第四十九話:機神・介入
どうも皆さん、こんばんは。
新人小説家になりたいハルトです。
今年度中には終わりそうな「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」。
お楽しみいただけているでしょうか。
同じく今年度内には新作タイトルの発表も行えそうなのです、ちょっとだけ期待していただけると嬉しい限りです。
では、第四十九話どうぞ。
作戦用通信室内は、狂騒に包まれていた。
第一部隊所属として任務に当たっていた花火と視祇が行方不明……否。
誘拐と言える形で敵側、災獄に連れて行かれた事で忙しなく、各方の避難所や北海道内各地での目撃情報を掻き集めている。
「つまり花火達が災獄によって誘拐された、と? 」
「そういう事になる、すまない、蒼実隊長、彼女らの戦力だけで事足りる任務だと思っていたのだが……」
「いえ、構いません、これは私もついて行くべき事だっただけに過ぎず、それを他責にする事などしませんから」
今回、自分たちに任されたのは両名の救出任務、居場所は北への災獄の大移動を目撃したという情報から計算、現在は荒地と化した旧宗谷岬だと判明した。
そして、私達はすぐさま装甲車へと搭乗、二人で任務に赴く事になったのだった────。
*
「ここ、は……」
「……花火さん、久しぶり? 」
十字のモニュメントに磔にされている花火、同じく磔の視祇。
先に目覚めたのは花火の方だ、見渡す限り正面は海、災獄の侵攻と同時に紅と成った地平と違い、この揺蕩うままの海は青色のままだ。
海を見る彼女に話しかける影があった。
人という枠組みの形でいえば、そうと言えるのだが左眼から下は薔薇の茨にまみれた植物が、全身からは夥しい数の花が群生している。
彼女の名前は。
「……ルシア」
「名前を呼んでくれたのは、一年ぶりね」
一年前の戦いで裏切りを果たし、天界を落とすという暴挙に出た上、東京を陥落させた者たちの一人。
神威原兄妹を筆頭に御珠、行方不明の三日月姉妹と続き、今現在装甲車に乗り此処へと向かう三神 暁。
彼らに連なる中にいた、ルシア・エスペランタ・A・アテルマ。
紅の地平と呼ばれる人類の生存圏外から逃げてきたハーフ、花火とは三神が来る前から仲良くしていた少女。
「何で、テメェが此処に……」
「王からの命令よ、あなた達を殺せってお達しが出たの」
「……そんな化け物みてぇな姿にされて、満足かよ」
そんな言葉を無様な姿で吐き付ける花火の腹へ地から巨大なツタが、鞭として振るわれる。
キッと睨む眼は、酷く恐ろしくおぞましく、憎悪……嫌悪。
そして、その中に"読み取れる"嫉妬。
花火が誰にも話さなかった人外化。
「花火さん、彼女は私たちを恨んでるらしいですよ」
花火の内側で話す白い風、吹き荒れると言うより春風のように優しく暖かい彼女。
北風 南は未だに彼女の中に居る。
彼女に起こった人外化は一心同体。
本来、人という存在にあるべきは魂の数は一つのみに関わらず花火は京都での戦い以降、頭の奥から声が聞こえることがあったと。
その時点から始まっていた、人外化の証拠である。
「…お゛げェっ…!?」
頭に響く声に理解を示しながら、其の鞭の一撃に、体内に食していたものと血液を同時に吐き垂らす、それを汚らわしく見つめるルシア。
傍から見て、拷問でしかないが彼女にとってそれは理解されるべき行動に過ぎない。
「誰が化け物ですって!? 誰が! 」
「お前は、オレに嫉妬してる……のか? 」
「ええ、そうですとも、キラキラ輝いて人殺しもやった癖に、学園内の生徒にだって暴行を繰り返していた癖に、不良とかいうド底辺が」
「どうしてキラキラ笑ってんのか分からねゑんですよ! 」
激情する彼女を、ただひたすら哀れと見る花火、対比と言えるだろう。
元より災獄という存在が来てもなお、スターとして笑顔を振りまき、世間からは引っ張りだこにされてきた彼女。
災獄という存在居らずとも、不良として笑顔を見せず、世間からは排斥された彼女。
それでも、彼女/彼女の方が幸せそうに見えたのもまた同じであると。
「化け物ですって? 人殺しの癖に、人を殺したあなたの方がよっぽど化け──────! 」
「お前だって殺した……天界で暮らしてたやつらを、オレたちと同じで生きてたのに、お前も殺したんだよ! 」
喉に溜まった血を吐きながら叫ぶ姿は、余りにも眩しすぎる。
彼女は心の中の妬みをそれで抑え付けながら、木根の鞭にて腹を割いてしまおうとした時だった。
その背後から響く斬撃の音。
遠方を焼き尽くす竜の破壊光、荒れた暖かな風に流れていく黄昏の粒子。
総ての真実を知った三神が戦場を駆け抜け来たり、鞭を刃で切断する。
「三神ィィィィッ! 」
花火を狙い放たれる複数の木の根を、バッサバッサと切り抜け、彼女が両手と思しきもので握りしめている双鎌と打ち合ってみせた。
「ルシア・エスペランタ!」
「あなたまで彼女の方に着くの? あなたまで私を裏切るの? そんなの許されない、私達は仲間だったはずよ、そんな、そんなのは……」
「浮気と変わらないじゃないッッ!!!!」
二度目の激情、彼女の理性は既に破綻している。
それを遠方より……否、既にこの惑星に最接近している存在が、興味深しげに。
人の枠組を越えているであろう技術によって造られた眼をキリキリと音を立てて動かす機神は、手を下す。
「が…あがッゲ…!? あたま、が……!??!」
打ち合っていた双鎌を落とし悶え始めるルシア。
突如として脳に流し込まれる無限の情報、遥か彼方より此方とは違う別の世界で起きた出来事。
宙に満ち満ちる総ての生命体の遺伝子情報から選りすぐり殺戮衝動の高いものを流し込まれていく。
それは悪意、ではなく。
ただ興味で行われる容赦の無い、それはルシアの肉体を崩壊させながら、契約していたはずの冥王星の罪 グルゼ・バグスすらも取り込みつくし。
その姿を果てなき醜悪な蝿の姿へと変えたのだ。
「……花火! 動けるのならそこの磔の視祇も連れて走れ! 近くに装甲車にお前の承器も置いてある! 」
「わ、わかった!」
「……逢魔竜!」
雲の線を描き、飛翔して来る竜の姿は以前とは打って代わり、まさに黒き竜ではない。
翼が巨大な五本の剣にて構成される、黒き体躯に白の線が目立つ存在と進化っていた。
「焼き尽くせ!」
契約者へ視線を向け、命令を受け取れば小さく頷き。
目の前の怪物へと放たれる黒き極光、奔流で焼き尽くされるはずの蟲は、すぐさま其の肉体を微粒子レベルのものへと変化させ。
契約者の方から食い荒らしてしまおうと襲いかかる、そんな劣勢に立たされながらも切り開いていく。
五月雨の如く、刃を振るう其の姿は一年前の彼と何ら変わりはない。
微粒子サイズの生物群体だろうとなんだろうと、その瞳で一挙手一投足全てを捉えている。
群体を個として捉えるのが、彼の強さだ。
「……厄介な!」
彼は理解している、これは焼き尽くそうとすればするほど、これら全てにエネルギーを与えるに等しい行為だと言うこと。
ならば普段使用する粒子及び逢魔竜に宿っている力を用いるよりも、己の肉体による身体能力のみで対処した方が良い。
ただ相手は思考する怪物へと変貌した以上、この速度に着いてこられる"カタチ"に変化するのも時間の問題だ。
だからこそ、今ここで──────!
To Be Continued。
「次回予告」
覚醒する鬼神、醜悪な蝿の群体。
今、因縁の一つに決着を。
戦いは更に加速する。
最後の戦いへの扉は近く、平和まではいまだ遠く。
ああ、空よ。
彼女/彼らに、せめてもの安らぎを。
彼/彼女らの間に、せめてもの幸せを。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第五十話:因縁/第五十一話:誓
「結末は近い、終わりは近い、それがハッピーエンドかバッドエンドかは置いておいてね」




