表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勤労の転移者ども ~努力すれども頑張れども、さりとて暮らしは楽にならず~  作者: ぺるでらほにてん
エールデランドへいらっしゃい──転移とジオード、そしてダンジョン
42/96

不備の隠蔽・其の五──不退転

「無駄に時間を消費した」

 マヌエルの言葉には、つくづくと同意するしかなかった。

 現在の状況を鑑みれば、早々に内部情報を得られたからと、即時に事態が収束することはないとわかる。だが安否が判明したからこそ、場の方針が定められたのだ。これが昨日のうちであれば国家地方警察などという第三勢力が介入する前に、なにかしらの手が打てただろう。

 情報が得られないからと悠長に、ことの成り行きを眺めた結果がこれだ。

「自治体警察の、洞窟城周辺封鎖は目的が明らかだ」

「事故に便乗して犯行声明を出す不届き者の抑止、そんなことは重々承知してるわよ」

 場を活用するに、社会運動を目論む不法事案の機と見る思想犯だろうと君子豹変(くんしひょうへん)な愉快犯だろうと、誘導は流言浮説が基本的で有効である。ゆえにヨウアンの打ち上げた情報量をもって対処とは、このうえなく適切な手段と言える。

「この場で起きたことはあくまでも事故災害であり、外部からの実行犯など存在しない、との声明としては堂々としたものだ」

「だから救助が成ろうが失敗しようが、事態のなんらかの帰結をもって、長くとも五日目には封鎖は解除される、そのはずだったのよ」

 状況に便乗して紛れ込むのは、正しい行動だったのだ。つい先ほどまでは。国家地方警察の洞窟城領境に及ぶ広域封鎖が加わってしまった今、不首尾きわまる有様となってしまった。

「最悪を想定する必要がある」

「とっくに最悪。ただ、どうにもチグハグに感じるのよね」

 物流を継続させているのであれば、領境に及ぶ広域の検問封鎖は隠すものではないのか。本来なら国家地方警察の関与も隠すつもりだったのではと思える。封鎖されていると知らないままなら、自治体警察の包囲から逃げおおせたところを、国家地方警察の御用提灯に取り囲まれる、という間抜けな逃亡に成り果てていたに違いない。

「……ダリオのバカな行動に救われたかしら」

「やりおおせただけ、まだ運がある」マヌエルも同様の結論に到達したらしい。「タカシが先行して現れた。これは連中の意図したところか」

「エーデルトラウトを動かすのは、タカシちゃんのやり口じゃあないわよ」

「ユキヒトか」普段からそこまで感情豊かではないマヌエルだが、不快な表情は露骨だ。「タカシには好感しか無い。だがアイツは嫌いだ。策が過ぎる」

「まあ、好きにはなれないわね」ユキヒトが動いたのなら、ただコウイチを助けたい一心、ということは無いだろう。別の思惑が必ず潜んでいる。「彼なら──そうね、ダンジョン生成に指向性を持たせる神具の存在を察していそうだわ。コウイチを派遣したのは偶然と思いたいけれど、巻き込まれたと知った上でも当初の目的を貫徹するでしょうし」

「いっそ、渡すか」

 ソレを。とマヌエルが軽い顎の動きだけで、サコギが腋の下にぶら下げるペグを示す。

「だめ」ちらと、背後で熱論を交わし合う作業者たちを振り返り見て、戸惑いがちに視線を泳がせる。流れ着くのは支路内部に立ち塞がる魔力結晶の壁だ。「持ち込んだ当初はね、不味い立場になりそうならとっとと手放すつもりだったわ。ただの発見者を装って押収させようって。だけどコレは、だめ。結果の情報を含めて渡せない。誰にも」

 かぶりを振りマヌエルはサコギに向き直った。「ではどうする。外に持ち出すにしろ、その長物は目立つ。形状を知られている懸念もあるのだろう」

「場を混乱させる手段なら、あるわ。最後まで使わないつもりだけど」

「──それしか無い、というべきだな」

 触媒消費がほとんどないままに燃焼が続いている魔力の結晶。それは今現在もじわじわと熱量を上げ続けている。いつまで安定していられるかは、検証が進まないと不明だ。逆に言えば即時退避の指示がいつ出されてもおかしくないのが今現在の状況である。

「適当な作業者に、魔力のフラッシュオーバーが発生する予想で検証させて」

「理解した」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ