五.五話:日常・幕間《前編》
どうも、新人小説家のハルトです。
ここまで読んでくださりありがたい限りでございます。
今後とも、彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花をどうぞよろしくお願いします。
感想や意見、ご指摘などは遠慮なさらずお書きください。
翌日の早朝。
勢い良く、カーテンが開かれる。
太陽の光が俺の布団から出た頭を照らしている。
「起きろ、もう六時だ」
バハムートが、そう呼びかける。
珍しく店主では無く、昨日の戦いで相棒となった竜が起こしてくれたようだ。
戦いの時とは違い、落ち着いた様子で俺を布団から片手のみで引き剥がした。
「……休日か、今日」
「嗚呼」
小さくなっている、なんというかデパートに売ってる可愛い人形と言われても差し支えないような感じだ。
これを俗に言う、SDと言うんだろう。
さっさと寝間着から私服のパーカーに着替え、隣に立つ一軒家の洗面所で顔を洗い、バハムートと共にリビングに向かえば。
「おはよう、暁、昨日は大変だったみたいじゃない」
ソファに座り、既に朝食を摂っている傍から見れば、蒼御や花火と呼ばれた学生とさほど変わらない見た目をしている、長耳の金髪のエルフが居る。
エリアス・アールヴ。
この一軒家の隣に建つ、喫茶店ミカミの店主のエルフ族にして、風と雷の剣技と呼ばれる数少ない伝承剣の99代目の伝承者である。
何年か前に俺を拾い、育ててくれた実質的な親、名付けも彼女が行った。
エルフ族には珍しい妖精羽が生えている、が滅多に人前で見せることは無い。
「何ボーっとしてるのよ、早く食べたら?」
「あ、嗚呼……」
そう呼ばれ、近くのソファに座りながら如何にも洋食なオムレツやれトーストやれサラダやれを食しながら、会話を交える。
「……バハムート」
「え?」
この人にだけは、余り強い口調では話せない。
信頼を置いているというのも変だが、俺の過去を知る数少ない一人でもある為だ。
「逢魔竜バハムート、調べたのよ」
「何?」
動揺、否。
そんなことは無く、この女の調べたという言葉がイマイチに引っかかる。
「黙示録戦争時代に"作り出された"契約族にして、災獄の中で魔竜と呼ばれる噂の竜でしょ?」
時に、人工契約族と呼ばれる。
災獄や悪意のある人間たちに作られた契約族が存在する。
元より契約族は、黙示録戦争後の影響で様々な種族の世界の一種族であり。
他の種族よりも、卓越した技術。
つまり承器や櫃、適合システムなどを作り出した存在で、誰かと繋がっていないと実体化出来ず、それだと言うのに人類を始めとする他種族よりも圧倒的ESやレベルを誇るという何とも色々と変わっている種族だ。
少し前に、契約族は死んだ人の魂が転生し新しく生まれ変わったものだとかいう噂が流行っていたりもした。
契約族と繋がることが出来なかった悪意のある人間、災獄が利用しようと人工的に作り出したのが人工契約族である。
俺がまさか、その一柱と契約をするとは思わなかった、と言ったところで……そも左腕のせいなのかもしれないが。
「ふん、情報の詮索技術のみはあるようだな」
そうバハムートがミリアスに返し、朝食を食し終われば、店の方から扉の開く音が聞こえる。
時刻はいつの間にか8:00。
開店時間である。
「暁、お客さん来たから手伝って」
「分かった」
「バハムートも……」
「仕方があるまい」
言われる前に納得する形でバハムートも店の方に向かって行き厨房の奥から出てくる形で、俺も後にエプロン姿に着替えて向かっていく。
そこに居たのは。
「……貴方」
「お前……」
まさかの私服の花火 蓮華と、蒼御 凍花である、一つ自分は溜息を着きメニューをカウンター席に座る二人の前に置いておき。
「……お決まりになりましたら、お呼びください」
ルシファーより聞いている。
娘的立場の蒼御 凍花、異種国の経済を支える名門。
蒼御家の娘にして幼き頃父親、母親を共に亡くして以来、ルシファーの所で世話になっている奴で、剣道部のエース。
花火 蓮華、過去にそこそこ有名な不良集団タルタロスの頭を担っていた元不良。
学園へ、過去に殴り込みをしに来たが、蒼御の手で直接ボコボコにされ、そのカリスマ性と強さに憧れを抱き、その意欲から蒼御の勉学の手伝いもあり学園への途中編入を果たした柔道部のエース。
出来れば、会話的な意味でも、昨日の余り受け入れられていない様子からしても相手にはしたくない二人だ。
そんなことを考えながら、パーカーの袖で包帯に巻かれた左腕を隠しつつ後ろにあるキッチンで冷蔵庫の中を確認した後。
「すいません」
蒼御に呼ばれたので、そそくさと向かいながら何処か無愛想な顔をしながら。
「ご注文は?」
「朝のサンドイッチセットと、ペペロンチーノを一つ、珈琲とオレンジジュースをお願いします」
「……かしこまりました」
「アイツ、無愛想だよな」
「お店ですから、余りそういうことを言わないようにしてください、花火」
「ちぇ、わーったよ」
普通に会話が聞こえながらも、キッチンへと戻っていき、ミリアスと客の雑談を聞く。
昔、蒼御とミリアス、ルシファーで良く此処に来ているのは見たことはあるが、幼い頃は諸々の事情故に蒼御とは接触もしたことが無い。
場面は移り、カウンター席前。
「蒼御ちゃん久しぶりね」
「ミリアスさん、お久しぶりです」
「誰だ?あんた」
「ミリアス・アールヴ、此処の店主だよ、よろしくね花火ちゃん」
「ちゃ…」
「動揺も隠せないのも当然です」
カウンター席で対面に珈琲とオレンジジュースを入れながら楽しそうに言葉を交える、ミリアスと二人。
くすくすと笑う蒼御とミリアス、動揺する花火を他所目に冷蔵庫に入っている、自己流のサンドイッチとペペロンチーノを皿に盛り付けトレイに乗せて、二人の座るカウンター席に運び。
「お待たせ致しました、ペペロンチーノと朝のサンドイッチセットです。
ペペロンチーノはお好みでブラックペッパーを……」
「なぁ、おい」
「……なんですか?」
「敬語じゃなくていいし、昨日、その……殴って悪かった」
驚いた。
まさか謝るような奴とは思ってなかった、そもそも謝られるということがあまり無かったがために何と返せばいいか分からずながらも口を開く。
「別に、お前が正しいと思ったから殴ったのならそれでいいだろうが、謝る必要性はない」
動揺しながらも、冷たく返してしまい。
後方よりミリアスから軽く頭を叩かれる。
「こら、お客さんなんだからもっと丁寧に……」
「いや、いいんですよ、ミリアスさん。
花火も珍しく、謝ったのですし、貴方もそれでいいですよね」
「……」
此方の方を見ながら、そう言う蒼御に軽く礼をして無言のまま、花火の方にも軽く一礼をしてカウンター席前の席に座り。
「珍しくってなんだよ」
「貴女、人に謝るなんて珍しいことじゃないですか、いつもなら私が正しい事をやったんだーとかって反抗するのに」
「別に……その、あいつの言おうとしたことは正しいだろ、仲間とか同級生がそう簡単に死んじまうのは良くねぇし」
「……そうですね」
カウンター席で話す、二人の声を聞きながらそんなことは無い、と心の奥底で否定をし。
また一つ、溜息をつきながら、包丁を爪で研いでいたバハムートを呼ぶ。
「バハムート」
「何だ」
「少し、色々と、振り返りたい」
「……良いだろう、オレはこれでもお前と契約した契約族故にな」
契約族や昨日手に取った武器のことを思い出しながら、静かに、その場にて目を瞑り。
これまでのことを小さき逢魔の竜と共に振り返りを始めていく。
「次回予告」
紅き暁の青年は、振り返る。
三種族、昨日の戦い。
櫃、自身の周りにいる人物。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第五.五話:日常・幕間《中編》
「振り返り、おさらい、というのも悪くは無いだろうよ」




