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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第三十九話:終末の序章

こんばんは。

約一ヶ月ぶりとなる更新です。

まさかまさかの新社会人になりまして、手続きやれお部屋の掃除やれ仕事の研修やれをしていたら時間は無くなるわ、疲労まみれで大変でございます。


そんな中でも更新はできる限り続けていきますので、どうかよろしくお願いします。

2036年・七月末。


その日、世界の半数が災獄の手によって陥落。最後の生存圏である北海道へと人類は避難する事となった。


無論、食糧難や医療設備の不足から人類同士の争いが絶えず、それらを治めるのでさえも契約者の仕事となる。

現在は、何ら傭兵と変わらない業務をこなしているに等しい。


それが2037年の私達、全八名で構成される。

元WO所属旧世第一部隊、錆刀である。




2036年、七月の終わり。

A.M.12:00。


私たちはフロントラインでの遠征及び罪との攻防戦の後、一時の療養を得てWOに帰投。


そして、天界の指導者である神の娘。

天止アーサーの翼に掛けられた尼剌部陀の呪詛の解呪を行う為、天界へ向かうこととなる。


授業の学びにも繋がる事だろう、と学園長もといルシファーの後押しもあっての決定だ。


第二、第三部隊は災獄が出現した際の対処要員として地上でいつも通りの授業を行うらしい。


「……何故、アナタ達が同行するのです?」


単純ながら、的確な問い。

天界が在るという成層圏付近まで伸びる軌道エレベーター天門に乗る五人に対し、アーサーが問う。


「ルシ──学園長曰く、何かあった時の予防線と言っていた、だが……」


暁がその問いに対し答え、それに続き花火が口を開く。


「でもよ、天界は災獄が何故か出現しないんだろ?空飛ぶヤツだって居ンのにさ」


「私でもそこは知り得ませんが……父曰く、天界には災獄を寄せ付けない強大な奇跡が掛けられているのだとか」


神が詳細すら知りえない強大な奇跡、どのような奇跡なのだろう。


ふと疑問に思ったのだ。

思えば、この時アーサーに問い掛けていれば、もっと彼と話していれば、今の世界にはならなかったのかもしれない。


数分、他愛もない会話の後。

天界への扉が開いたと同時に、強烈な熱波が第一部隊とアーサーを襲う。


そして、炎に燃える天界の都市から現れる四人の姿。


「……神威原(かむいばら)


「やぁ!暁、偶然だね、こんな所にどうしたのかな、何か用事?」


へら、といつもの笑った顔を崩さない嵐乃丞(らんのすけ)

その隣に立つ三人は口角の一つも上げることはなく、ただ立っている。


「……丁度、今、お前に聞きたい事が出来た」


「何かな」


理由は明確。

彼らの背後に燃える都市。

炎に全身を焼かれ、その生命力が故に熱さに悶え苦しみ、地上へ誤って転落する天止らの姿。


全てを壊し尽くしても尚、破壊の限りを尽くす傍若無人なる巨大な竜。


「どういう事だ、これはどういう状況で、お前達は何をした?」


暁の眼には、怒りのみが灯っている。

今すぐにでも答えが聞けたのであれば、即座に獣の如く喉を喰いちぎり殺してやろうと言った様子で。


「……簡単な答えだよ、三神、俺は全ての元凶を鏖にしただけだよ」


「兄の言う通り、天界は天止は全ての元凶、それは黙示録戦争が起こった時から明白でしょ?三神」


その答えに対して、暁は一切の殺意の乱れもなく神威原(かむいばら) 嵐之丞(らんのすけ)へと抜刀。

ただ、その刃が届くことはなく、残る三人。


傘守(かさもり)、ルシア、御珠(おたま)の手によって容易く止められる。


「ごっ、ごめんなさい…三神、さん……今、嵐之丞さんを殺される訳には行かないので」


「……私たちの計画を邪魔しないで、お願い、蒼実さん、抵抗はせず着いてきて、そうすればアナタ達は傷つけないから」


この状況、戦力差は目に見えている。

……目の前の四人が握っている承器(しょうき)も普段使用しているものと全く違う、ならば。


「分かりました、皆、伝承器を彼らに渡して」


「はぁ?アオ、お前……!」


冷静な判断だが、花火はそれが気に食わない。

目の前の仲間だったヤツが裏切ると言うのなら、殴ってでも止めたいからこその言葉。


「花火さん、疾くして今のアナタ達に自由は与えられていない」


「チッ……わぁーったよ」


大人しく伝承器を渡す蒼実と花火。

そして最後、三神が伝承器(でんしょうき)をルシアへ渡そうとした時にそれは起こった。


黄昏色の粒子、謎の流出。

刃の柄より爆発的に溢れ出す粒子は、承器で防ぐ間もなくルシアを易々と吹き飛ばす。


「今のは、三神がやったのかい?」


「いや……俺、ましてやバハムートでもない」


四人から注がれる疑念の眼。

正直な話、この時の彼が一番辛かったのかもしれないとも思う。

第二部隊、第三部隊の皆とは何となく第一部隊の私たちとは違う形での繋がりがあったから。


「兄、天止の生き残りが此方へ向かってくる」


「……そうか、じゃあ移動しようか、神殿に」


神殿。

地上で言う都庁の様なもの、この四人が求めているものはどうやらそこにあった様子。


何故か、という理由は直ぐにわかる。




神殿にて、私たちは手錠で拘束された状態の言わば捕虜という立場で使われる事となる。


「……神威原、準備は出来た、どうする?」


「破壊はまだだ、先ずはワールドオーダー、議会に情報を流してから災獄共を天界に呼び寄せる」


災獄を呼び寄せる。


その言葉を聞き逃す程、当時の私たちは甘くはなかった。

だが、其の言葉を聞いても尚、今でも心の底にはまだ、かつて戦いを共にした戦友にして同級の友人であると信じてしまった甘さがあった。


だから、終末を防ぐことが出来なかった。


「────災獄を呼び寄せる?何を言ってるの?神威原君」


「そのままの意味だよ、蒼実さん、災獄共を呼び寄せて、この天界を地上に堕とす」


「それが、何を意味することか───!」


声を張り上げた私に対して、帰ってきた答えはよく理解できるものだった。

敵意か、殺意か、向けられた物の複雑さはとても理解し難いものではあったが。


突如、神威原の蹴りが私の頬に叩き込まれる。


「神威原!テメェッ!」


腕と足が拘束されているにも関わらず、反抗的に声を荒らげる花火に対しても顎への膝蹴りという形で返事を返す。


単純故、実に解りやすい。


「君らに用事なんてないんだよ、少し黙っていてくれないかな?」


「兄、蒼実たちは傷つけないで」


「傷つけていないだろ?怪我はしたけれどね」


二人の少女は倒れ伏して漸く理解する。


彼は本当に裏切ったのだ、私達に対する情や未練など一切無いのだ、と。


「……三神、なんだい、その目は」


「いいや、何でもない」


「いいや、なんでもあるよ、君のその何か言いたげな目が僕は大嫌いだった」


ならこの際だと彼は思ったのだろう。

あの時吐いた言葉は、今まで聞いた彼の言葉の中でも一番人間らしく。


そして─────


「お前"も"傷みを隠す人間なんだな」


「何を言い出すかと思えば……僕をそこいらの人と一緒にしないでおくれよ」


「うっかり殺してしまいそうになる」


薔薇の棘の様に鋭く刺々しい刃が盾から伸び、首元へ突きつけられる。


ただ、神威原にとっては動揺を誘えたようで其の顔は先までの冷静沈着で、一切の事に揺るぎないようなものではない。


解りやすい程に眉を引き攣らせ、額に冷や汗を垂らしている。


「……三神、天界と天止について改めてお勉強させてあげるよ、そうすれば僕たちのこともわかるはずだからさ」


その眼に満ちるもの。

悲しみと復讐に呑まれた鬼の眼で。


to be continued。

「次回予告」


天界にかけられた大規模な奇跡を狙い。

天界の都市全てを塵にせんとしたもの達。


彼らの先導者たる神威原は語る。

天止の存在の真実と、天界がなんの為にあるのかを。


そして、目覚めるのは真の奇跡(わざわい)


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第四十話:天界に座する真実


「……崩壊は、近い。」

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