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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第四十六話:語られる真実、宙より迫るもの。

みなさんこんばんは、新人小説家のハルトです。

……ええとですね、皆さんにお伝えしなければならないことがありまして。

少しばかり、精神面で体調?を崩しておりまして、更新ペースが多々崩れる事があります。

それをご了承いただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。


では、第四十六話、どぞどぞ。

「私たちが、どういう存在であるか? 」


「そうだ、一年前、お前とルシファー以外を残して全滅した天止(てんし)はどういう存在か、解るか?」


「災獄らと共に、この世界に創られた───」


「違う」


彼は即座に否定した。

それは違う、断じてというような顔付きで彼は私の話そうとしていたことを否定した。


「もう一つ、この宇宙には天体が残っている、膨大な熱にして原初の星」


「太陽か……! 」


「そうだとも学園長、つまり彼女らは太陽の意思が生み出した、月に居る怪物へのカウンターだ」


彼は語った、私達は太陽と呼ばれる極熱の星から生まれた生き物だと、故に今までの人類史に存在しえなかった奇跡と呼ばれる法外な力すら持っていること。


そして。


「神はその事について知っていた、そして娘たるアーサー、アンタには幸せになって欲しいとその事を伝えなかったらしい」


「なぜ、今それを? 」


「……今、伝えなければならないと思った」


彼は私が黙ってしまった後に静かに話を続け、私は其れに対し泣かなかったし、怒りもしなかった。


神たる父は、私に天止(てんし)として人を導く役目の事ばかりを教えてきたからこそ、今になって胸からなにか込み上げてきそうなものを。

ただ面会室の時計の針だけが抑揚をつけながらカチ、カチと響いていた。


「そして、もう一つ伝えるべきことがある……これは自分が接触したヤツから聞いた情報に過ぎないし、そも彼女がなんであるのか自分には分からない」


「この世に反せし願望(かいり)を持つものたちならば、月の怪物を打ち崩す剣となり盾となる」


「そして……(ハコ)は、選定する為のシステムだ」


契約者と契約族、元よりそれは乖離を持つものを選定する為のシステムそのものであった。

月に座する怪物を討ち果たすために仕組まれた舞台装置と言うべきものらしい。


乖離の資格を持たぬものは敢えて(ハコ)のシステムが、弱く記録された生物などを契約させており、其れを創った人物こそこれから語られる存在だ。


「俺の知ることは、この程度だ」


「……何故、一年前、私たちと来てくれなかったのです? 」


「お前たちの元へ行けば、俺は記憶を取り戻さなかっただろうし、何よりも──── 」


数分の沈黙、何よりも、何なのだろうか。

彼は目を逸らしたまま其れ以降の言葉は言わず、その合間で沖神が問いかけた。


「君の言う彼女、とは? 」


「執務室に戻れば分かる、彼女は待っているらしい」


「そうか……君の言うことが正しいのであれば、君の言う彼女という人物からも話を聞いてみる必要があるだろう」


「……アーサー、もう聞くことは無いかね」


私は、先程の言葉の真意を確かめてみようと思った。

彼の言った、何よりもというその先を、今聞いておかねばきっと、聞く機会を失ってしまいそうであったから。


「何よりも、ってどういう意味ですか」


「また、それか」


「答えてッ! 今、貴方が答えなければ、これを彼女たちに伝えることは出来ない! 」


何故なのか分からなかった。

何故この時、私は心の底から怒っていたのだろうか。

人の感情は私たち天止(てんし)の様に、抑制できないというのだから納得ではある。

それでも天止(てんし)たる私が怒ったのは、なぜなのだろう、抑制しきれた言葉を抑制しなかったのは。


「……何よりも、お前たちなら俺を止められると思ったから、俺を助けてくれるだろう、と思った」


「信頼、と言うやつなのかな、これは」


にへら笑いを浮かべる彼の顔、初めて笑っている姿を見た。

今の今まで堅物のような顔をして、特段なにもかもに興味はありませんと言い張るような顔をしていたものだから、驚いた。


「それ、彼女たちに伝えても? 」


「そのために聞いたんだろ、なら伝えるといい」


揚げ足取りみたいなことを言われた私は、つい怒りそうになったが感情を抑制。

学園長と共に足早に面会室を去った。


後目に見えた車椅子に押されていく彼の背は、少しばかり寂しそうに見えていた。


「彼の言っていることは本当だとお思いですか、学園長」


「嗚呼、私は彼を信じるよ、君はどうする、アーサー」


「私も信じます、彼の目はどれだけ光が灯っていなかったとしても、嘘を言わぬ人らしさ溢れる心の籠った眼ですから」


「そうか、私は執務室で待つという彼女と話してみよう」


「どんな人物かは分からない、だが三神君がその人から知り得た情報を私達に話すだけの信頼は、置かれているということだ」


執務室にて、待つ。

誰が待っているのだろう、少しの思案の後。

有り得るかもしれない可能性という名の結果。

その彼女と、学園長が護衛もつけず単独で接触した時、何が起こるのか。


もしも、その"彼女"が敵であり、学園長を殺す為に其の情報を敢えて彼、三神(みかみ)に渡していたとしたら……。


「学園長、私も共に行っても良いでしょうか」


「ああ、問題ないが、一応聞かせてもらおうか、何故だ? アーサー」


「……一抹の不安と言うのに過ぎないのをお許しください」


アーサーの金色の眼を見て、沖神は瞳の奥に秘めた考えを容認し、アーサーと共に執務室へと向かう。

沖神を先頭に執務室の扉へ手をかけた瞬間、聞こえる独り言の様な声。


「分かっているけれど、君の意思が介入する隙は無い、私と彼女が何とか逃れた生き残りなのだから、当然だろうに─────」


「……おや、早い到着だね、先にお邪魔させてもらっているよ、アーサーと沖神さん」


扉を開けて、そこに待っていた者の姿は彼及び彼女にとって面識のない存在だ。

継ぎ接ぎにぬわれた外套の下にコートを羽織り、ダボッとしたズボンを身につけた金色の髪に翡翠の瞳を持つ三神の言っていた彼女。


「座って話そうか」


にこり、と微笑む彼女の表情は、底の見えない沼を見ているような気分になった。

相手に瞳の奥にある意思を悟らせないような、そんな顔。


無言で執務室のソファに対面で座る彼女と沖神、アーサー。

執務室内はとてもじゃないが、仲良くお茶でもしようという雰囲気ではない。


「貴女の、名前は? 」


アーサーが嫌疑心を込めた眼を向けながら問いかける。

そして彼女は一つ溜息に近い息を吐き、やれやれと言った顔で口を開く。


「ミリアス・アールヴ、三神の……まぁ、母親と言ったところかな、母親と言うより里親かもしれないけれどね」


「母親……だが、彼の親は────────」


そう沖神が口にしようとした途端、ミリアスは己の唇に人差し指を当てジェスチャーする。

まるで口にする其れの名を出すな、と言うように。


「そうだね、彼の親は彼処(つき)にいる、私は生みの親ではないし、人間で言う血は繋がりなどないけれど、彼の事は息子と思っているよ」


「まぁ、当の本人は、私が死んだと思っているみたい……というより地上の体は実際に死んだけれど、顔を見せても信じてはくれなかったけどね」


地上の体、人類が普段生活する中で発せられることもない単語から、やはり彼女は人間という括りで絞れるような存在では無いことは確実。

ならば何者なのかという疑問は、ミリアス自身が答えてくれた。


「私は、地球の意思の代弁者、そして災獄と同質(おなじ)にして相違(そうい)する存在、……そうだなぁ、この役割に名前を付けるとしたら」


意相者(ディファレシャス)、意志の代弁、意志を相手取る者……なんちゃって」


to be continued。

「次回予告」


今、全ての真実が解き放たれた。

月に座する怪物、災いという名を与えられた世界の敵にさせられたもの、そして其の怪物から生まれし者。


そして学園長、沖神(おきがみ) 胡桃(クルミ)天止(てんし)アーサー・E(エクス)・マキナの前に現れた三神の「母」を名乗る死んだはずの女ミリアス・アールヴ。


彼女の持ち込んだ「情報」とは一体……?


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第四十七話:総意と相違


「……三神、あとの事は頼んだよ」

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