-陰陽師探偵-
お越しいただきありがとうございます。前書きは苦手です。少しでも気に入っていただければ幸いです。
綺麗な月夜。
月明かりの下
流れるのは
この世の者でない
赤い赤い鮮血…。
「ったく、ごちゃごちゃし過ぎだぜ?もっとCOOLに攻めてこいよ、なっ!!」
次から次へと、襲ってくるモノノケを巨大な剣を振り回しながら倒していく少年。少年の猫を思わせるふわふわの髪と、アーモンド形した大きな瞳は、飛び散るモノノケの鮮血に負けず劣らないほど赤い。頭にはターバンとゴーグル、ブカブカなシャツにスマートなパンツをブーツインした出で立ちは、パンキッシュにまとめられている。
彼の名はリコリス。
この世のモノでなく、人類に危害を加えようとするモノノケを浄化する、陰陽師と呼ばれる者である。
「リコリス。」
少年を呼ぶ少女の声。
「あぁっ?」
リコリスの振り向いた先にはオレンジ色の長い髪を2つに分け、下の方で結い、ふわふわとしたお人形の様なお洋服を着た、可愛らしいが、無表情な1人の少女。
そして…。
「うおっ!?」
降り下ろされた巨大な木槌。
「危ない、かも。」
「おい、雛罌粟…かも。じゃねーよ!!危ねぇよ!!なんで毎回俺を攻撃する!?」
降り下ろされた木槌の主である雛罌粟は、無表情のまま、首を傾げ「木槌、重いから。」と返した。
「答えになってねぇ!!」
全力で突っ込むリコリスの背後にはモノノケの影。モノノケがリコリスを攻撃しようとしたと同時に、モノノケは左右半分に綺麗に分かれた。分かれたモノノケの背後には黒く長い髪を後頭部辺りで綺麗にまとめ、口元には整えられた髭、そして執事のような格好に日本刀を手にした男の姿。そのまま下段に低く構え、上段に斬り上げる。
「さっすが、タツ。」
「タツナミ、綺麗。」
タツナミと呼ばれた男は、モノノケをバサバサと斬り倒していく。その姿はまるで舞を舞っている様である。
「…忘れた。」
タツナミが眉をしかめながら呟く。
「は?何を忘れたんだ?ご丁寧に数でも覚えてた、ってか!?」
リコリスが襲ってくるモノノケを蹴り、そのまま肩口から大きく斬り込む。
「今夜の献立。」
タツナミの言葉にリコリスがずっこけた。
「っの、主夫がぁ!!」
綺麗な月とたくさんのモノノケと、それらの血だまりの中、リコリスの声が響いた。
「あー!!終わった!!早く帰ろーぜ。」
リコリスが大きく伸びをし、今まで振るっていた巨大な剣を一瞬にして消す。剣は札に霊力を込めて作った物らしく、足下に術語の書いてある札が落ちた。雛罌粟、タツナミも同じように各々の武器を消す。
「いくら消えるとはいえ、モノノケの血が付いた服なんて早く洗いてぇよ〜。」
うげぇ。と言いながら眉をひそめるリコリスの目の前でモノノケの残骸と血だまりは次々と消えていく。どういう作りなのかは不明だが、死んだモノノケと血は時間が経つと自然と消える。元々一般人には見えてはいないのだから残っていても問題はない様な気がするが、あんな物が街中に、それも大量にあったら気持ち悪い。とリコリスは言う。
「ところで今日の献立思い出したか?」
「あぁ、今日は…」
「ハンバーグ。」
タツナミの言葉を遮ったのは雛罌粟。彼女は細身ではあるがよく食べる。特に肉が好物らしい。
「昨日も肉だったんだから、今日はサバの煮込みだ。」
対してリコリスは食欲は一般男子と変わらぬ様で、肉より魚、和食を好むらしい。
「いや、今日は…」
口を挟もうとしたタツナミそっちのけで「肉」「魚」と口論が始まった。
「だいたいお前は食いすぎだっての!!」
「だって、食べ盛りだもの。」
感情的なリコリスとは正反対に、雛罌粟は相変わらず無表情のまま反撃する。
「ってかあの異常な量はお前の何処に入ってくわけ?」
「胸。」
「っ!!お前鏡良く見ろ!!あの量がお前の胸の糧になったならその洗濯板はなんだ!?」
雛罌粟の肩を掴み揺するリコリスに、雛罌粟は相変わらず無表情。
「セクハラ。」
「お前が振ったんだろーが!?」
ギャーギャー喚く2人を見ながら、「またか」と思うタツナミである。故に止める気も無く、止められる者が居ないこともタツナミはわかっている。
「やっほ〜お帰りぃ。」
口論しながらもたどり着いた家の前には、金髪で肩程の髪をふわふわと無造作に遊ばせた髪、ほんのり垂れた目には色気が漂い、薄い唇の右下には黒子…それがまた色気を倍増させている。まるでホストの様な甘い整った顔をしているが、出で立ちは深い緑の着物に濃い墨色の羽織、黒く上物の草履を履いている。
「兄貴。」
「蘭殿。」
「可愛い弟にひなちゃん、ナミちゃん、お疲れ。」
リコリス達にヒラリと手を降る蘭。彼は正真正銘リコリスの兄である。
「喜べタツ。」
リコリスの口元が上がる。
「今日の夕飯、作らなくて済むぞ。」
リコリスの笑みが蘭に向く。「な?兄貴。」と言えば蘭は苦笑しながら扇子を広げ、その扇子で口元を隠す。
「現金な弟だな。」
「頑張ったご褒美だろ。」
イタズラに成功した子供の様に笑うリコリスに向かい、「何が食いたい?」と蘭が問い掛けた。
あれから数十分後、テーブルの上には大量の寿司とピザ、フライドチキンにパーティー用オードブルが並んでいた。
「蘭殿、すまない…こんなにたくさん。」
申し訳なさそうに言うタツナミに蘭は苦笑する。
「ナミちゃんが気にする事ないさ。言い出したのはウチの弟だしね。それに、ひなちゃんはこんなものじゃ足りないだろ?」
「…確かに。」
そう呟いたタツナミの背後からは美味しそうな米の炊ける匂いがしている。
テーブルに全員揃う頃には3人共、風呂、着替えを済ませていた。
「で、兄貴。」
マグロの握り寿司を口に運びながらリコリスが蘭に話しかける。
「次はどんな事件?」
「わぉ、流石弟。よくわかったね。」
「兄貴が来るってことは、仕事持ってきたってことだろ?」
サーモンに手を伸ばしながら言えば、蘭は「酷いなぁ〜」と苦笑した。
「まぁいい。次のお仕事はこれ。」
ヒラリと懐から出されたのは一枚の写真。そこには正に大和撫子。と言わんばかりの綺麗な女性が写っていた。
「うわっ!!超美人!!」
「だろ!?」
流石男の子と言ったところか…写真の美少女について盛り上がるリコリスと蘭である。
ついでに雛罌粟は黙々と食べ続け、タツナミは温かい緑茶を注いでいた。
「この人は柏木柚希さん、かの有名な柏木グループの令嬢だ。」
「柏木グループって…あの!?」
「そう。」
クスリと笑う蘭にリコリスは軽い目眩を覚える。
柏木グループとは、元は小さな会社だったが、初代にして急成長、今ではIT企業と言えばまずこの名が出る程の大きな会社。最近では病院、遊園地、さらには老人ホーム等の幅広い分野で名を馳せている。
そんな大きな会社の令嬢が今回のモノノケのターゲットと選ばれた理由はいくらでも出てきそうだ。
「俺令嬢って苦手なんだよね…。決まって高飛車、自己中、世間知らずときてる。」
眉をしかめるリコリスに向かい、蘭は相変わらず笑顔のまま。
「柚希さんはいい娘だよ。」
蘭の言葉にリコリスがうらめしそうな目を向ける。
「兄貴の『いい娘』は信用できない。」
「なんだい、それ。」
「兄貴にとって女は皆『いい娘』だろーが!?」
「まぁ確かに。」
悪びれる様子もなく肯定する蘭。
「だけど、柚希さんはリコリスも好きなタイプの『いい娘』だよ。」
意味深に微笑む蘭を横目に見ながら次はハマチを口に運ぶ。
「まぁ、モノノケが関わっているんだし、好き嫌い関係なく仕事なら引き受けるよ。なんたって俺ら『月下堂』はプロですからね。」
タツナミが準備してくれた茶をすすりながら言えば、「流石プロ」と蘭が嬉しそうに言った。
蘭はまだ仕事があると、要件だけ伝えすぐさま帰っていった。3人で食べきれるのか?と尋ねたくなる程の量あった寿司やオードブルは、ほとんど雛罌粟の胃袋に収まったが、当の本人は足りないらしく、タツナミが炊いてくれた米を食べていた。
「…ほんっと、お前の体内どーなってんだよ?」
リコリスが呟けば、雛罌粟は相変わらず無表情に「消化が、いいの」と言った。
消化がいいくらいでそんなに入るものなのか!?いや、でも最近では大食いクイーンも多々いるようであるし…異常なことではないのか?と、リコリスは1人頭を抱えていた。
そこに食後のお茶を持ってきたタツナミ。
ここからは、今回の依頼について、明日からどのように動くかの作戦会議の始まりである。
「とりあえず、明日は柏木柚希を兄貴が連れてくるから、詳しい話は本人から直接聞く。」
リコリスが写真をヒラヒラと弄びながら話始めた。
ついでに雛罌粟はどんぶり三杯目のおかわりで、お茶漬けにして食べている。「今まで彼女の身にあった事を聞き、モノノケの正体を突き止める…って事だが、あの兄貴がモノノケのことについて何も触れなかったってことはかなりの大物だと考えて間違いないと思う。多分兄貴もまだしっぽ掴んでないみたいだしな。」
「蘭殿が気配の欠片も気付いていないのであれば、厄介だな…。彼女の身もかなり危険だろ。」
「ああ、一応兄貴が式神を護衛に付けているが…。」
「破られるのは、時間の問題、かも。」
いつの間にか食べ終えた雛罌粟が呟けば、暫しの沈黙が訪れる。
「まぁ、どんなに強力なモノノケでも明日まで式神は持つはずだ。後の行動だが、俺が彼女の護衛に付く。」
リコリスは側の棚から紙とペンを取り出し、文字と落書きの様な物を書いていく。
「タツは兄貴と連絡取りながら何時もと同じく、柏木柚希の事を調べ、モノノケが何かを探ってくれ。雛罌粟は柏木の家と会社に結界張り。まぁ、ターゲットは柚希だろうが、彼女の親族が襲われる可能性もあるからな。それが終わったら俺と合流。彼女の護衛だ。いいか?」
リコリスの言葉にタツナミと雛罌粟は頷く。
リコリスは紙に各自の似顔絵であろう落書きと、矢印で今回誰がどう動くかを書き出している。それはまるで中学生の落書きの様である。
「兄貴がしっぽを掴んでないモノノケだ。それなりに頭は働くんだろ。だから明日いきなり襲ってくるとは考えにくいが…一応何時でも戦える準備はしておけ。雛罌粟は特に用心しとけよ、結界張ってる途中で攻撃されてそのまま死んだなんて事になったら笑えねぇからな。」
「わかってる。」
「じゃ、今日は解散。たくさん寝て霊気貯えとけ。以上。」
リコリスの言葉で3人はテーブルから離れる。
リコリスは真っ先にソファーに向かいテレビを見る。タツナミはキッチンに向かい後片付け。雛罌粟はタツナミに続き、手伝いをしている。
「リコリス、たくさん寝て霊気貯えるんじゃなかったのか?」
タツナミの声に、リコリスはテレビを見つめながら「俺テレビ見てると霊気貯まる仕組みなの」と返した。
翌日、柏木柚希が蘭に連れられてやってきた。
「お待ちしておりました、柏木柚希様。」
タツナミが出迎え、リコリス達の待つリビング兼『探偵事務所月下堂』へと案内する。
「ようこそ、柏木柚希さん。俺がここの所長の…」
「リスちゃん。」
「リ、リスちゃん!?」
自己紹介途中に口を挟んだ柚希に、リコリスは驚く。「リスちゃん」自分をそう呼ぶのは過去さかのぼっても、ただ1人だけ…。
「ひなちゃんも久しぶり。」
「久しぶり、ゆぅちゃん。」
雛罌粟は普通に挨拶をした。やはり知り合いらしい。と、いう事は…。
「ゆぅちゃんって…あのゆぅちゃん!?」
「そーだよ、リスちゃん。ひどいなぁ〜忘れてたんだ。蘭にぃもひなちゃんも覚えててくれたのに〜。」
「だ、だって、小学校以来だろ!?名前だって、ゆぅちゃんってだけで本名覚えてなかったし、ってかめちゃくちゃ綺麗になってるから!!」
「む、リスちゃんってば。名前忘れてたんだ。でも綺麗になったって言ってくれたから許してあげる。」
屈託なく笑う柚希にリコリスは肩を落とす。
「なんなんだよ…皆して俺に黙って…兄貴も知ってたんなら先に言えよ!!」
「言ったでしょ、リコリスの好きなタイプの『いい娘』だって。」
にこりと、それはそれは悔しい程綺麗に笑う蘭に、リコリスは「それは言った内に入らない!!」と怒鳴る。怒鳴ったところでこの兄に敵うわけもなく「忘れてたお前が悪いんだろ」と綺麗すぎる笑顔で言われれば黙るしかないリコリスである。
「あ〜なんだ。とりあえず最近あった身の回りの不思議な事とか教えてほしいんだけど。」
「うん。」
兄の笑みから逃げる様に本題を持ち出してきたリコリスに、柚希は微笑みながら返事をした。
「えっと、階段降りてたら急に足を引っ張られる様な感じがして落ちそうになったり、誰もいないはずの工事現場の下を通った時に金槌が落ちてきたり、信号が青だから渡ってるのに車が突っ込んできたり…こんなとこかな?」
「…マジで殺る気だな。」
あからさまに命を狙われているとわかるのに、相変わらず無邪気に笑う柚希に、リコリスは頭を抱える。こいつは事の重大さをわかっているのか?思った以上に手強く執念深いモノノケだ。とリコリスは眉間にシワを寄せながら考える。
「別に、危機感がないわけじゃないよ。」
「へ?」
柚希の言葉にリコリスからは間抜けな声が出た。口に出してしまったか?と思うがそんなヘマは今のところしたことはない。
「リスちゃんは、私に危機感がないと思ってるかもしれないけど、結構怖いんだよ。でも、蘭にぃの式神さんがいるから平気。」
「でも、式神には限度が…」
「童、あちきを愚弄するか?」
リコリスの言葉を遮ったのは女性の声。その声の主は柚希の背後にふわりと姿を現した。姿は25歳前後の妖艶な女性。しかし、人間とは違い頭には白く大きな獣の耳、そして9本の美しく長い尻尾が付いている。それは美しく、高位な妖狐な姿。
「雪姫さんが護衛って…今回のモノノケ洒落にならなすぎ。」
雪姫と呼ばれた妖狐は正に雪の姫と呼ばれるにふさわしい程白く綺麗な肌と髪をしている。
「雪姫さん、モノノケの気配掴めた?」
今までニコニコと笑っていた蘭が、真剣な顔をして雪姫に尋ねる。
「まだじゃ。大分用心深い様で、気配の欠片すら落とさぬ。」
「雪姫さんの鼻でも気配がわからないとなると、厄介だな。」
蘭は何かを考えている様で、右手を顎にあてる。
そこへタツナミが紅茶を持ってやってきた。熱すぎずぬるすぎない、タツナミの淹れるお茶はいつも完璧な温度である。
「焦っても仕方ない。」
そう言ってお茶を差し出すタツナミに、蘭は「そうだな。」と先程までの笑顔を取り戻す。
「まぁ、気配がわからなくても雪姫さんに加えて俺も護衛に付き、後雛罌粟も護衛に付くなら、相手も下手な小細工は止めて自ら出てくるだろ。」
リコリスはミルクをたっぷり入れた紅茶に口を付けながら言う。
「考えなし。」
雛罌粟がケーキを頬張りながら呟く。
ついでにケーキはタツナミの手作りである。
「なんだよ、文句あっか?」
「ううん、むしろ、リコリスらしくて、いい。」
相変わらず無表情ではあるが、どこか楽しそうに言葉を紡ぐ雛罌粟に、リコリスの頬が緩む。
「素直じゃねぇな。」
「どちらかというと、素直。」
2人のやり取りに柚希がくすりと笑う。
「やっぱり2人は変わらないなぁ〜。」
「むっ!確かに俺は童顔だが21だ!!」
「そーゆー意味じゃないよ、リスちゃん相変わらず。」
クスクスと楽しそうに笑う柚希にリコリスは頭を掻きながら、「つか話脱線してるから」と話を戻す。
「命狙われはじめたのっていつ頃から?」
「えっと…1ヶ月くらい前から、かな。」
「そのあたりで、なんか変わった事とかしなかったか?例えば…猫車で殺したとか、お地蔵様の首もぎ取ったとか…。」
「そんなことしません!!ん〜1ヶ月くらい前ねぇ…あ!!」
「なんかあったか!?」
「いや、でも、あれは不吉な事じゃないし…。」
「あ〜も〜なんだよ?とりあえず、言ってみろ。」
「…あのね。」
「うん。」
「プロポーズされたの。」
「うん…は?」
「だ、だからぁ!!不吉じゃないって言ったじゃん!!」
「あ、いや、うん…おめでとう。で、相手は?」
「え?」
「いや、一応相手に危険が及ばないとは限らないから。」
「そ、だよね。えっと、木村建設の息子さん。」
「き、木村建設!?」
リコリスがまた肩を落とす。
木村建設とは、柏木グループと勝るとも劣らない巨大な会社である。
「相手まで金持ちって…モノノケの正体絞るどころか、増えた気がする。」
金持ちの娘と息子…どちらもモノノケの恨みを買うには十分な素材を取り揃えていそうだ。まぁ恨みと言っても、本人達に直接関係するものでなく、親や先祖等の恨みが柚希にきている可能性もあるのでモノノケの手掛かりは広がるばかりである。
「まぁここでうだうだ考えてもわかんねぇし、今日は解散。後は実行に移すのみ。ってことで俺はゆぅちゃんの護衛に付くんで、よろしく。」
「うん、よろしく。」
「雛罌粟は今からゆぅちゃん家と会社、後、一応ゆぅちゃんの彼氏さん家と会社にも結界はんぞ。」
「了解。」
「タツと兄貴は引き続きモノノケの正体探って欲しい。」
「承知。」
「りょーかい。」
リコリスの言葉に雛罌粟はケーキの最後の一口を口に放り込み、タツナミは目を伏せ頷き、蘭はにこりと笑う。
「そんじゃ、月下堂活動開始、ってことで。」
リコリスがイタズラを始める子供の様に呟いて、椅子から立ち上がった。