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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第四十三話:世界の話、そして……。

1ヶ月ぶりほどの更新となります、皆さんお久しぶりです、新人小説家のハルトです。


特に書くことは無いといえばそうなのですが……最近職探しに専念しており、小説の方から少し離れていました。

申し訳ありません、ですがしっかりと話数は貯めております故に、更新の方は問題ありません。


最終章までもうすぐ!第四十三話、どうぞ!

医療室の扉を静かに開けて、一番奥のベッドまで歩いていく。


そこまで広くは無い部屋ではあるものの。

負傷した一般人の人達や生徒でいっぱいな上、道具や薬品も不足しているから常に忙しくもある。


学園長からの話に聞く限りでは一番端の方だと聞き、淡々と薬品の匂いに鼻を突かれながら歩みを進めて、そこに居たのは。


「痛ッ……あっれぇ?ここら辺に……」


何か私物らしき荷物の入った段ボール箱を漁りながら、アタマをベッド下の骨組みにぶつける懐かしき真っ赤な髪の少女の姿があった。


「花火」


「アオ」


傍から見ていた視祇(みかみ)は、その光景に少しギョッとする。

一年越しの再会であるはずが、涙の一つも流さないのだ。

タダの人間であった蒼実(あおみ) 凍花(とうか)は余りにも日常と乖離した戦いをし過ぎたからなのか。


それとも、花火(はなび) 蓮華(れんげ)の姿が余りにも痛々しかったからなのか。

ワタシの知る由もないことだったが、今思えば聞いておけばよかったとも思う。


「随分と手酷くやられたのね、左眼も潰されて左腕を折られた、なんてね」


「……アイツ、一年前とは比べもんにならねぇくらい強くなってた、現在のアオなんか一瞬でぶった斬られるぞ」


両者、沈黙。

実力差があったとしても"あの"花火 蓮華の根性と気合の前で、意味は成さないかと期待していた蒼実さんが居たのだろう。


「それは置いといて、無事で良かった、身体の方はどうなの?」


「……もう、治りかけだ」


驚いたように目を開いた後に、彼女の表情はゆっくりと悲しげなものに変わっていった。


ここ一年の期間で発覚した、契約者の人外化(オーバーロード)


一年前に起きた東京陥落から起き始めたものとも言われていて、契約者に半ば不死に近い自然治癒力、契約族の力を無しに関わらず人外地味た身体能力を発現させる。


それが人外化(オーバーロード)


一年以上戦い続けた蒼実(あおみ) 凍花(とうか)も、新京都攻防戦以降。

己の契約族が存在しないに関わらず手元に残った伝承器の力を発揮し、生身で災獄と戦えている。


「は、花火(はなび)さんは……その、怖くないんですか? 自分が災獄みたいな化物になっちゃうかもしれないのに、終わらない戦いに身を投じて!」


私は、つい胸の気持ちに突き動かされるうちにそんな質問をしてしまった。

私は思うに、彼女の口から答えが出るのだと他人でありながら期待していたのだろう。


「だって、その分人が助かんなら俺らの犠牲なんてさ、指で摘めるくらいのもんだろうし」


言い切った。

一切、躊躇いも躊躇もせずに言い切った。

こんな人類の歴史の中で、最も絶望的な状況とも言える状態なのに。


真っ赤な炎の様に赤く。

其れを温かさと受け止めるかのような、翡翠のグラデーションの混じった眼は、まるで希望ある未来を想像するように言い切って見せたのだ。


だが。


「……ほんのちょっぴり、怖いけどさ」


───────嗚呼、この人も怖いのかと私は何故か落胆した、特に理由は無いはずだ。


この人の事を深く知っている訳でもない、特に親睦が深い訳でもない。


ならば、何故?ふと考えた自分にハッとして、気付いた。

……私が、普通と程遠いものだからだ。


記憶喪失。

その上、大規模の災獄侵攻に巻き込まれても、生きているという事実が普通から程遠いのだ。


そんな自分のおかしな質問に吐気を覚え、両手で口を抑えながら、医療室を慌ただしく走り去っていく視祇(みかみ)


「……あいつ、大丈夫かな」


走り去っていった彼女をベッドから身を伸ばして窺う花火(はなび)

彼女なりに心配している節はある、それに彼女の覚えた吐気は私も体験したものだ、と蒼実は 彼女と自分を重ね。


「きっと、大丈夫ですよ、何せ私の隊に直々に入らせてくれと、彼女から頼んできたほどの逸材ですから、ね」


「そういや、アオの隊って今、アイツとアオだけなのか?」


「そうですが、何か?」


不可思議な問いに私は首を傾げた。

隊の詳細などは、此方に保護されてきた時点でデバイス内に送られてきているはずだ。


「…やっぱ、白と黒は…」


「……えぇ、恐らく」


三日月姉妹(みかづきしまい)、承器に変化する不思議な双子。


彼女たちの消息は未だ掴めず、地上に居た(しろ)は装甲車に乗っていなかった。

(くろ)は、神威原兄妹(かむいばらきょうだい)含め、消息不明となっている。


彼女らの正体も分かりはしなかった。

隊に入ってきた時は、ただの双子だと思っていたのに、元の一般科の生徒らに聴取を摂っても正体不明の答えが変わることは無かった。


花火(はなび)、率直に聞くわ、彼女たち何者だと思う?」


「そうさな……妥当な線で契約族だな、造形も出力も伝承器そのもんだ」


伝承器は人工的に作られた承器とは違い、機械的ではなく、造られた企業名や型番が掘られていない。

その上、契約族の能力現出の際の出力も2倍以上の差が出る程の代物だ。


それに加え、伝承器は契約族以外が持つことは殆ど有り得ないというのもある。

契約族との契約が切れているに関わらず、現出している蒼実の得物は、姉のフリを続けていた八転獄道の物に近いらしい。


「そうね、やはりそうなるわよね……」


「嗚呼、それならそれでアイツらに直接聞くしかねぇさ」


そんな二人の背後から歩いてくるものたちがいた。

片方は、呪によって翼を失った神の娘アーサー、元WO学園長、八卿議会所属(はちきょうぎかいしょぞく)明星卿(みょうせいきょう)のルシファー。


「ルシファー、あんたも逃げ切れたんだな、彼処から」


「……すまなかった、すぐに会いに来れずに、執務や避難所査察で忙しなくてな」


その忙しさからか、顔が少し痩せこけたような気がしないでも無い、と蒼実は一年前のように顎に手を当てて考える。


「アーサーが今は秘書として?」


「嗚呼、そうだとも、凍花も久しぶりだな、一ヶ月ぶりほどか」


ルシファーの見せる笑顔は何処か疲労からか、ぎこちなく感じられる。


「ルシファー様、まだ執務が残っています」


「すまない、凍花(とうか)も任務から帰ってきたばかり、花火(はなび)も先日治療を受けてからだというのに、おちおち長話も出来なくてな……」


「では、二人ともまた後程、会いに来ますから」


アーサーはしっかりとした笑顔で、ルシファーは先と変わらず、ぎこちない笑顔で戻って行った。

その時だった、鳴り響く赤色灯の警報と外から響く雷が落ちたかの様な爆発音。

何が起こっているのかは理解できなかったが、本能的に何が……否、誰が来たのか理解した。


「……三神ッ!」


情動に流されるまま、私は承器を手に取り外へ駆け出していた。

彼の表情を一目でも見る為に……そんな私の脆弱で高望みな希望は、一瞬で打ち砕かれた。


竜の貌の意匠が彫られた黒き鋼の鎧に身を包む彼は、まさに魔神と呼ばれる程の圧倒的なまでの覇気を纏っていた。


「あなたは私たちを裏切り、貴方自身の記憶を見つけられたの? 」


私の問いに魔神・三神(みかみ) (あかつき)は応えず、黒鋼の鎧の隙間から見えた眼には理性の一片も感じられない。


学園転属当初よりも刺々しく。

より相手を殺戮する為に造られた兵器の様とも、獣の物とも捉えられる眼をしている。


三神(みかみ)……」


北の寒さからか、か細くなる私の声が届くことは無かった。

目視で追うこと叶わぬ敏捷さ、地面が隆起するだけの膂力を持ち接近する魔神。


「ぐっ…ぅ…! 」


咄嗟に手に握っていた承器を、鞘から抜き捨てる形で蒼実は抜刀、それに対して片手のみで振り上げられる三神の一太刀。


其れは、人の限界を超越した重すぎる一撃。

人という一括りの基準で測るには余りにも逸脱し過ぎている程に。


「……(あかつき)


「私は、アナタも仲間も日常さえも、地球の意思なんてあるかすらも分かりやしないものに、これ以上、奪われたくない、だから!」


「……今此処で、アナタを取り戻す!」


刃が鬩ぎ合い、散る火花。

理性無き黄昏から響く鎧の擦れる音。

それを救わんとす蒼き花を押す冷たき北風。


彼女の心に芽吹いた信念は蕾となりて、今此処に花開くだろう。


to be continued。

「次回予告」


爆心より君臨する黒き鋼を身に付けた、黄昏。

北の地に吹き荒れし雪風に押される、蒼き花。


激突せし、新たなる力。

そして集いて往く、開闢せし者たち。


蒼き花の蕾が揺られる時、契約者を導く力が。

黒き黄昏が目覚めんとする時、破滅を謳う力が。


今、激突する。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第四十四話:激突・黒き黄昏 対 蒼き雪花

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