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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第三十三話:至罪

此方も更新となります、第三十三話。

遅くなってしまい、申し訳ありません。


ご期待に添えない点もありますが、どうぞよろしくお願いいたします。


では本編の方、どうぞ

(かぜ)が吹く、獅子(しし)を包むように。

(つみ)(ばつ)へと(いた)る時は刻々と迫り、災いが動く。


「さぁ、我々の喜劇(きげき)を始めようか……、希望が砕け()る瞬間の絶望(ぜつぼう)で、その顔を染めろ!」


地平に立つ指揮者の背後に、数百もの白き獅子の姿。

軍団、軍勢……否、かの厄災にとっては演奏者達(オーケストラ)、化物共の拍手喝采。


けたたましく吼える獅子らの咆哮、決戦は近い。

場面は変わりフロントライン学園内、オペレータールームに移る。


「災獄の反応を複数体確認(ふくすうたいかくにん)、基本的に此方へ侵攻してくる様子、全ての個体が罪とほぼ同一の性能を誇ると思われます」


オペレーターの一人が伝えた言の葉は、人類側にとって圧倒的不利を示すだけのもの。


「指揮をしているものは?」


「はい、個体反応から推測して……八転獄道(やてんごくどう)一柱(ひとはしら)と考えられます」


極めて強大な反応が、分裂又は分身なのか。

尖兵(せんぺい)として生産された獅子の模造品と白き獅子本体を仕切る。


それはそう、まさに演奏者らを導く指揮者、オペラで主演を務めるのが怪人の様なものだ。


「では、三十分後に出来るだけ動ける契約者を此処に集めてくれ、……決戦だ」


「解りました、緊急避難所以外へ校内放送を掛けておきます」


とオペレータールームを後にする教官。

決戦を前にして、少しの不安と怒りか、何かしらの感情より来たる握り拳。


フロントライン屋上にて。

缶の珈琲を一口、また一口と飲む教官の姿とその横に立つ憂鬱(ゆううつ)げな顔をする天止。


「翼の調子はどうだ?」


「……それなりに、と言った所です、痛みは引きました、ですが、これは呪詛(じゅそ)の類ですので解呪までは時を要すると思われます」


「そうか」


会話は、それ以降続かない。

二人の視線の先に見えるのは、荒れ果てた新京都の姿。


責任感(せきにんかん)贖罪意識(しょくざいいしき)

その二つを持っているという点においての、背中は同じものだ。


指揮する立場として、元軍人であるにも関わらず戦う生徒らの力にはなれない。

戦場へ赴くことも、ましてや指揮と教育ほどしか力になれないという事実への贖罪意識。


人として、教師としての責任感。


もう一方は囮作戦を立案し誰かを犠牲に(さら)そうとした贖罪意識。


天からの抑止(よくし)と呼ばれるからこそ、それ相応の事は果たさねば、協力しなければならない人を甘く見た責任感から。


「私は、どうすれば良かったんでしょうか」


「さて、な……私にも分かりはしないが、現在を生きる事こそが私達の使命(しめい)であり、やらなければならないことだと感じている、故に私は私の出来ることをする」


「教官殿は何事にも置いて、覚悟(かくご)を決めているのですね」


そう自分の不甲斐(ふがい)なさを感じ、切なげに言うアーサー。


「そうでも無いさ、花火、北風二人が取り込まれた時、冷や汗もかいたし人類の終わりかもしれないとも思ったさ」


教官は缶のコーヒーを飲み終わり、その言葉に対してしっかりと答える。

自分の不甲斐なさを感じているのは、私も同じだと言うように天止の肩に手を置いて。


「深く考えるな、何事もな」


「……出来るだけ、そうしてみます」


四階にあるオペレータールームへの階段を下りていく。

独りになった天止も、少しだけ考え込み同じく階段を下りる。


保健室にて。


「アオ、行ってくる」


隣のベッドで静かに寝息を立て眠る蒼実へ、挨拶する赤き炎。

デバイスを自分流として制服に付けたベルトの専用アタッチメントに装着し、保健室を後にしようとした瞬間。


「行くのか、我が契約者」


「行かないと、南も三神の野郎も死んじまう」


背後より、蛍光灯から照らされて伸びる影から聞こえる声。

契約族、魔焔王(まえんおう)ボルテウケスのもの。


「行かねばならぬ、という使命感のみで動いているのか?」


「それがなんか悪ぃかよ」


「悪いに決まっているだろう、汝は言った、我と契約した際に」


思い出す過去。

初めて承器に触れ、ボルテウケスの問への答えと契約を交わした際の約束。


「オレは、使命なんかで動かねェ、オレのオレらしいオレだけの心で感じた事で動く!」


「ならば認めよう、汝を我が契約者と」


それは(ちかい)であり、護らねばならぬ(ちぎり)

果たさねばならないもの、それを思い出し花火は苦い顔をしながらも。


「悪ぃ」


「いいや、お前は悪くは無いが、重く気負うことは何も無い故、止まることなかれ」


「……おう!」


未来を見据えた様な緋色の眼を開く焔の王は、何を思ったか。

それ以降、声はかけず花火はオペレータールームへ駆けていく。


契約族とはまた別に、彼女の眼は未来を見ている。

誰かと誰かの話、日常的なもの崩れることの無い不変の焔。


ボルテウケスの見据えた先の先、黒の未来ではなく皆が笑顔であるべき白の未来。

それが成される時、彼女の力は目覚めへと繋がるだろう。


オペレータールームに集まったのは教官、天止アーサー。

そして契約者、花火、白刃、逆壬、黒と白、WO所属の第二、第三部隊は最前線(さいぜんせん)より侵攻してきた獅子の殲滅。


総動員できるだけの契約者、指揮系統を駆使(くし)した迎撃防衛戦(げいげきぼうえいせん)ネメアーの獅子。


四人の契約者は、獅子の集まる最前線へと討伐隊を編成、進行。

出来る限り複数の模造獅子討伐及び誰か一人でも北風 南が救出できた場合。


即座撤退を許可するという物。


また八卿議会(はちきょうぎかい)からアシャラウド=アイオーンが救援に来ており八転獄道の第五獄(だいごごく)、無雲・尼剌部陀の足止めを行ってもらう事となっている。


「何か質問があるものは作戦開始十分前には聞いておくように」


「出撃は二十分後とする、各自準備を怠るな、以上だ!」


各々の準備を開始する中で、最前線を任された五人はオペレータールームで話し合う。


「さて、どうする」


「……どうするってなんだよ」


「少なくとも模造獅子(もぞうしし)の相手は二人は必要だ、でないと学園の防衛に回る君たちの第二、第三部隊に損害が出る可能性がある」


五人(ごにん)の顔は沈む。


そう、模造の獅子と言えど相手は罪の模造品。

罪本体には至らぬが、災獄の格として上位の枠に食い込む程度には強い。


食い止める、討伐という重要な役割を任せられる以上。

"多少の犠牲"は覚悟しなければならない。


「私と……花火、さんで本体の元に行きます」


皆が悩みあぐねる中で、黒がそう呟く。


「君達が? やれるのか?」


「白も拗ねちゃって、もうカタパルトの方に向かっちゃったけど……三神さんには恩がありますので」


「オレも行くさ、南ん事放っとけねーし」


黒の言葉に背を押されたか花火もそう応え、全員それに対しての文句は無く。

桜花、秤共にそれに納得し頷けば自分の準備へと戻っていく。


「……ごめんなさい、勝手に言ってしまって」


「いんや? 黒が言わなくても、オレは行くつってたし、逆にオレ、怖かったんだ、あの二人の前で行くっつーのがさ」


そんなイマイチ今までの(ねつ)を感じられない言葉を聞き受け、ほんの少し(おどろ)きつつも(いく)ばくか身長の小さい黒は花火の顔を見て、其れは確信に近い驚愕(きょうがく)に変わる。


信念(しんねん)意志(いし)の類が消えかかっているにも関わらず、其れを保とうとする情熱の感じる赤き(ひとみ)


「…………花火さんは、きっと」


顔を見ながら呟く黒。

それに対して、きょとんとした顔をする花火、以降の会話はない。


それでも現在(いま)は背中を預け合えるだけの信頼、友としてただ動くだけだろう。


終は遠く、始は近く。

(かぜ)が吹き荒れ、希望(きぼう)は消える。


世界を包む、絶望(ぜつぼう)の嵐。


そうだとしても焔は()ゆる。


to be continued

「次回予告」


繰り広げられるはずの激戦。

止まらぬ血濡れの拳、鮮血散らす槍による突撃。


それは、思惑によって停められる。


黒き嵐は傲慢になりて、

厄災は此度こそ『再誕』する。


総じて崇めよ、漸進狂気(ぜんしんきょうき)


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第三十四話:傲慢、漸進狂気(ぜんしんきょうき)

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