第五十二話:新東京奪還作戦会議【前編】
皆さん、お久しぶりです。
新人小説家のハルトです。
最近暑くなってきて、春も近づいてきました。
冬の面影もなく、皆さんも忙しくなってきたことでしょう。
私も今年はもっと小説更新を張り切りたいと思っております、どうかよろしくお願いいたします。
会議室には、様々なモニターや機器が所狭しと並んでいる。
幾人もの生徒がその手に何かしらの書類を抱え行き交う様もあってか、とても狭く見える。
そんな忙しない会議室の中心に、新東京の現在の状況を映した巨大なモニターと机を兼ねた装置がある。
新東京を目標に数週間前から自動的に移動、位置を変え続ける観測ドローンから数秒単位で送られてくる現在の状況と、今までのデータを兼ねた3Dグラフィックを構築するものらしい。
「昨晩、新東京の災獄の軍勢に動きがありました、モニターで表示します」
新東京の状況をモニタリングしていた生徒の一人が手早く手元のキーボードをタイピング。
赤い点で幾度も重なり中央モニターに表示される災獄の軍勢、大きな点は大型のを小さな点は小型の災獄を表示しているらしい。
そして、紫の点は
「昨晩、八転獄道が動き出し始めたと同時に、旧新東京スカイツリーに大きな熱源を感知」
「そしてスカイツリーにはワールドオーダーの第二、第三部隊長だった神威原兄妹と御珠縁が内部を警戒している上に、三日月姉妹まで捕らわれている」
「……つまり、人質ありきな上での圧倒的不利な総力戦になります」
淡々と告げるオペレーターの生徒。
三日月姉妹がどういう理由で捕らわれているかなんてのは明白だ。
……承器という人類が創り出した不可解な武器に変化できる人間。
ただの人質でなく、贄としての人質、月の機神に食らわせるのが目的だ。
あくまでもある程度の干渉をするにしか至らなかった機神が、其れを贄として地上への完全なる支配の根を下ろす。
神威原達はそれを知らずに、ただ自らの使命がそうであると確信して、そうしようとしている。
ならば
「神威原含めて、八転獄道は第一部隊が相手をするということで良いんだな」
「何を馬鹿な……! 」
「そうですよ! 第一部隊はたったの4人、対して神威原兄妹、御珠縁、八転獄道含めて11人、勝てるわけが……! 」
静寂、そう、勝てるわけが無い。
八転獄道には各々秘奥とも呼べる陣を持つ、それは俺自身もだが……京都での戦い以降、使用できていない。
ただ侵食が強まる腕が残るばかりだ、しかし。
「死にに行くわけじゃない、故に生きて帰って来られれば良いんだ──────」
「残念ながら、それは不可能だね」
この場にいる全員の脳に響く声、誰彼もがその声を聞き、ルシファーだけが聞き覚えのある声だと確信していた。
「こんにちは、少年……」
いつの間にか、三神の首に小さな少女が肩車されている。
螺旋を描く黒と白の双角を生やし、季節外れで年相応の白いワンピースを身に付けた少女。
そう、彼女こそが。
「八卿議会長 クルアーン=トワイライト……! 」
「そうとも、少年、私がクルアーンさ」
全員の思考が止まるとと共に響き渡る驚嘆の声、あのルシファーでさえ、その真の姿を見ること無く死んで行ったものかと思っていたはずだ。
されど、この姿を議会長という立ち位置に着いた時点で見せていたのであれば世界そのものが混乱していたか、何かの冗談だと思うだろう。
「……私、意相者なんだよね」
三神は耳元でそう囁かれ、全て理解する。
もう一人居るという母の言葉、準備……八卿議会長であるならばこそ、出来る準備があるのだろう。
それを察した時、少女はいつの間にやら三神の左手を小さな手で握っていた。
「じゃあ、少し状況がよくなるお話をしようか?」
未だ口を開けているものも少なからず居るのに関わらず話し始めるクルアーン、蒼実も花火も視祇の三人も開きっぱなしの口が塞がらなさそうだ。
「んしょ……届かないね、だっこしてくれるかい、三神くん」
背伸びして手を届かせようとするクルアーン。 それもそうだ、幼い少女の肢体でこの機器には届きようもない程に手足と背が、短すぎるから。
「ハイハ……」
「三神ィッ! 」
つい気が緩んでのことか、それとも唯一心許せる母を思い出したのか、適当に返事をしようとした所をルシファーの血相を変えた顔で止められる。
「もう少し、丁寧に…三神…た、頼むぞ! 」
「分かってる……と言うより、満更でもなさそうなのだが、八卿議会長のくせに」
「暁ィィィィッ!」
まるで悶え苦しむかのようにオーバーに言動に気をつけろと伝えてくるルシファーの姿こそ、シュール極まりないだろう。
「ふふふ、いいんだよ……ルシファー、親近感のある方のが接しやすいから」
「は…申し訳ありません、不肖な立ち振る舞いをして…」
「相変わらず硬いね」
車椅子姿の自分に八卿議会長とは言えども抱っこされてる姿は、なんだか父娘を見てるみたいだとも思われたのか、何だか周りの視線が生暖かく感じた。
「さて、状況だけれど……そう、私も前線に出ようと思うんだ、君たちは勝ち目がないと思っているだろうけれど、これで五分五分だろう? 」
「それともう一つ、時間がないから手短にね」
「月が、地上へ落下しようとして来ている、軌道が八転獄道の策略によって地球そのものにズれてしまった」
そう、それに関してはデータが既に取れている。
月が日にちを追う毎に、地上から観測できる面が段々と大きくなってきている事からこのままでは月が地球に落下する。
そして恐竜史に起こった隕石衝突を越えた、地球という惑星そのものの崩壊が起こるというのだ。
最後に残る者は、月の機神だけだと言う事はほぼ誰も知らずに。
「故に月を破壊、又は押し返す必要がある」
「そのためには三神くん、君の協力が必要だ」
手を繋ぐ少女の目に、彼の姿が映る。
水面に顔が映るかのように、ごく自然と。
「……バハムートの力が必要だな」
「そう、だからこそ適任は三神くん以外居ないわけだ」
眉をひそめ、苦い顔をする沖神。
そう、作戦指揮は彼の手に掛かっているからこそ立案にも参加し、誰一人として犠牲を出さずに生還する作戦を思いついた筈であった。
しかし、機神のことに関しては未だに解決出来ずにいた。
皆にどう伝えるかという苦悩もあっての事だ、故に"それ"を避けていた。
「三神が適任であるのは、確かだ」
「しかし…彼でなくとも…」
そう甘く、誰も犠牲にしないという夢を持つ男はそれを語ろうとした時、少女は冷たく突き放す。
「いいや、彼でないと不可能だ」
「そうか、ならば……その方法というのは? 」
一つ溜息をつき、クルアーンは指先一つで細かな機器の操作を行い、あるデータを表示する。
それが、人類最後の希望だと言うかのような顔付きで。
to be continued。
「次回予告」
突如として、現れた八卿議会長クルアーン=トワイライトの提示した月を破壊又は押し返す"方法"。
時は静かに迫り来て、戦いの始まりを告げんとする中、人は思案する。
何が正しく、何が間違いで、何が己らしい選択なのか。
そして、答えは。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第五十三話:新東京奪還作戦会議【後編】
「ああ、きっとそれが私らしい選択なんだ、って」




