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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第三十四話:傲慢、漸進狂気

一日遅れての更新となります。

どうも皆様、こんばんは、作家になりたいハルトねす。


内定が決まり、所属する企業様にも御礼状を書き終わり暫くのほど、ようやく肩の荷が降りました。

疲れ申した。


ですが弱音を吐いてる暇はなし。

じゃんじゃん書いて、じゃんじゃん頑張ります。

カタパルトデッキより射出される四人の影。

各々の信じるものを胸に、出撃する。


時刻は不明。

月が空の真ん中にある事から見るに、恐らく00:00を回っていると見ても良いだろう。


「獅子とその模造品を発見、三神の生体反応は……不明、南は軍勢の一番背後、一際巨大な奴の中だ」


白刃のデバイスから送られてきた通信メッセージ、荒れた大地に似合わない白い獅子の軍勢が闊歩する姿。


その最前線で指揮する尼剌部陀。


「では、アナタ達は獅子の方へ、自分は……」


カタパルトより射出された速度より疾く。

ヘラヘラとした表情でありながら、獅子の軍勢を仕切る八転獄道と対峙するアイオーン。


「おや、また来たのですか?」


「はい、アナタを封印、殺害しなければならないので」


敵対意識に対して今にも牙を向かんとする獅子らへ止まれ、と合図の様なものを送る。

そして、今にも拳が届かんとする正面距離まで接近する尼剌部陀。


「まぁ、良いでしょう、先程はシラけ……」


尼剌部陀がそんな御託を言い放つよりも速い。


鞘内で一瞬にして暴嵐にも等しい風をその刃に纏いながら振り抜かれる刃。


地面は螺旋状に抉れ、まるで荒波を描きながら尼剌部陀諸共、複数の獅子の軍勢を巻き込んで消し飛ばしていく。


「中々、どうして人類の味方なんですかね」


尼剌部陀にとっては少しの風で吹き飛ばされたと何ら変わらないもの。

直撃しなければ何も変わらぬ技術という名の弱者が身に付けた技に過ぎない。


相手とは距離がありながら、余裕で詰められると言った表情で地平を疾走。

懐へと敵ながら上手く入り込み、アイオーンの驚愕の折に首を掴み何処かへと連れ去っていく。


そこに残ったのは、獅子の軍勢。

契約者、たったの四名。


それぞれの思いが揺れる。

災獄全体に向ける恨み、友を取り戻すという意思にしても蔑ろに出来ないもの。


風が両者の間に吹けば、

それは開戦の怒号と変わりない。


「来るぞ!」


人類という劣等種(れっとうしゅ)に対して、複数体の獅子が地平を砕きながら奔る。

人から見れば巨躯(きょく)であり、恐れでしかないものが数十体以上の群れを()して来る。


花火は対峙(たいじ)する。


背後へ退()くのではない、退()くなんて言う言葉自体がありえない。

逆に接近し、拳を振るい、獅子本体の力を持たぬ模造(にせもの)の獅子の脚部を複数と砕く。


それに合わせて


「私が……殺る」


槍の承器に変化した白を、()ぎ払うように振り上げ一匹の首を切断すれば次々と其の長物を回転させ、それによる斬撃(ざんげき)で粉々(こなごな)の肉ミンチへと変える。


何とも、その二人の姿。

まるで鬼神(きしん)悪魔(あくま)とも……最も、そう呼ばれるのはまだ先の話ではあるのだが。


それに対し、周りを囲う模造の獅子は動かないのではなく否、動けない。

血濡(ちぬ)れの二人を見て、(おそ)いかかれば即座に己自身もそうなるのでは無いか、と怪物にあるまじき恐怖(きょうふ)という感情が湧き出ていたのだから。


その二人の後方。

二体の模造の獅子が桜花、秤を狙い、凶爪(きょうそう)にて切り伏せんと攪乱(かくらん)する獅子、まるで雪の上を走り回る犬の如き速度。


「秤、同時に!」


「はい、お嬢!」


猛々しく、されど美しく。

正確に振るわれる薙刀(なぎなた)(かたな)、花火らと同じく脚部の切断の為、ほぼ同時に満月を描くように振るわれる。


見事に鮮血を散らし、脚部を切断。

そして即座に各々の方に立つ獅子の頭部を、斬り捨てる。


「失セヨ」


己の分身より、そんな感情を読み取ったか、本体である白獅子は其の言葉を紡ぎ模造の獅子を全て消滅させる。

そんな渦中(かちゅう)、オペレータールームにて。


「模造の獅子軍勢、消滅」


「何を言っている?」


ざわ、ざわとオペレーター達の声が室内に響く。

至極当然の反応、綿密な作戦を立て、その上で作戦開始からさほど十五分程度しか経っていないというのに。


彼女らに未だその実力足りえない事は知っている、だからこそ何故消滅したのか。

何故、消滅させたのか。


答えは一つ。

相手の方も"準備"が出来てしまった。


「前線に出ている四人に伝えろ!」


「撤退だ……!」


何事の警告は遅いものだ。

災害にしても、なんにしても、これが人類最後の日となろうとも人は、足掻(あが)かねばならない。


場面は戻り新京都、都市部内。

途端に生成された黒き嵐に包まれながら、その中心に立つ獅子は嵐を利用し周りの建造物全てを塵芥とする。


まるで、獲物を自身のテリトリーへと誘い込んだかのように牙を見せびらかしながら。


(あらし)()み、そこに再誕するは真の厄災。

"人類へ"下されなければならない裁きにして、獅子を模した罪。


荒々しく凶刃(きょうじん)の如き翼を広げ、総じて断罪せんとするかと言う程に鋭利に奇怪に動く尾。

胴体全身を貫き現れた触れるもの皆滅殺(めっさつ)せんとする禍々(まがまが)しき牙。


漸進狂気(ぜんしんきょうき)

段階を置き進む確実な狂気、狂喜であり凶器。


根源的(こんげんてき)な罪は傲慢。

己の過去に引き()られ、それとの訣別が出来ずに生き続けた人間が抱く醜悪(しゅうあく)(きわ)まりないモノ。


「汝、人の子よ、何故に生きる何故に死ぬ」


流暢(りゅうちょう)に紡がれる言葉。

女性と男性の混成した電子音に近い。


「嗚呼、何とも哀れな」


「故、我は人類の絶滅を此処に贈ろうか」


突然の絶滅宣言をする白と翠色の体躯を持った獅子、目覚めし銘はフュン・シェリウス。

北風を完全に吸収し、罪に至った至罪体(しざいたい)


「控エヨ」


瞬間に紡がれる言の葉は、重力反転の力場を作り出し。

いとも容易く花火ら四人を地平へ叩きつけた。


そして、獅子は思考する。

この方法では哀れな人類を鏖殺するには、時がかかり過ぎる、と。


故に、効率を求めんとする。


「罪を背負え、(ゆい)来迎(らいこう)


突如として揺れ出す地平。

…否、世界を震動させ、他の紅の地平と化した大陸を日本という生き残りへ向けて"動かしている"。


共にオペレータールームの巨大モニターには、日本の大陸に他の大陸がぶつかり合うまでのタイマーが計測される。


「傲慢よ、嵐となりて鏖殺(おうさつ)


獅子は無駄の無い鏖殺を。


東西南北より巨大な、台風さえも生成し、その速度は大陸同士がぶつかり合う瞬間と同じ時に上陸する様に選定する。


嵐と地震による完全犯罪ならぬ、完全災害。

四つの嵐に加え、過去人類が体験した事の無いであろう大陸同士のぶつかりによって発生する大地震。


絶滅は免れない。

否、免れさせることは無い。


何よりも獅子が、何よりも災いが。

人類種の存亡を、生命の存在を許す筈が無い。


それは過去からの理であり、誰かの悲鳴でもある。


「故に、我らは人を殺すのだ」


その様に、まるで自身の理由の方が正しいと高らかに咆哮する獅子に対して、他三人の様は抗うのが精一杯。


それでも地面に今にも身体が押し潰されそうな花火は、意地と根性という原点のみでゆっくりと地面より身体を起こさんとする。


「無駄だ、黙して見ていると言い、完全なる破滅を」


「無駄だだの、オレらの方が悪ぃだの有り得ねェんだよ……」


「何よりもテメェらはオレのダチを傷付けた……だから、俺もテメェらの事は許す気も、命乞いさせる気にもサラサラならねェんだよ!」


まるでその思いに伝承器が応える様に、両拳より燃え上がる焔の推力は上昇を始める。


それは反転の力場より脱出を可能にするほどにまで、強く赤く燃えている。


「ならば、抗ってみせると良い」


「言われなくたってやってやらァッ!」


獅子と焔の戦いに、今火蓋が切られるのであった。


to be continued。

「次回予告」


火と風は、古来より相容れない。


風は火の様な温かさに焦がれ。

火は風の様な優しさに焦がれ。


双方共に、憎い。

焦がれているからこそ、憧れがあるからこそ憎く。


まるで星空に光る、人には掴めぬ一等星。

想いは交差し、すれ違うこともある。


それは人故に、人というものだからこそである。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第三十五話:炎は燃ゆる


「相容れないモノだとしても、それでも……」

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