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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第二十八話:産声と咆吼

どうも、皆様こんばんは。

作家になりたいハルトです。


最近なんだか台風が凄いそうですね。

こちらに来る様子らしいです、休みが増えるのなら楽しみですが。


さて、お盆休みももうすぐ終わりを迎えますね。

嫌になりますね、行かない訳には行かないので頑張ります。


では二十八話の方、どうぞ。

陽が沈んだP.M.7:00。

囮作戦という形だけの名目。

日本海方面に向かう花火の警護には蒼実を、皆子山方面に向かう北風には三神を警護とし作戦は開始された。


場面は日本海方面に向かう花火と蒼実。


推定距離(すいていきょり)一km先に巨大な反応あり」


「分かってる、けど…なんか、多くねぇか、反応がさ」


複数(ふくすう)のムラがある、と言えるような反応がデバイスより出ている。


巨大な反応は(ただ)一つでありながら、まるで其処自体に複数存在している様な不可解(ふかかい)な反応。


接近する二人の契約者(マスター)に呼応するか、海底に眠っていた厄災の鯨は産声(うぶごえ)を上げる。


転換し同時刻、北風と三神。

皆子山方面に向かう二人、鯨の産声が街中に響き渡ると共に地中浅くで目覚めの刻を待ちわびた咆吼(ほうこう)が響く。


瞬間。

海底より/地底より、放たれる一つの鉄の棒、紅く黒く何とも例え難い()を纏う物か。


そして同時にそれは花火の/南の、腹を穿ち。


一瞬にして、紅黒き棒そのものへ封印され、護衛に来た二人が其れを眼で追うよりも速く。

地中より/海より飛び出した巨大な獅子と鯨に"捕喰"された。


「え?」


何が起こったかという把握までの時間は五秒か、はたまた十秒だったか。

絶望に(ふけ)る彼女の前で水飛沫を上げる海原、一人の契約者を(にら)みつける黒き瞳。


一方、皆子山方面。

地表より出てる南を喰らった厄災。


其の毛並は(つや)やかで、厄災で無ければ或る意味で美しいとも思える程。

己が頭部を穿ち、痛々しいながら殺戮(さつりく)に長け伸びた牙、皮膚(ひふ)を割き生える三本爪(さんぼんつめ)を持つ四足の白狼獅子。


体躯にして、約20mの巨駆を持つ。


「お前は……」


目の前に在る厄災に左腕が反応する。

光る竜の両翼紋(りょうよくもん)、其れに対して臨戦態勢というのを崩すこと無い。

睨み合う白狼獅子(はくろうじし)と乖離の契約者。


「控エヨ」


突如として獅子の紡ぐ人語に動揺しながら、心の臓が止まりかける。

比喩ではなくそのままの意味で


「控エヨ、控エヨ、控エヨ」


ゆったりと一歩、また一歩。

心の臓が止まらぬように、と左手で無理に心臓が位置する胸を叩く此方の方へ獅子は近づき。


「意識ヲ砕キ、飛ベ」


自分をいとも容易く。

まるでサンドバッグの様に、数km離れた学園の正門前まで吹き飛ばし意識を強制的に世界より断絶した。


己に挑んできた愚者を殺した獅子は


「猛レ、殺セ、喰ラエ」


其の力を、京都内に在る五重塔にて。

まるで傲慢なる王の如くに活かし、新たな災いを産み落としていく。


そして日本海方面。


「……嘘」


絶望に打ちひしがれる契約者の姿。

対峙するは(おおい)なる黒鯨(こくげい)、眼では追えはするが。


されども体躯は塔の如く、実に700m。


(くず)れ落ちる膝。

絆を再確認した友人でさえ喰われ、己が非力さを感じ。

今、改めて脅威と厄災と呼ばれる存在を理解したのだから当たり前なのだが。


「逃げろ!」


デバイスから聞こえる声。

誰の声だったかは把握できずに、目の前で舞い上がった水飛沫(みずしぶき)が雨のように降る。


「お嬢さん、今死ぬ気かい?」


其処に現れた外套者(がいとうしゃ)、口元しか見えないが恐らく女性の誰か。


「……死ぬしかないでしょう」


眼は絶望に足を突っ込み掛けている


「約束をしたからかい?彼女が帰って戻ってくるはずだったのに、ね」


「見知らぬ貴女に何が分かるんですか」


外套にて顔を隠す誰かは一つ溜息(ためいき)()き捨て、其の右手には『(つるぎ)』を握る。

正確には剣と言うには余りにも、其処にあるかすら不確かなもので。


「qooooo───────!」


再び水飛沫を起こし跳ねる黒鯨の咆哮、此方を喰らわんするのではなく、口部(こうぶ)が開き顕になるのは巨大な銃身。

其れから放たれるは空を震わせる一撃。


人類利用型対人類エネルギー電磁砲(レールガン)


近年京都で話題と化していた海水浴に来た人間が行方不明になる。

通称、神隠し事件の犯人は厄災である黒鯨に利用されていたという訳である。


「発射までに時間がかかってちゃ駄目じゃにゃいか」


放たれた弾丸と薬莢(やっきょう)の様に捨てられる白骨死体。


都市一つを容易に沈めるほどの威力を持つ其れを、外套の彼女はその場からゆったりと浮遊し、音速以上弾丸が進む道へ立ち。

剣の刃を立て、正面より真っ直ぐと切断した。


「君にはまだ役割がある、後悔をしてはならない、嘆いてはならない、何度でも立ち上がりなさい」


「どうして……」


哀しみに満ちた其の眼を見て、外套を身に付ける彼女/彼は言う。


「きっと、立ち上がるのは辛いだろうけど本当の、物語の終わりが来るまで死んでは行けないよ」


と手を引き、撤退していく。

黒鯨もそれを追うことはなく、同じく白狼獅子も其の愚者(ぐしゃ)(しん)に死んだのかすら確認することは無く、厄災を産み落としていくのであった。


黒鯨、核内部。


「此処は?……オレはどうなったんだ」


暗く、黒く。

まるで己の居場所すら存在しないというような空間の中で、花火は目覚めた。


「寒い……」


其れは彼女の感じていた心そのもの。

それは劣等(れっとう)、周りよりも全てにおいて劣っている己には居場所すらないという意味そのもの。


「それは怠惰(たいだ)だ」


「お前は…誰だ…」


凍えそうな身体を抑える花火、その目の前に現れる小さな少女。

それは幼い頃の花火、彼女は周りよりも目立つ事が多かった。


彼女は周りよりも劣っていた。

だからこそ、彼女は彼女らしく出来るだけ周りに見てもらいたいという思いで友人と過ごしていた。


その根底には、居場所が欲しかったからという純粋な思いだけ。


それでも現実は非情であり、目立つ行動をするようになった彼女を。

彼女と過ごす者は家族、友人さえ彼女自身を周りの中の恥であると考え、排斥する様になっていった。


そして、遂に彼女の手は……


「それは怠惰だ、其の劣等そのものが怠惰の象徴だ」


朱色に染まっていた。


赤く、(あか)く、(あか)い。

誰かの腕を折った感覚、誰かを殴った感覚、ただ居場所が欲しかっただけだと言うのに何故か、という憎しみだけで、怒りだけで行動した自分。


それは怠惰である、と。

弾かれ続けるのを我慢し続ければ、この様な結果にはならなかったと責める自分自身である。


「……だから、何だ」


「だからお前はそうなんだ、お前はいつもそうだ、過去の悲惨(ひさん)さに(すが)り、今でも周りに居場所がないと今日の今日まで思ってきただろう」


図星とでも言っておくべきか。

花火の顔は日常で友人らと話していた様な、笑顔などは無く。

ただ、その顔は曇りに満ちて。


花火の視界はゆらぎ、怠惰(たいだ)の雪へと沈む。

一方で、新京都FL学園前。


「ここに居たか」


蒼実の手を引き、災獄の屍や血液に濡れた学園前まで撤退して来た外套を着用する誰かと蒼実。


「彼は、生きてるんですか」


「生きているよ、息はしていないけれど無理矢理、世界から意識を切られただけだそうだし」


正門前にて人形の様に横たわる三神を見て、二人は口数少ないものの、そんな言葉を交わしながら三神を肩に背負うような形で回収し、学園内へと撤退していく二人。


黒鯨による建造物群破壊。

白狼獅子による、災獄量産。

厄災来たりて、空赤きに染る。


八卿議会本部、人ノ理ノ間。


「クルアーン」


「はい、何でしょうか、ハデス」


強大な厄災の訪れの兆しとも言える新京都の赤き空を水晶より観測する議会長へ、ずいと近づき堂々と、己の要望を告げる天の頂に居た銀狼。


「オレを行かせろ」


「貴方には待機命令を命じたはずですよ?」


「無理だ、無駄だ、意味が無い」


暫しの沈黙と恐らくの瞬きの後。

クルアーンの眼色が変わる、澄み渡る空を表す様な色から赤の混ざり合った紫へ。


「……これ以上、敗北は認められないと言っているのですよ?ハデス」


「ハデスさん、控えてください」


言い争いとも言える状況を仲裁するように現れた剣士(けんし)

その風貌(ふうぼう)は緩く、暖かい風の様なもので中性的ながら、声質は男性と断定できる。


八卿議会内での与えられた卿名は秩序卿(ちつじょきょう)


「アイオーン、貴様、今更何をしに来た」


「今更なんて酷いですね、ハデスさんは」


その彼の糸目は人を救う英雄のものか。

それとも、己が欲のために動く怪物のものか。


to be continued……。

「次回予告」


撤退する二人の契約者。

神の天罰の如く、放たれる黒鯨の一撃。

地平を埋め尽くす王を気取る獅子の災い共。

絶望の演奏会。


それでも、友を諦められない者。

それでも、厄災を殺すもの。


目的が違えど、されども戦友。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第二十九話:意地と維持


「虚飾・再誕」

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