第四十七話:総意と相違
どうも、皆さんこんばんは、そしてメリークリスマス。
新人小説家のハルトです、皆さんクリスマスはいかがお過ごしでしたか?
ケーキやれ、チキンやれ食べた人も多いでしょう。
私もまぁ、色々ありましたが何とか生きております!
では第四十七話、どうぞ!
「意相者……」
「そうとも、本来私達は人に見えない上に感じとれない、なんなら物理的にそこにいるということは無い」
「誰かの殻を借りなければ、私たちは地上に個人として切り取って現出することも叶わない……所謂、ヤドカリと言うやつだね」
「先も言ったように、地球の意思を君たちと同じ枠組みをとって代弁しているからね」
地球の意思、彼又は彼女が何を考えているかなど我々人類には測りかねない。
ただ、逆に今この場で私たちが思考していることは、きっと読み取られているのだろう。
「うん、君たちの思う通りだとも、私たちは君たちがふと意識的に考える出来事を読み取れたりもする」
やはり、だ。
何も喋らずとも、私たちの思考は全て読み取られているのだ。
ミリアスはいつの間にやら、右手に紅茶の入ったティーカップを持っている。
紅茶を出した覚えは無い、その上彼女を視覚で捉えていたはずなのに、どう紅茶を注ぎカップなんて何処から持ってきたのかすらも分からなかったし、そういう事象は見えなかった。
「ああ、これかい?」
「私はそうだね、端的に分かり易く説明するなら地球の歴史に確認されているものなら、何でも作れちゃうし、量産もできちゃうんだ」
……はっきりと言おう、この人を敵に回しては行けない、絶対に。
量産、つまるところ、もし際限が無ければ、どんな武器兵器すら量産することが出来る。
「そうだね、というより個として現出してしまったから、そうして確立されてしまったんだ」
「もう一人、私と同じ意相者が居るんだけど……その子は今別の所にいてね、少し忙しいんだ」
「それであなたは、何故ここに? 」
ふむ、と顎に手を当てて思案する。
見るからして、話していいのか否かと伺っているように見えなくもない。
そして、執務室の扉に目を向けたミリアス。
「ガッ!? 」
と、変わった声が聞こえ、そそくさと様子を見にアーサーが扉を開けば。
「アーサー……? 」
「三神 暁!? 」
驚愕、包帯まみれの患者衣の彼が物凄い格好で倒れているではないか。
まるで小学生が、前転に失敗したような姿で居る彼はゆっくりと近くの壁伝いに立ち上がり、不服そうな顔で、口を絵本に登場するうさぎの女の子みたいにしていた。
「それで、なんで俺を呼び出した、母……ミリアス・アールヴ」
「おや、昔みたいに母さんと呼んでくれても……」
「答えろ」
おおよそ親子の会話、と言えば在り来りで何処にでもあるような普通のものと考えて差し支えないハズなのだが。
何より、これから話すことは地球の……否。
この宇宙そのものの存亡に繋がる可能性が高いもの……。
だと言うのに、彼らはちょっと仲の悪い親子のような話をしている。
「まぁいっか、君を呼び出した理由は一つだけだとも暁、月に居るアレのことを細かく説明しなければだからね」
「待て、アレの話題自体が呪詛になりうる可能性があるというのに、何故話した」
「君がいるとそうならないらしい、君付近の生命体全てがアレの眷属として処理されるらしいよ、その腕のおかげだろうね」
つまるところ、月に居るアレは話題に出してしまうのすら不味い存在らしい。
その話題すら呪詛となって降りかかる辺り、何かしらの生命体としての枠組みに収まる存在では無いのだろう。
「もうそろそろ話していいよ、そんなに黙りしなくとも」
「ああ、すまない、私も考え事をしていたものでね、三神君、君も座るといい」
「……いや、いい」
アーサーと対面に座るのが嫌なのだろうか、目を逸らす形で沖神の配慮を断る三神。
だが、ミリアスがそれに対して口を開いた。
「座りなさい暁、学園長の配慮を無下にするの? 」
恐らく、その声色、三神 暁という存在が今まで長く聞いてきた言葉。
彼は、それに反応しないほどに冷たくない。
一つ呆れた……と言うよりかは納得したような溜息を着き、席に着く。
「で? 月に居る奴のことを話すんだろ」
「そうだね、先ず私が知っている情報……名前と姿形だけ、その詳細は追々調べてみるよ」
月に居るソレは、元より一体の存在であることをミリアスは告げる。
それをもう一人の意相者と共に、名前を付ける事で存在を弱体化。
二体の存在へと分裂、分解させることに成功したと言う。
その名は。
「神極・無源黒機神 カグヤ・アリアンロッド」
「神曲・梦源白機神 ミトラ・メスラムタエア」
機神……まさに、それはその名が冠している通り機械の神なのだが、ここからが問題らしい。
「本来、神というのはね、この世界にあってはならない存在なんだ、あくまでも何かしらの形で歴史に信仰されていたという記述が残るだけの存在であらねばならない」
「というのが決まりなんだけれど……あれは恐らく月という星が意識して呼び出した存在ではなく、要は─────」
「外宇宙から飛来した、ナニカ、という訳だ」
「正解! 流石は私の息子! 」
よぉーしよしよしよし、とまるで犬の如く撫で回されている三神の顔は物凄く、酷く不機嫌な犬のような顔つきだった。
「まさにそう、彼が飛来したことは私達……いや、私の本体ですら観測出来なかったし、予測できなかった自体だ」
撫でるのを止め、静かに己の前の冷めた紅茶に口をつけてカップを置き一呼吸。
ミリアスは、観測した直後のことを話しだす。
「観測したのは今から一年と半年前、それまでは私本体の周りをいつも通り動いていた月の軌道が少しおかしくてね」
「再度観測した時、月に一体の機械が立っていた、全長不明、ただ一つ言えるのは地球に記録、信仰されてきた神々など比では無いと言えること」
神々など比ではない、それはそのままの意味で捉えるとしたのなら今までの歴史信仰を否定する事となる。
神が宇宙を創ったという神話があるとするならば、それすら凌駕する存在にカウンターなどというものが本当に存在するのだろうか。
話し方から推測するならば観測時間よりも前に、其の機械神は既に月を手中に収めていたのかもしれない。
「今の今まで観測できなかったのは、今まで宙が誕生してからの技術の中にそれに相当する技術や機能が存在しなかったから」
「違和感に気づけただけでも幸運だ、観測するのが遅れていたら、既に月は地球に隣接していたかもしれないからね」
「待って、今隣接と……? 」
まずっ、と言った感じで口を塞ぐミリアスだが話してしまった以上、もう遅いかと言った様なしかめっ面をしている。
隣接……その言葉の真意は、隣で黙りしていた自分ですら理解出来た。
「月が、近づいてきている? 」
「正確には二体に分離させた機神が、月の乗り物として利用し軌道を操っている」
「恐らく、彼らの目的はこの惑星そのもの……この宙の中で最後の惑星となった此処を手中に収めることだろう」
「待て、それは……どういう──────」
帰ってきた答えに更に追求するため問いを投げかけた瞬間、地平が脈動する。
畝り波のように揺れ始めた地平、その中心は元東京方面。
あらかた月にいる機神が眷属と化させた地球の守護者たる災獄達を動かし、何かを始めたのだろう。
「まずいね……、悪いけど沖神君、息子とそこの天止の子も頼んだよ」
「それは良いのだが、何処へ往くんだね? 」
「東京の様子を見てくる、もし私が戻らなかったら其の時は、ね? 」
外套のフードの隙間から浮かべる半ば自信の無い微笑みに対して、沖神は言葉を放つことは無く、頷きのみで了承。
そして、恐らくこれが彼女と最初で最後の邂逅となるはずだと確信する。
「待て、まさか東京の方に────!」
言葉を喉の奥からひり出し、悲しげな顔をして私の後ろ姿を見る息子が居た。
もし、これが最後ならば抱きしめてやらねばならない、だが生物種における個人として、親子として愛してやれたかは定かではないから。
何せ、母なる星などとフィクションで言われても私個人は人という霊長の個人を愛したことは無いのだから。
だから、せめてめいっぱいに今。
「……三神、後の事は頼んだよ」
抱きしめるのだ、力強く。
私自身も息苦しくなる、かぼそい声で私の息子は。
「……分かった、後のことは任せろ、"母さん"」
小さく、私のことをそう呼んだ。
波のように畝ねる地平、この建物が崩れそうになることは無いにせよ。
放っておくのは不味いだろうと判断し、意相者と名乗り、時に母として、セカイを観測する者として。
紅色の光を放ちながら、いつの間にか空の彼方へと消えたのだった。
to be continued。
「次回予告」
ある時、彼女は言った。
「生きたいと思ったのなら、生きなさい」と。
誰かにとってそれは、身勝手極まりない言葉であるものだが。
自分にとってそれは、とても生きやすく心地の好い言葉であり、何よりも最も自分を愛していたであろうものの言葉。
そんな言葉を胸に、自分は────────。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第四十八話:母の戦い、子の戦い。
「ごめん、よ……暁」




