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勤労の転移者ども ~努力すれども頑張れども、さりとて暮らしは楽にならず~  作者: ぺるでらほにてん
エールデランドへいらっしゃい──転移とジオード、そしてダンジョン
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被災時の対応・其の二──工程計画表とサプライリスト

「埃をたたせるなと」発注書を片手にコウイチは、呆れながらもしかし失笑した。場が明るい分には咎める筋合いも無いのだから。「止める立場が二人、騒いでるんだものな」

「コウイチさん、食糧の数は、やっぱり合いません」

 エルノから、報告と共に差し出されたサプライリストとメモ書きを受け取りながら「そりゃあね」とコウイチの口からため息が漏れる。サプライリストとは資材の納品書のことで、発注の見直しにより更新されるのが常である。至極当然のこととして、最終情報で納品準備を整えて発送しているはずだ。ところが納品書と納品物に内容と数量の不一致がある。

「俺の持つコレが」と発注書を振って見せる。「リストの最終なんだけど、こっちとは合致しているんだ。添付されているサプライリストが二つ前のリビジョンってことは、集荷が発送品のタグしか確認していないってことで……報告書あげなきゃダメかなぁ、ダメだよなぁ」

 ヤンキー座り、俗称うんこ座りでコウイチは、それぞれの手に持った書面を前に投げ出すようにして、項垂れてしまった。叫び出したくもある。なにせこの業務の担当はコウイチ自身である。なんのために短納期に文句垂れつつも納品に間に合うよう駆けずり回ったのだか。

「うっわ、逃げたい。人様の不備や手抜きや失敗あげつらうなんてうんざりだ」

「リストより余裕があるから安心」コウイチの両手から書面を抜き取り、エルノが問う。「では無いんですね。出立時から五日分は多いなと思ってはいたけど」

「それ」エルノが手に取ったリストをコウイチは、顔を伏せたまま指差した。「本来なら工事計画書と一緒に洞窟城入場受付に提出してあるはずなんだよ。確認してもらった通り、提出されていたところで更新前の記載だから、内容は合致しないんだけどさ。受付で保管されている書面はたぶん、現況計画日時決定時の仮仕様だろうけれど、だとしたら」

「だとしたら?」

「俺たちは向こう二週間分の備蓄を持って侵入していることになる。ダンジョンへの持ち込み資材がその分過剰に見積もられていたら最悪だ」

 ジオード生成による大量の鉱物資源消失、伴う、ダンジョンの自己保持性質による持ち込み資材の消化加速は、特別講習を受けずともクランに勤めていたなら自然と頭に入っている。さすがに人体に及ぼされる悪影響までは──そういえばイーヌォちゃんに教えるべきかどうかユキヒトが悩んでいた覚えがある──さておき、あるんだ、くらいしかわからない。では人体に悪影響が及ぶまでの時間的余裕は、持ち込み資材の重量で換算されるわけだが、

「食糧は一日二食で六〇〇グラムが一人分。それが六名一四日分となると五〇キロちょい。それだけの人体代替品が確保されていると想定されてしまう」

「なぜ二週間分……?」

「過去事例からママ転記したんだろうなぁ」あまりに過剰に過ぎる計画時の初期発注書を、コウイチはいちど差し戻したのだ。すると食糧をバッサリ削除するという呆れた内容が再提出された。のちに判明したのだが、初回の仕様と見積もりは提出したとの建前でしかないとのことだった。クランに実務を丸投げしているから、工事工程さえ合っていたらそれで良く、内容など把握するつもりもない、という呆れた実態だ。つまりは初回の回覧内容も、差し戻しののちの再提出記載にも、なんら意味などなかったのである。「持ち込み資材の情報はデタラメ、工事計画も未通知、入場人員は口頭報告のみ──どうにかして外部と連絡取り合って情報共有しないと、救出計画に致命的な齟齬が出るぞ」

「すみません。僕のせいで」

 は?

 顔を上げたコウイチは、腰を下ろしたエルノがこちらをまっすぐに見つめているのを、怪訝な目つきで受け止めて首を傾げた。「なんでエルノくんのせいになるの。君が転移を招いたっていうなら話は違うけれど、そうじゃないよね」

「僕の余計な真似で、全員が閉じ込められてしまいました」エルノは視線を外さず、抑揚の無い口調で続ける。「反省しています。後悔も。罰してもらえるなら正直、ありがたいです」

「……あのなぁ、まずその勘違いを「エルノ、は! すごい、です!」うわ出た」

 座り込んで背を丸めていたのが彼女にとってちょうどよかったのだろう。カステヘルミはコウイチの背中にのしかかり、直線上にいるエルノに身を乗り出して鼻息を荒くしている。

 視線を上げると、膝をついたエルノの首から上が、カステヘルミのご立派な下乳に隠されてしまっている。固い作業着で押さえてこれなら、脱いだらどれだけでかいんだこの娘。

「なぜ乗「あたし、動けませんでした、まったく」聞いて?「人を助けたん、です!」カステヘルミさん、その「誰も責めたりしませんし、させません!」落ち着こうかなぁ!」

「コウイチさんも、です、よね!」

 両拳を握り、自分の乳越しにこちらを覗き込もうと、しているのだろうが、コウイチからは乳の向こうに流れ落ちて揺れる髪が見えるだけだ。

「俺、君の乳と喋ってるみたいになってるから、とにかく、どいていただけます、かね」

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