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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第五十五話:新世界秩序(New World Order)①

皆さんお久しぶりですのに加え、明けましておめでとう御座います。

2026年もよろしくお願いいたします。

新人小説家のハルトです。


諸々の事情から4ヶ月の更新ができていなかったこと大変申し訳ありません。

今月から更新の方を再開させていただきますのでよろしくお願いします。

では、最新の第55話、どうぞ。

地面の揺れる音、眩く光る何かが目覚ましとなって私は目を開く。


抉り取られたような脇腹から流れ出る温かい鮮血と強烈な痛み、今にも意識が途切れてしまいそうな身体を起こしながら冷や汗を流す。


遠方で散る火花と機械の駆動音。


「起きたか、アオ」


私の背を支えて起こす力と声色の弱い誰かに対して、返事を返すことが上手くいかない。

呂律が上手く回らない。


目の前にいるのは誰なのだろうか、目元が霞んでよく見えない。

腕が痺れて動かない、得物は確かに手の上にあるけれど握ることが出来ない。

その上、刀身が半分ばかし失くなっている。


……そうだ、思い出した。

あれは、ほんの数時間前のことで────。




***




「もう少しでワールドオーダーの前に到着します。

準備を怠らないでくださいね」


作戦会議とほんの少しの余韻とも言える休暇、訓練を経て数日かけて故郷へと戻ってきた。

装甲車の中、そんな思いを巡らせながらアーサーの声を聞く。


私たちはその中で何故、奪還作戦の決行が早まったのか。

作戦の現場指揮を任されているアーサーへと問う事となる。


帰ってきた答えは至極単純なもの。


災獄(さいごく)たちが動き出しました。

だから、作戦決行を早めなければならなかったんです」


「ここまで来るのに数日かかると考えても、当然のことだと思いますが」


新東京で災獄が動き出したのと同時、地球に近づいた月から何らかのエネルギーが地上へ注がれているのが確認された。


そうである以上、動きを早めなければ先手を打たれるのは此方の方だと沖上(おきがみ)学園長は理解していたのだろう。


そうして


「今、私たちはここに────」


その言葉を呟こうとした時、既に時は遅く。

眩い光が私たち三人の乗った装甲車を襲う。


廃墟となったワールドオーダー前での爆発。


光、否。

ただの光ではない、同時に襲ってきたのは熱。

熱と光と衝撃がコンクリートを地盤ごと吹き飛ばし融解させ、装甲車の表面は一瞬にして焼き尽くされ溶けた鉄へと変化する。


アーサーと花火(はなび)は上手く脱出できた。

しかし、蒼実(あおみ)は反応が遅れ、装甲車の鉄板が腹を抉る。

そうして、時間は現在へと巻き戻る。

勢いよく吹き飛ばされた先、花火と戦っていた"彼女"、御珠(おたま) (ゆかり)


「うひっ、ひっ、ひひっ」


奇妙な笑い声を上げながら、その両手に握られているのは3m長のチェーンソーのような物。

伝承器……と言うにはあまりにも、禍々しく生物的な外見を持つソレ。


「花、ナ、花火さんっ! 」


「と、蒼実さん……お久しぶりでス、ね! 」


びく、びくと怯えているような、はたまた体にへばりつく脈動した何かのせいか。

力強いようにも怯えているように見えるし、話す言葉もなんだかたどたどしい上に裏返っている。


「御珠、なのか……」


「は、はい。

正真正銘、本物の御珠デすよ」


両腕に装着された伝承器(でんしょうき)を下げ、花火は問う。


「今まで、どこで何してやがった」


「東京デ皆さんをお待ちしてました」


鉄の軋む音。

花火は伝承器の拳を握りしめる。


「そんな、化け物みたいな姿にな…ッ…!?」


化け物という単語に反応したのか、既に御珠は花火の眼前へと接近していた。

その速さは蒼実も花火をも、ましてや(あかつき)すらも凌駕している。

問題は速さではなく、その膂力なのだが。


咄嗟に防御の姿勢を取る花火に対して、叩き込まれるのは股下から真っ二つしてやると言わんばかりに叩き込まれる切り上げ。


鉄と鉄の鬩ぎ合う中で響くチェーンソーのエンジン音。

防御の姿勢を取っていても尚、機神によって強化されたと思しき鎖鋸は、伝承器すら削り飛ばし切断してしまいそうな程の勢い。


そして、何よりも強化された当人たる御珠 縁の膂力は一瞬にして花火を宙に舞わせるだけの強さがある。


人形のように簡単に吹き飛ばされる花火を


「大丈夫ですか、花火さん」


空中に脱出していたアーサーが何とかキャッチし、ワールドオーダーの方へと滑空していく。

翼は八転獄道(やてんごくどう)の呪いを受けて以降、治りかけてはいたものの未だに完全ではない。


その為か、アーサーはゆっくりと滑空して落ちていく。


「問題ない、けど……ありゃ、2回も3回も食らってたら流石にヤバいぞ」


御珠と花火。

互いに見下ろし見上げ、目を交わせば御珠は花火を追撃するのではなく。

意識を取り戻しかけていた蒼実に手刀による峰打ちを叩き込み、歪に歪んだ肩に背負う。


言わば、人質という形を取りワールドオーダーの中へと放たれた弾丸のような速さで入っていく。


「籠城、か」


「そうみたいですね」


アーサーと共にワールドオーダーの玄関前に到着、瓦礫となった巨大な扉を花火が破壊。

そこで目にしたものは


「これ、は……! 」


驚くアーサーの横で唖然とする花火。

そこにあったのは卵……正確にいえば苗床か。

玄関前の廊下ですら数万人が所狭しと壁に張り付けられ、歪な生物のような何かを産まされている。


そこには男性、女性、幼子から老人に至るまで関係ない。


東京が崩壊してから一年……未だに意識があるものもいるのか。

痛みに悶え苦しむような唸り声や血の涙のようなものさえ流している人たちすらも散見される。


廊下だった地面に満遍なく広がるのは血、血、血、血。

甘ったるい血の匂いと腐った肉のような腐臭。


「アーサー、見るのが耐えられないなら外へいてもいいぞ。

オレ1人で────」


「バカを言わないでください。

蒼実さんは、私にとっての希望でもあるんです、それに友人を1人にしては最後の天止(てんし)として立つ瀬がないですから」


血肉で作られたトンネルを進む。

蠢き、脈動している壁、痛みから逃げようとする人の残骸"だったもの"。


2人は、それらに気づいていながらも今は目の前の目的をと急くように地下へと進む。

本来、地下は滅多に使われることのない物置だったのが


「たすけて、たすけて、たすけて、たすけて」


「かえして、かえして、かえして、かえして」


今では、人間だったものたちの声が響く場所。

2人は悔しさか悲しさから来るものか、歯を食いしばりながら更に地下2階へと進んでいく。


物置しかない程度のさほど広くない地下2階の一室で見たものは、この世で最もおぞましい光景だった。


「ひぎっ、たすけ……たすけて、いやっ、しにたくな、たしけ、たすけて」


どれほど、泣いていたのだろうか。

どれほど、助けを待っていたのだろうか。


それでも助けは来なかった人が、蛙のような顔を持つ巨大な災獄の口の中へとかつてのクラスメイトの手によって押し込まれる光景。


2人は、その目に刻む。


「おヤ、よ……ようやくきたンでスね」


その近くに倒れている蒼実を見て再度、花火はかつてクラスメイトだった者へと問う。


「どうして、こんな事を」


「どうシて? そんな事、聞かずとも良いでスよね。

この世界に広げるためでス、よ? 」


花火は静かに拳を握る。

聞きたくないと思いながら、その両眼を怒りと悲しみを宿し。


御珠は構える。

異形の力をその身に宿し、相手に全てを受け入れさせるために。


「機神の描く、新世界秩序(ニューワールドオーダー)を」


「御珠ァァァァッ! 」


終わりへの咆哮と共に駆け出す焔。

されど、この怒りは留まることを知らず。


to be continued。

「次回予告」


激闘を繰り広げる御珠と花火。

花火を支える最後の天止アーサー。


そして、三神(みかみ)視祇(みかみ)もまた彼女及び彼らと対峙する。

その時、月光と共に降臨せし究極にして頂きたるもの……機神。


その時、世界は。

人類は、全ては"停止"する。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第五十六話:新世界秩序(New World Order)②


「全てのモノは機神によって統べられる」

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