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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
37/60

第三十二話:黒縄、秩序/炎の葛藤

更新が遅れました。

本日は同時に二話更新致します。


characters file。

世界観用語解説の方も更新致します。


では第三十二話、三十三話の方、どうぞ。

()れる空気、弾け飛ぶ地面。

豪快(ごうかい)に、(あざ)やかに放たれる風の斬撃と合間(あいま)を抜けて、疾走というには速く。


地平に残像(ざんぞう)を残しながら接近していく黒き影。


黒き影の放つ()りの一撃全てに、殺意又は意思が宿り、それは従うかのように放たれた角度より曲がり捻り、相手の喉と腹を同時に狙う。


「やるじゃないか、屑にしては」


「ふむ、余り舐めていると痛い目を見るぞ?」


狙い放たれる蹴りの波を容易く、刃にて受け止め弾かれ、時に避けては繰り広げられる(せめぎ)ぎ合い。


その度に、地面が海の様に(くつがえ)り地上へ瓦礫(がれき)として落ちてくる。


それらさえも利用せんと()って(はじ)いて、散弾銃の様にアイオーンを的確に捉え飛ばす尼剌部陀(にらぶだ)


さながら隕石群の中をすり抜ける彗星と彗星のぶつかり合い。

その合間に割り込む事など自殺行為に等しい、風一つ一つが殺人級。


攻防を繰り広げる内に、相手に一撃を与えたのはアイオーン。

尼剌部陀(にらぶだ)が接近共に顎を、顔面事木っ端微塵に霧散させんと放った右脚による蹴り上げ。


それを、肌が0.1ミリ単位で擦るのを予測、想定。


後方へ背を反って、腰を落とし抜刀という形より放たれる風の斬撃は、尼剌部陀(にらぶだ)の上がりきった右脚部を粉末状に斬り捨てていく。


それでも片足のみで500mは下らないかの距離をとる尼剌部陀(にらぶだ)


「む、切れてしまった」


痛みという感覚自体がそもそもが無いのか。

漸く塵芥と化した右脚を、見て当たり前かのように呟き。


次に地を粉砕しながらアイオーンへ接近する瞬間には、既に元に戻っていたのだから。


「さて、お返しだ」


放たれる蹴りにしては不可解な軌道。

楕円状(だえんじょう)に動く蹴りの波、何処へ向かうのか、そんなのを気にする暇もなく到着する。


それは、上下左右(じょうげさゆう)斜角(しゃかく)全てにおいての方向より、波が来る。

たった一撃の蹴りの波が、全ての方向に分裂を繰り返し相手へと向けられる。


勿論、威力の減衰などは無く全てが地面を抉る暗黒天体の様に進んでいくが……。

すべての波が当たったと思われた時に、霧のように掻き消えるアイオーンの姿。


「……逃げたか」


一つ舌打ちを立てながらも、その存在が居る方を襲うことは無く、追いかけることもない尼剌部陀(にらぶだ)


場面は変わり、保健室内。


「花火さんのバイタルは特に変わりないです、恐らく後数十分もすれば目覚めると思いますよ」


「ただ、目が覚めたとしても会話のみで蒼実さんの方は酷い傷と疲労で動けないと思います」


と保健室のベッドで眠る二人を見て、五人は沈黙する。

教官、外套者、アイオーン、白刃と桜花。


フロントライン学園前を防衛していた部隊は災獄全ての殲滅(せんめつ)に成功し、休息に入っている。


「問題は、獅子と三神、そして北風……か」


「北風 南さんが獅子自体に取り込まれるまで、恐らく数時間程、再出撃の際にはほぼ半分以上が、と言ったところですね」


「すまない、態々秩序卿に此処まで……御足労おかけした」


ふむ、とアイオーンは少し考え込みながらもにこりと先の戦いの際とは違う笑顔を見せながら。


「いえ、大丈夫ですとも、人の未来を守るために戦っていますから」


そんな返しをしている内に、花火がベッドより意識を取り戻す。


「起きたか、花火」


「ココは……? 」


「保健室です、貴女を助ける為に奮闘(ふんとう)し蒼実さんが連れ帰ってきてくれて、先まで貴女は意識を失っていました、蒼実さんは現在も昏睡状態にあります」


桜花は淡々と事実を伝える。

気が動転しているのか。

はたまた頭痛か、何かで頭が痛むのか額の辺りを掌で抑えながらゆっくりと枕へ頭をつけ、後悔の念を吐く。


「オレは、また……」


「後悔ならば後にしろ、お前にはまだ救うべきものが残っているし今は自分の身を案じるときでもある」


「でも!」


ベッドから上半を上げてそう叫ぶ花火へ、ため息を着き近づいた後に胸倉を掴んで、叱責する白刃。


「でもも、だってもクソもあるか!」


「貴様が蒼実さんによって助けられていなかったら、一人でも欠けてしまったらこの世界はどうなっていた?」


「救われた命に対しての、後悔はするな」


白刃は怒鳴る。

それはそうだろう、下手をすれば、誰も助けに行かなければ花火も罪に取り込まれ世界は恐らく破滅へと一途を辿っていた。


その上、花火は蒼実が全身全霊を込めて救った自分の命に対しての後悔すら行った。


故に白刃は怒鳴ったのだ


「……ごめん」


ただ、後悔の念が少しだけ残っているのか胸倉を掴まれた花火は顔を背けてしまいながらも、謝罪をし。


「……すまない、此方も声を荒らげ過ぎた」


白刃も、胸倉から手を離しながらそれの心情は汲み取り、出来るだけの理解を寄せるつもりで謝罪をした後。


「腹は、減ってないか?」


不意に問いかけられ、何となく腹の辺りを確認する花火は。


「え?嗚呼……まぁ、減ってると言えば減ってッけど」


「お嬢、よろしいですか?」


振り向きながらそう言う白刃に対して、にこりと微笑んでいる桜花、許可の合図とも言える。

それを受け、彼は調理室へと向かい。


数分もすれば、ほのかな匂いが鼻に入る。


「花火さん、少し聞きたいことがありまして」


「改まってなんだよ? 桜花」


「……貴女が、核に囚われていた際に見た景色を教えて欲しいのです」


いつに無いほど真剣な顔付きの桜花の意図を、今は汲み取れはせず花火は話し始める。


「オレが? まぁ……寒い雪ん中で、ずっとオレは過去から逃れらんねェって言われ続けてさ、いつの間にか意識が飛んでたみたいな感じ」


単純だが、実に苦であった点に変わりは無く。

ただ無窮に広がる雪原の中で、歩き続け責められると言うのみ。

それを聞いた桜花は、何か苦いものを飲み込んだような顔をする。


「そんな顔すンなよ、大丈夫だって、今じゃ助かった訳だし……けど」


「けど?」


「オレも過去から目を背けちゃいけない、って改めて気付かされたんだ、アオが、凍花が自分の過去と向き合ってオレを助けてくれたみたいに」


「オレも、まだこんな程度なんだって思い知らされた」


まるで、何か遠いものを見ているような顔をする花火。

友人である凍花に対して愛とも取れる感情、離れて行ってしまう様な物を今、感じている。


花火にしか分からない、胸の灯火が消えた感覚

炎が消えた心は、とても空虚で何も無い。

そんな何処か上の空な彼女の顔を見て、ポツと呟く様に問いかける。


「花火さんは、どうして戦ってるんですか?」


単純な質問でありながら、深海の様に深い。


「どうしてって……分かんね、凍花にWOに誘われてそんでいつの間にか戦ってて」


数刻の沈黙の中、花火と桜花は見つめ合う。

もう一方は決意に満ち、もう一方は空っぽな白い灰、熱の消えた瞳。


「一つ、私から助言をするのならば」


「内側を隠している者に、改めて向き合った過去との訣別は果たせないと言うのに友の隣に立って、競い合える、と?」


「出来ないんですよ、出来てないんです、資格がない」


厳しい視線。

それは花火を思うからこその、蒼実を気にかけるから来る白刃と同じもの。


「だからこそ貴女は、もっと皆の前で素直になると良いかもしれませんね」


そんな言葉を残して桜花は保健室を後にする、消えそうなくらいの炎を残して。


to be continued。

「次回予告」


学園へと迫る模造獅子の軍勢。

それは傲慢を持つ獅子の力故のもの。


そんな中で後悔と思いは空を渡り、夜明けへの道を開く。

その時、花火は、白刃は、逆壬は、そして黒は。


たとえ絶望さえも奪われたとしても、人は立ち上がるのだろう。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第三十三話:至罪


「決戦は近い、赤き炎の目覚めさえも。」

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