痛くて怖いでしょう。


「お客さま、こちらはアルト様のご婚約者様でございます。お戯れは、当店では困ります」

「なんだと! 聞いてないぞ!」


 屈強な護衛達が現れて、王子と奥で宝石を見ていた平民の少女を、店の外へ追い出した。

 

「外国の貴族らしいのですが、無礼なことです。不快な思いをさせて申し訳ありません」

「いや、いいんだ。助かったよ。グエンダ。大丈夫か?」

「はい。私は大丈夫です」

「おまえが無事でよかった」


 私は、アルトと見つめあって微笑んだ。

 考えたが、私は王子と気づかなかったことにした。

 それが、1番丸く収まる気がする。


「この指輪がさ、おまえに1番似合うと思ってさ。予約……してたんだ。おまえは綺麗だから、ちゃんと証をつけてないと心配だからさ」

「ありがとうございます。アルト。私幸せだわ」


 アルトの髪と瞳と同じ金色と茶色の宝石がついた指輪だった。彼は、壊れ物を扱うように指に入れてくれた。

 彼は耳まで真っ赤になっていた。

 私は、この瞬間をメモして何度も思い出そうと決めた。最高に素晴らしい瞬間だった。

 楽しいことは記憶に残りにくいから。ちゃんと何度も思い出せるように。


 この指輪は、私の生涯の宝物になる!

 あの王子にもらった指輪は、国を出る時に、教会の募金箱に入れてきた。誰かの役に立つなら、指輪も浮かばれると思ったのだ。

 アルトへの指輪は、私の色の黒と青の宝石を選んだ。

 独占欲を出しすぎかしら。でもアルトって女の子に人気があるのよ。本人は興味がないらしいけど。



 王子達はお忍びで遊びに来ていたので、宝石店での騒ぎはもみ消された。私も、知らない人に絡まれたと言い切った。アルトには本当のことを話した。アルトは笑って「スッキリした」と言った。

王子も外聞が悪かったのだろう。黙っているそうだ。


 私は今、とても幸せだ。

 アルトのご家族にも紹介された。気さくな方達で歓迎してくれた。良かった。嬉しい。

 私の実家へは、手紙だけで報告した。外国なので、おいそれとは行き来は出来ない。傷物の娘が、遠国で結婚したくらいに思っているのだろう。

 結婚式への参加も、代理で執事と私の家庭教師だった方が来ただけだった。逆にトラブルが起こらなくてよかったと思うことにした。


 家庭教師の先生は、そのままこの国に残った。今もいろいろと私の相談に乗ってくれている。

 

「グエンダ様、完璧でなくていいのです。そして、あなたが弱さと感じる繊細さは武器にもなります」

「武器ですか? 先生」

「ええ。ただ、自分にあった環境に身を置かないといけませんよ。他の人には気づけない細かな事を形にしていくんです。繊細な味の料理を作ったり、読み取った情報を紙に書いて形にしたりね」

「私の弱さを才能にできるんですか」

「そうです」


 前世の知識を紙に書いてアルトに渡しましょう。彼と一緒に知識を活かしていけたら嬉しい。

 アルトは私の気持ちを大切にしてくれる。なんて貴重で素敵な人なんだろう。

 料理は、おいおい上達していけばいいわ。

 あの王子の婚約者でいた頃よりも、今の方がずっと幸せだわ。

 アルトとの日常の小さな幸せが、とても愛おしい。


 毒親に育てられると、脳が萎縮すると前世の知識にあった。脳に血を通わせるために、1日30分ほど歩くと良かったはず。

 私は、毎日夫のアルトと並木道を散歩している。とりとめのないことを、彼と話しながら歩くのが嬉しい。

 辛い記憶がフラッシュバックした時は、自分を抱きしめる。自分の中の傷ついた自分を抱きしめる。優しい言葉を、私の中のもう一人の自分にかけ続けている。

 動けない程辛い時は、アルトに伝えると休ませてくれた。休んでいいと言ってもらえるのが、本当に恵まれていると思った。


 元婚約者の王子は結婚したが離婚された。子どもも母親についていったそうだ。孤独に過ごしているらしい。



 いつか子どもが生まれた時、私は子どもの気持ちを聞こう。毒親育ちは毒親になりやすいという。だから、失敗することもあるだろう。その時は子どもに謝ろう。アルトも一緒に考えてくれるという。

 大丈夫。きっと上手くいくわ。

 アルト達がいてくれるのだから。



 

 アルトとグエンダは子どもに恵まれて、たくさんの孫にも囲まれて、幸せな晩年を過ごした。

 

 



最後までお読みいただきありがとうございます。


面白かったらブックマーク、星5、いいねなど下の評価をよろしくお願いします! 執筆の励みになります。



アルトとグエンダの結婚後……

アルトが作ってはグエンダに食べさせるために、グエンダの料理の腕はあがらない。アルトはもう少しグエンダをポッチャリさせたかった。

グエンダは前世の知識を執筆するが、あまりに進んだ知識なので、アルトと子ども達が話し合って秘匿した。世の中の情勢を見て、小出しに知識を世に出している。グエンダはあまり有名にならない。後世で、グエンダの書が発見されて、彼女は不世出の天才として有名になった。


家庭教師は老婦人で、グエンダ夫妻の近くに家を買って住むことにした。彼女はグエンダの人柄が気に入っている。グエンダ達とよくお茶会をする。グエンダと楽しかったメモの話をして盛り上がる。そうやってグエンダは、楽しかったことがよく思い出せるようになった。長期記憶になるということです。


グエンダは子どもが生まれて、こんなに小さくてちゃんと育てられるか泣いてしまったり、ぬくもりに凄く癒されます。子どもが体調を崩してしまったら泣いて苦しんでアルトと話し合って態度を変えてみたりと、試行錯誤しながら変わっていきます。子どもの幸せを願って暴走したり、子どもに謝って「違う」と言われたり、アルト達にフォローされながら一生懸命親であろうと努力していきます。仲の良い家族です。



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― 新着の感想 ―
[一言] 前世の記憶を思い出したのは、何より自分が「今度こそ生きていきたい」と思ったからでしょうね。 前世では間に合わなかったあれこれも役に立って本当に良かった。 子育ては、幼い頃自分が経験してきた…
[良い点] ヒロインが幸せになれて良かったし、ゴミの方は相応の末路辿ってて満足しました。
2023/10/27 00:06 退会済み
管理
[良い点] 面白かったです。
感想一覧
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