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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第四十四話:激突・黒い黄昏 対 蒼き雪花

10日ほどぶりの更新となります、新人小説家のハルトです。

最近なんだか頭も体も回らなくて、ほんとすいません、趣味としてではなくもっと頑張りたいですね。


では、第四十四話、どうぞ。


「……三神(みかみ)、戻ってきて!」


鍔迫り合えども私の言葉は、彼に届かない。

黒鋼の鎧が理性をシャットアウトしているのなら、其れを引き剥がさねば此の戦いは終わらないはず。


彼を取り戻すことは出来ない、その上私の命さえ保証されるか分からない。

のであれば、今此処で彼を倒してでも引き剥がさねばならない。


「……逢魔竜(バハムート)


彼が発した言葉に反応した時点で遅かった。

遥か彼方、空と宙を繋ぐ境界から放たれる総てを灰燼へ回帰させんとする無比なる一撃。


黄昏色の粒子が、私達の周囲を漂っていた時点で警戒すべきだったはずの事。

自分自身すら巻き込んで彼は、私だけを倒す為に……否、学園ごと消し飛ばすつもりだ。


近頃判明した契約者の人外化と三度による契約族との契約断絶によって、私は契約族と誓約すら立てられぬ身体に変わっていた。


────今の私にこれを防ぐ手立ては存在しない。


そんな私の心中での呟きを他所に、理性の消えたと思しき刃を止めた目の前の彼は口を開いた。


「……サヨナラだ、凍花(とうか)


私は、その言葉を確かにこの耳で聞いた。

何を思ったのかは自分自身でさえも覚えていない、がそれでも、そんな理不尽な言葉は。


「……聞き飽きたの」


構えを取る。

左手に鞘を握りしめ、右手に握っていた太刀を納刀、その場に左膝を着く。


最も彼女が得意とした、抜刀の構え。


相手に接近する型の物も存在しているが、彼女はその場から動かず、まるで何かが来るのを待つかのような形を選んだ。


何故だ、此処で俺を倒してしまえば、君は英雄になれるはずなのに、と。

俺はそんな未練じみた思いを目の前の彼女に向けていた。


何か、最後に一声。

独白じみた声を掛ける事すら許さず、天からの破壊光が彼女と学園を包み込んでいった。


それを見た俺は、その場から立ち去ろうとした直後。


「────抜刀」


其の破壊光を、粒子の動きそのものを、凍結という形で停止。

空と宙の境界に飛翔した気高き逢魔の竜の顎に傷を付け、地上へ墜とさせたのだ。


学園すらも表面上が焼かれた程度の傷で済ませ、数分後に自分達からは遠き場所でミサイルでも降ってきたかの様な衝撃音が轟いた。


「──────剥離覚醒(はくりかくせい)


万転衣開(まんてんいかい)誓剣(せいけん):瀬織津姫(セオリツヒメ)


そして凍結した破壊光を砕いて現れた彼女の見姿に、自分は見惚れてしまった。


彼女の周囲の熱が消え、この最北の地と合一する様に冷たい風が周囲を吹き抜け。

砕けた破壊光が、曇空であった空から差した太陽の光を反射し尚の事。


彼女が身に付けていた衣服たる制服の上に、白銀の万転薄衣(ドレス)が纏われ、まるで冬に現れた妖精の様にも見える。


一年前の戦いの中で自分たちは乖離と呼ばれる異能に目覚めた。


その対象を個人という限定的な物から周囲に派生させる剥離と呼ばれるものへと、彼女は戦いの中で進化させたのだ。


だが、彼女の剥離は外へ盛れ出さず、空間を塗り替えることもしなかった。

何故だ、解らない、何故その我儘(エゴ)を外へと振りまかないのだ。


「……何故だ」


「何故、君は此処まで緊迫した世界でありながらその願い(エゴ)を振りまかずにいられる」


彼女は白くなった溜息を吐きながら、答えた。

呆れから来た溜息か、はたまた……。


「言ったはず、私はこれ以上、何も失わせない、それに理不尽な何もかもは聞きたくないの」


「社会全体の中で見れば飛んだエゴイストであることに変わらない、それでも私は理不尽を許せないし許さない、許し難いのよ」


彼女の其れは、まさに我儘(エゴ)であり願望(エゴ)であった。

理不尽を許したくない、それは社会という一つの荒波に呑まれるのではなく、その中で泳ぎ続けるに他ならない。


その荒波に意思があったとするのなら、その者に付ける言葉は、嗚呼、なんて愚かなのだろうと言ったものだろう。


ただ、それでも、と彼女は言ったのだ。

ならば、此方もそれに応えねば分不相応だと言うのだ。


問答を終えた途端。

此方へ瞬きも許さぬ先よりも上昇した敏捷さによって、接近を果たす蒼実に対し此方も願望の開闢を果たす。


「──────剥離覚醒(はくりかくせい)


剥離(はくり):終止前奏(カデンツァード)境界超越(きょうかいちょうえつ)逢魔竜憤怒(バハムート・イラ)


纏うは、己と契約せし竜の本懐。

憤怒という罪を抱き、記憶を取り戻した己と竜によって奏でられる前奏曲は全ての結界を解く能力を顕現させた。


その身の内側から溢れ出てた願望(エゴ)我儘(エゴ)、其れを以て世界という他者を塗り潰し、結界として展開するというのが剥離の本懐だ。


そうでありながら彼女は、己の内側(なか)にその結界を作り出す事で彼女自身の強化、及び自分自身が結界そのものであるという状態を維持している。


己という何者にも侵し難い外壁に包まれた結界は、相手の結界に対して塗り替えられることは無い。


「何故だ、なぜお前は……」


「なぜと問うのなら、戻ってきて! 三神! 」


展開の形という点において、自分と彼女は真逆である、彼女は内面に展開し己という身を外へ晒している。


侵され難いとはいえ其れは結界に対して無力に等しく、外部へ加わる形の力が働いた時、耐えられるかは別問題であり肉体の強度によるのだ。


己の進化した能力は総ての結界を相手に触れた瞬間、解き己の魂の外皮に変換する力。

己の異形たる左手で直に触らねば意味が無いが、彼女は内面に展開した。


である以上、俺の敗北は必死であるのだが、彼女の進化した能力が、俺には分からない。

全てを壊す黄昏の粒子のみで防げるかどうかはわからない。


だが、今此処で俺は君を倒さなければならないのだ、と左腕甲をその場にてパージ、顕になるは一年前よりも、更により醜悪に進化した左腕の姿。


相手の胸の真ん中へと触れんとする。

相手がその手に握られた太刀を振るうよりも早く、この戦いを終わらせる為に。



────────ぺたり。


触れた、内面の結界はこれで解かれるはずだ、と思った瞬間だ。


「ど、ど……」


彼女が、あんな台詞を吐くとは思わなかったと言うべきか。

次の瞬間、自分は宙を舞っていたのだ。


黒鋼の鎧を付けていながら、彼女は見事たるや下段からの蹴り上げにて此方を吹き飛ばした。

その上、蹴り上げたのは股間である。


大事な事だ、二度言おう。

股間である、男性という生き物が持つ圧倒的な象徴……否、弱点を晒しあげた部分を、彼女は空気を凍らせ纏っていた脚部で蹴り上げたのだ。


結果として、自分は気絶という形で敗北。

意識を失う直前に聞こえた声は、優しくも何処か恥じらいを感じる普通の彼女の声と。


「どうして、戦いの最中で人の胸なんて触ろうと思うんですか! この、変態鎧!」


飛んできた氷の塊だった。


to be continued。

「次回予告」


想いをぶつけあった二人は、世界より剥離。

新たな力へと目覚めることとなる。


きっと、この先にあるであろう新たな試練へと

旅立つために。

きっと、この先に待ち受けるであろう破滅へと立ち向かうために。


そして、全ては最終章へ向けて動き出す。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第四十五話:黒鋼、月、黄昏。


「月に居るのは、俺の生みの親だ。」

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