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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第四十五話:黒鋼、月、黄昏

ひと月ぶりの更新となります、新人小説家のハルトです。

どんどん終盤へ近づく「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」大変お待たせして申し訳ありません。


少しばかり諸事情でストックはできているものの、更新が遅れていました。

前置き…というのもなんですが、終盤は自信を持てます、はい。

第四十五話、どうぞ!

「……彼の経過は? 」


「順調です、局部の損傷"は"激しくなく、軽い治療で済みました」


沖神(おきがみ)と会話を交える天止(てんし)アーサーは、元学園長であったルシファーのみの秘書ではない。

今現在、世界に唯一存在する学園の長たる沖神(おきがみ)の秘書も兼任している。


「ですが、あの鎧には呪詛がかけられて居たようで、其の呪詛は私の翼にかけられたもの……一年前の京都に現れた八転獄道(やてんごくどう)の用いていたものと同一です」


「……彼が契約族の力を発動する度に、身体の何処かに対象を選ばず傷をつけるものでした」


「それ故に彼の身体の傷は酷く、外の空気に触れるだけで身体が過敏に反応してしまい」


「消毒しようにもそれにすら反応を示し、全身の傷の治療は困難を極めています」


淡々と二人は廊下を早足で進みながら話を続ける。

彼の身につけていた黒鋼(くろがね)の鎧には、八転獄道(やてんごくどう)尼剌部陀(にらぶだ)の使用する呪詛が刻まれており、彼の全身は平面の肌が見えない程に傷にまみれていた。


奇跡的に顔と異形の左腕のみは、呪詛の影響を受けなかったようだ。


「それで、彼との面会は可能か?」


「恐らく、この時間帯ならば彼も起きていますし、彼女たち第一部隊も任務のため外に出ています、そして本日から花火さんが復帰しました」


「報告ご苦労……ところでアーサー、君も来るかね」


本来、面会は学園長のみで行う予定であったものを当時の顔見知りがいた方が気も楽だろうと考えてのことだ。

学園の地下留置所は不便は無く、拳銃を支給武装された生徒が日替わりで監視している。


物も言えば、危険なものでない限り申請をすれば給貸、私物であれば譲渡となる。

災獄が襲来する以前の世界とシステム自体は余り変わらないと思われる。


「分かりました、行きます、彼が返答してくれるかは私も分かりませんが」


アーサーはこくりと言葉に合わせて頷き、沖神と共に地下へとエレベーターで降りていく。

地下、と言っても二から三分程度、エレベーターに乗っているだけで済む場所だ。


「監視ご苦労、彼と面会したく通して貰えるか」


ハキハキと喋る生徒もいれば、気だるげにお疲れ様ですなんて言う子もいる。

その点だけは、どれだけ力を身につけていても子供なのだ。


直ぐさま、私達は面会室へと案内され、席に座らされる。

制限時間などはない、被疑者が暴力や制限されたことに違反さえしなければ話そうと思えば永遠と話していられる。


「どうも知らない人……と久しぶりだな、アーサー」


数分後、車椅子に乗って押されてくる三神 暁、一年前の裏切り者の一人。

今、監視している生徒の中にも親や友人を彼が裏切ったせいで失ったという人もいるだろう。


患者衣の隙間、包帯に包まれながらも痩せ細ったと分かる身体が見え、異形の左腕は更に変貌し目に見えて左肩まで刺々しくなっている。


「君が三神君か、初めまして、此処の学園長を務めさせていただいている沖神だ、宜しく頼む」


「……三神 暁だ」


彼は自己紹介に返答したあたり、理性はあるし答える気も一応あるのだろう。

何故、あんな行動に出たのかはこれから問わねばならない。


「さて、早速だが、君はこの一年、何処に居て何をしていたのか聞かせてくれ」


「……どうせ、答えなきゃ尋問、拷問なのだろ、知ってるよ」


光一つも宿さない虚ろな目で、彼は答えた。

まるで、お前らのやり口は知っているなんて言うドラマの中の登場人物が見せる様な憎悪に近い眼。


「……聞かせてくれないか、頼む、三神君」


「そんなに面白くもない話を聞きたいのなら、教えてやる」


「別に面白い話を求めてはないんだがね、君がどうしていたのか知らなければ、彼女たちも安心しないだろう」


この一年の中で、彼は神威原兄妹と其の同胞、そして遂に世界へ侵攻してきた災獄たちと行動を共にしていたこと。


その中で、生き残った人達を神威原などに勘づかれぬ様に此処、北海道へ密航させていたこと。


そうする内に裏切り者が一年前まで災獄侵攻が激しかった北海道という地獄へ送ろうとする、という根も葉もない噂に流された生き残りの人々……否。


彼彼女らからすれば、裏切り者に変わりない。

災獄らと表では協力するつもりで侵攻を行った際に三神を数ヶ月に渡って監禁、尋問していたこと、そして。


「記憶を取り戻したのか、君は」


「……嗚呼、俺がどういう存在で、そこの伝承器に閉じこもってるバハムートがホントは何者なのか、とかさ」


少しの沈黙の後、左腕の包帯を解き、異形の腕を見せながら三神は語り出した。

この世界の"本当の"真実と、彼の本当の正体を。


「"逆"、だったんだよ」


「逆、とは? 」


アーサーが問いかけた。

逆……学園長も同じく沈黙を貫き、其の意味に気づくまで数分、三神も沈黙。

私だけが気付けなかった其れ、学園長は独自の考えから答えを導き出した。


「……君は月から来た運命を変えるもの、ではなく、災獄こそ地球の運命を変えるものであった、と? 」


「アンタ、頭の巡り方がいいんだな、そうだ、正解だよ」


「俺は月から来た災獄に近い存在、ではなく、俺こそが地球という星を喰らわんとする怪物の端末」


「そして俺がこの世界に来た時点で、来るべき時が近づいている証拠でもある」


嘘だ、とアーサーは言いたかったのだろう。

ごく僅かの時間を共に生きてきた仲間を否定したくは無かったのだろう、敵として認めたくは無い。


ただ、それが表情に出て涙の粒を目に溜めて、手に持っていた尋問内容のメモを落とす程だ。

そんな彼女の顔を見つつ、三神は話を続ける。


「災獄という存在自体は、そもそも人類の敵では無い、人類という存在に対する敵になったのは出現した直後に当たる」


「何故か、と問われれば、俺を産まれ落とした月に居る怪物の起こしたことに他ならない」


「月に住まう怪物(さつりくしゃ)、其奴は他の惑星から贈られた人類の守護者たる罪を、地球の意思を代弁する災獄ら総てに介入し簒奪した」


三神の声は、語るうちに段々と震えて行くのが分かった。

恐らく、これを伝えなければと本心で思っていながら彼は恐ろしかったのだろう。

只人として、どう見られるかというのが。


「そして、今でも災獄は其奴の眷属として用いられ、本来の主である地球の意思すら介入できない状態にある、人類の守護者であった罪も同じ」


「他の惑星の意思の介入を許さず、総てが月の中に居る怪物に乗っ取られている」


つまり、神威原兄妹とその同胞の言っていたことは真実ではなかった。

災獄と罪は、他の惑星と地球から送られた人類側の守護者であり初出現時に月にいるナニカに乗っ取られたということ。


「何故、そう言える? 」


「記憶を取り戻して以降、他の罪の視点が眠る度に夢として見える、月が出る夜に外を見ると……」


「見えるんだよ」


その異形の腕で、空を指さした。

正確には、宙を。


「月にいる俺の生みの親が、こっちを見ているという視点がな」


「……親、だと? 」


「待って、三神 暁……今、なんと? 」


「先も言った、アレは俺の親だ、災獄を眷属に近い状態にした後、人の形を理解、解析し俺を其の肉体から斥候もとい端末として生み出し、地球へ放った」


そう、彼が淡々と語る内に過ぎ去った言葉の中にあった。

生まれ落としたという言葉、それが意味するところは、月に居る怪物は彼にとっての親だと、血の繋がった母親及び父親だと言う。


静かに語られていく真実。

されど、彼はまだ語り終えぬというように口を開く。


「……まだ、話は続く、いいな? 」


to be continued。

「次回予告」


残酷な真実は語られていく。

月に座する怪物がなんなのか、まだ鮮明にはなりはしない。


まだ、まだ、まだ、まだまだまだまだ。

足りはしない、戦いへの備えも完全なる真実も。


立ち向かえ、少年少女たち。

例えその真実が、どれだけ君たちを地に伏せようとも。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第四十六話:語られる真実、(そら)より迫るもの。


「……櫃は、選定するシステムだ」

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