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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第二十七話:囮作戦

どうも、皆様更新が遅れました。

作家になりたいハルトです。


此の度は楽しみにされていた皆様にご迷惑をおかけして、申し訳ありません。精神模様の方は取り敢えず回復し続きが書ける程度になりました。


ただ活動報告のcharacters fileや世界観用語解説の方はもう少し、時間が掛かりそうです。

其方はお待ちいただければ、と思います。


では、第二十七話の方、どうぞ。

私は見知らぬベッドの上、見知らぬ天井で目覚め、地上で言う保健室(ほけんしつ)で聞いたことも無い(こえ)を聞く。


「この天止(てんし)は?」


「恐らく神の娘でしょう」


会話を行う二人の人間(ヒト)

其の空気(くうき)()り詰めていて、気の置けない状況(じょうきょう)であることは、目が覚めた私にも()ぐに読み取ることが出来た。


「目が覚めた?」


「貴女は……」


其の()

(ひど)く傷の多い蒼き瞳の少女、視覚情報(しかくじょうほう)から肉体年齢(にくたいねんれい)においては私とほぼ同格。


「……そうですね、どこから話せば良いものか」


「俺が話そう」


蒼き(ひとみ)を持つ彼女(かのじょ)の背後より現れた左腕(ひだりうで)包帯(ほうたい)を巻いた紅き瞳に、黒髪が目立つ男。


「約二時間前、お前は空から落ちて来て其れを俺と其処(そこ)の男が回収し、自分達はWOから遠征という名目で此処、FLに出向いている」


大まかでありながら此処までの経緯(けいい)を教えられ、その中で指を指し乱雑(らんざつ)に紹介される白髪のもう一人の男。


成程(なるほど)、その中で災獄による突如(とつじょ)としての侵攻、と」


「そういう事だ、それで今はお前が落ちて来たと同時に、何故か凶暴化(きょうぼうか)を始めた災獄の対処(たいしょ)を各部隊から出撃できる限りの三人で交代しながら行っている」


私が見る限りで、傷が多いのはそういう事だろう。


あの災獄の口から放たれた詠唱(えいしょう)二工程(ふたこうてい)のみの私が受けた熱か、はたまた雷撃だったか解らぬ程の激痛(げきつう)


その痛みはまだじんなりと残っていて、まるで身体を侵食(しんしょく)する病の(たぐい)の様。

私の心の奥深くより恐怖に近しい感情(こころ)()き立たせてくるのに加えて、地平に蔓延っていた災獄の凶暴化まで行えるだけの圧倒的な力。


「……(きみ)の名前は?」


そういえば名を聞くのを、と身体を起こした私は目の前の男に名を問う。


「三神 暁」


「そうか……まさか、此処で見つかるとは」


三神、乖離(かいり)契約者(けいやくしゃ)

神もとい父には悪いが、此奴は此処で始末しなければならない……何しろ、其の左腕、乖離といい。


今、人類の中で最も脅威としての可能性が考えられるのだから、と話を終え背を向けた三神の背後を狙い。


「私が断罪(だんざい)する」


光を剣の形に変え、斬り捨てんと飛び上がらんとする……が突然と痛みが此方の翼だったものへと(ほとばしり)り、(あし)がふいに止まる。


「…ッ…」


「自分を、殺そうとしたのか?」


其の気配に数秒遅れ、気づき振り向いた三神。


「嗚呼、そうだとも、神である父はお前に可能性とやらを()けてはいるが、娘である私はお前の存在自体が信用(しんよう)に値しないのだから」


保健室での緊張状態(きんちょうじょうたい)、一人の天止に対して蒼実、白刃、三神という三人の契約者、劣勢(れっせい)ということは見れば分かるものである。


「……分かった、目の前の脅威となりうる可能性よりも君達に協力した方で、利害の一致としよう」


周囲を確認した後、ジンジンと痛む翼を他所にベッドから立ち上がり蒼実の方へと。


「私の名はアーサー・E・マキナ、父であるゼウス・E・マキナの娘だ、よろしく頼む」


この世のものとは思えぬほど美しく白い右手を伸ばして、握手を交わし。


場面はFL学園内オペレーションルームへと変わる。


「……皆、居るな」


防衛線の方は残る第二、第三部隊へと託されオペレーションルームでは二つの第一部隊に加え、天止との大規模作戦の立案が行われようとしていた。


「私が天界より神より賜った情報としては、三つ、新京都から元日本海側方面に獄門(ゲート)を開き続ける巨大な災獄の反応」


「新京都、元滋賀付近の廃墟国境にある過去、皆子山と呼ばれた地中浅くに同じく災獄の反応」


「そして、この大規模な侵攻の指揮は私が交戦した……黒縄之獄(こくじょうのごく)無雲(むうん)尼剌部陀(にらぶだ)が執っているというのが現状だ」


沈黙は数秒だったか、数分だったか。

此処、二ヶ月で新京都、新東京という著名な三学園のある都市国家の内、二つ。


災獄による侵攻は大規模且つ確実に、人類を(ほろ)ぼしに来ているという意思さえ感じられるものとなった。


脅威(きょうい)を忘れる。


それ今の日本では許されざる事であり、平和と呼ばれる偽りのみで構成された沼に浸かっていては行けないのを、今集まった契約者らは感じた。


「……それで私から提案がある、囮を使うという安直な作戦だ、必要人数は二人」


「其れは損害的な意味で保証ができるのか?、アーサー」


FLの教官が尋ねる。


最低でも二人、その二人が失われたのであれば其の被害は、いつかの人類滅亡(じんるいめつぼう)(つな)がる可能性がある。

だからこそ、此の作戦を提案する覚悟(かくご)保証(ほしょう)が必要である、と。


「嗚呼、神である父に頼む事が出来たならば天止を代わりに二人、此方か其方のWOの所属として地上に送ろう」


代わり、代替品(だいたいひん)

契約者としての道を選んだ生徒らは元よりその覚悟が決まっているか、決まらずともそうするしかないと割り切る者ばかり。


ただ、それを非情と感じるものも一定数は居る。


「……皆、覚悟は決めているらしい」


眼、単純ではあるが其の二人の会話を聞いて覚悟を決めたものも居る。


作戦概要(さくせんがいよう)はこうだ、二人の契約者が囮、其の二人を襲う災獄の(つゆ)(はら)いを行う二人の契約者を巨大な二つの災獄反応ヘ向かわせ。


そして囮が、FLより支給される対災獄用小型運動(たいさいごくようこがたうんどう)エネルギー弾を承器を利用し発射、契約者諸共破壊する。

囮とは形だけの犠牲者である。


誰一人の異論も無く、作戦決定後。

いつの間にか時間はP.M.6:00、夕日が外に増え続け蔓延(はびこ)る災獄と逃げきれなかった人達の血。


そして、今も(なお)生きて避難を終えた人達を守る勇姿(ゆうし)らの姿を照らす。


「……外は、酷い有様だな」


小さく教室の中で、花火が呟いた。

崩れた建物、一つの侵攻のみで瓦解(がかい)したコンクリートの地面。


「花火……」


「……オレ、昔はケッコー悪いことやっててアオと会うまで、誰も信用なんかできなくて、俺の居場所なんかないって思っててさ」


「家も帰りづらかったし、でもアオのおかげで今オレの居場所が会って、今ここで生きてて」


告解。

友への感謝、もしも今回の侵攻で生きていられたのなら、とまるで離を告げる物のように。


「まさか」


「そんでさ、その……オレ」


「駄目、そんなのは許せない」


長年という程でも無くて、それでも確かな絆がある中で今更、行かせられないし行かせたくない蒼実。


それでも確かな絆があるから、皆の為に誰かの為に、何者にも変え難い彼女の為。

決めた覚悟を示さんとする花火。


二人の眼は、違うものでありながら近しいものではある。

違いと言えば、唯一支えを失えば崩れそうな者と誰かに可能性を賭け見つけた者だろう。


「分かってるって、タイチョー命令だろ?」


「帰ってきて、絶対に死に逃げなんて許さない」


頬を赤く染め涙ぐむ彼女の眼を見て、花火は静かに抱きしめる。


「おう!」


その返事が最後の会話になるとも知らずに。

場面は変わり、学園正門玄関内のベンチにて。


レーション補給中の北風と相も変わらずオドオドして防衛線から戻ってきたばかりの御珠。


「あっ、御珠ちゃん」


「ひょえっ!?北風さん」


隠れた友人と言う奴か、何処か親しさを感じる二人。


「お疲れ様」


「ええ、と…はい…その」


何か言いたげな御珠の顔を察する北風は、手を引きFLの屋上へと向かう。


「……あの、本当に行くんですか?」


「海の方のは、自分の承器の方が適性あるから」


何時何処で作戦を盗み聞きしていたのか等は聞きはしないものの。

まさか教官から任される所まで知ってるとは思わなかった、と言った顔をしながら平静を装う北風。


そう、囮の二人目は北風 南に任された。


「じゃ、じゃあ帰ってくるのを約束してください……」


「……うん、解った」


小さな友情の萌芽(ほうが)、そんな目覚めを容赦無く切り裂くであろう未来は一体どちらに傾くのか。


to be continued……。

「次回予告」


目覚めるは二つの厄災。

黒き巨躯、怠惰の鯨。

白き体躯、傲慢の獅子。


傲慢なる王の如く/(ヒト)を喰らう獣の様に。

怠惰に動く鯨の如く/(ハエ)を潰す人の様に。


それは罪であり、罰である。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第二十八話:産声(こえ)咆吼(こえ)


「其の"コエ"は、誰の悲鳴、誰の咆哮」

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