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勤労の転移者ども ~努力すれども頑張れども、さりとて暮らしは楽にならず~  作者: ぺるでらほにてん
エールデランドへいらっしゃい──転移とジオード、そしてダンジョン
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意図せぬ虚偽、向ける懐疑・其の七──真相の欠片

「五日の論拠は、ギルドから回覧された、ほぼ空欄の仕様書と」先ほど投げ出された書面が床にこぼれ落ちている。そのうち一枚を視線で示す。「そこにある初回見積だ。庁舎への届出書類は工程表の付録物でしかなく、内容も見れたものではないが、書式としては揃った扱いとされるから、算出資料の正式書面であることには違いない。だから疑問を抱けなかった」

「これね」書面を床から拾い上げるのはツグミだ。「改めて、ひっどい出来だわ」

 いるとは考えていなかったカリルトの眉がひそめられる。イーヌォ姫のお付きたちに背後を固められている様子に、さらに疑問符が追加される。「……お前、なにをした」

「してませんてば!」書面を目線の高さに掲げて窓の光に透かしつつ、ツグミはカリルトの問いかけを必死に否定する。「ボクがやらかしたの前提ってやめてくれません?」

「その初回の見積書を見ると」ムーチェンが口を挟む。「期日が延びるのはなぜか」

「ダンジョンの資材分解速度は、同区画に持ち込まれた資材量か、侵入した作業員の人数で変動します。持ち込み資材量が多く見積もられていたならそれは、人体代替品に他ならない。初回見積もりでは、現況調査の六名と個々の持ち込み資材に加えて、余剰に五〇キロが計上されていますから、それを計算に含めた結果です」

ツグミの手が、裏表と書面をひっくりかえす。「六名分の食糧一四日分、これかな」

「なぜ、そう言わない」ヴェンデルが首を傾げる。「初回見積書など、不足さえなければ良い程度で回覧されるとタカシから聞いたことがあるが」

 その言葉にカリルトが自嘲気味な笑いを吐き出した。「この場にある書面と金額の全てが一致していないからだ。依頼主が二人揃うこの場で、それは言えんよ」

「ソアダさんはマズいね」見積書の裏面を顔の正面にかざしてツグミも、へら、と笑う。「設備を含む資材販売業の、いわば問屋を営んでるのに、今、ヨウアン領主に受注書面の提出を促されても即時に開示できないんでしょ」

 カリルトは頷く。「大会議室での衆人環視の中、自社の不利益になる上に、(ギルド)にも飛び火するだろう発言など口にできようはずもない。せめてビルギッタたちが侵入届け時に受領書を提出していたなら良かったろうが、それもない」

 ヨウアンとムーチェンは共に頭を抱えた。

「ひどい話だ「それもこれも」今は黙っていてくれ。頼む」

「チェスターは、だから自身の計算不備としか弁明できなくなった──これに関してはなあなあで済ませていたこれまでが悪い。依頼主からの検収書に向けて後追い発行の受領書で辻褄を合わせることすら慣例化していた節もある。その手間に業務が遅延する体たらくだ」

「まあ、ここ最近は平和でしたからねぇ」ツグミは肩をすくめ書面を振ってみせた。「ていうかティアハイム(うち)がずっと指摘してきたことじゃあないですか」

「その指摘が私にまで上がってきていなかった。それが判明したのは先日のことだ」

「ああ、そちらさん(デルグ)の窓口は」ツグミは頭を振る。「……ダリオを切り捨てましたね」

「なんのことやら。さてチェスター、私の言葉に異論は無いな」

「は、い……」

「それで」ヨウアンが、いくぶんか疲れた顔でカリルトに問う。「発行した職員は」

「ベネディクトです。経験を積ませる目的で任せていたのですが、仕様書と見積書の不備に関しては、申し訳ありませんが即時改善とはいきません」カリルトは、次いでツグミに向き直った。「御社にもその旨を織り込み済みで依頼しているが、このような事態になってしまった以上は、なんらかの形で指導、改善する」

「うちで発注書を仕上げるのが常習でしたから、その業務を取り上げられると工数が減るんでそれはそれで困るんですけど──さておきそのベネディクトくんは今どこに」

「身内に不幸があったとかで、先日から長期休暇に入っている」

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