第二十五話:実践訓練【後編】
どうも皆様、こんばんは。
作家になりたいハルトと申します、最近はできるだけ6日ペースの更新を理想としてやらせてもらっています。
本編の更新数分前に、characters file、世界観用語解説の方も更新致しましたので是非とも其方の方も見て頂けたら嬉しさの余り号泣してしまいます、どうぞよろしくお願い致します。
では本編の方、どうぞ。
「第二戦、開始!」
第一戦目は引き分けという結果になり、第二戦の開始が十五分程の休憩が挟まれた後に開始される。
「よっ、白刃 秤だっけ?」
「嗚呼、間違っていない、改めて俺の名は白刃 秤、お嬢の従者であり逆壬人承器開発会社で雇われているバイトだ」
「へぇ、そうか、つまり桜花の親友な訳だ」
ニヤニヤと対峙する男の顔を其の赤き瞳で視認する花火。
其の笑みを浮かべる様子からは、からかいを込めた様な物も伺える。
「まさか、お嬢とそういう関係だと思っている訳では無いだろうな」
「まさか!堅物そうなお前じゃ無理無理」
「サラッと失礼なことを言うな、君は」
怒りという程では無いものの、そのからかいに少しだけの不快感を覚えながら己を律し、我を保つ其の姿勢は騎士の如く。
誠実さを感じられるとも、柔軟な思考を取れぬ愚直さを持ち合わせているとも言えよう。
「さて、精々十分は耐えてくれよ」
「はぁ?女だからって舐めるんじゃねーぞ」
両者は少しの距離を取り離れ、己の承器を顕現。
花火の腕へ装着され、ボクサーの様に左手で顔を隠し右手を前へ両拳型承器。
白刃が槍の様に、右手を柄の端に左手を柄の直中を握り構えるのは薙刀型承器。
「端から」
「全力だ!」
先手は白刃。
薙刀の長所であるリーチを活かし、相手を転ばせて喉に刃を突き付けることで即座決着を付けん、と思考し横薙ぎに相手の脛を狙う事で痛恨を狙わんとし振り抜いていく。
「甘ぇ!」
距離がある、相手の目線という点から相手へと駆け出しながら狙いを予測。
花火自身の鍛え込まれた身体能力の跳躍によって足払いは軽々と回避。
「せェッ……やァッ!」
最低限の跳躍から放たれる相手の顔面への右飛び膝蹴り、殴る蹴る等の体武術においては圧倒的花火が有利兼攻勢に出られる程の強さを持つが……。
「遅く、甘いのは其方だ」
「何!?」
瞬間移動。
そういうのが正しいだろうか、周りから見ていた連中もそれに気づいていた。
契約族顕現する際にほぼ全ての契約者が行う呼称を口にする、という行為を無しにして背後への移動の"様なもの"を行った。
「再生される」
起こった出来事は、周りの人物は気付く事は無いと言うよりも理解できない状態だった。
単に背後へ移動したというだけではなく、先に記録された正面からの足払い。
同時に本人による背後からの薙刀の後方についている石突を用いて、項を狙った突打撃。
「ぐッ…てんめ…ぇ!」
「これも戦略の一つだ、改めて……俺の契約族の名はトート、最大三十の行動を記録し、それら行動全てを再生する能力を持つ」
例えばの話、彼が一つの対象へ三十回以内に360度全方向より殴る蹴るなどの行動を起こしたとして。
計三十回の攻撃はトートによって再生され、其の場に現象として顕現するという、完璧主義に近い彼にとっては最高に相性の良い契約族となっている訳である。
瞬間移動を行う契約族ではなく、記録を再生する契約族。
「く……そ」
花火の気絶という形での二試合目は終了。
まさかの試合時間は、五分。
花火という武を身に付け前線に立つ相手ではなく。
戦いにおいての指揮官的立ち位置、つまり戦術家の類であれば白刃は負けていたであろう。
「だが良い動きではあった、今後に役立つ知識を得ることが出来た、礼を言う」
気絶した花火へ敬意を表しつつ承器を納め、白刃は次の試合の観客席と言える方へと歩いていき……。
その時だったか、街中に警告の意を伝える甲高いサイレンが鳴り響く。
「指揮官、街中に災獄が?」
「どうやらその様だ、WOの契約者らと共に総員出撃準備、カタパルトデッキへ急げ!」
「了解!」
場面は変わり、京都住民街。
「Fsruuuuuu──────」
小型の災獄が複数体に加え、それらを指揮する立場にあると思わしい破級位の災獄が二体。
そして
「ふっ…ふふふ…嗚呼!これ程までの喜劇が私の作品となると考えると震えが止まらない!」
両手で肩と思わしき其れを押さえながら、住民街を進行する災獄の群れを眺め、嬉嬉として腰をくねくねと揺らす厄災か一柱。
「にしても頞部陀め、あの程度の殲滅力の人間に奪取されてしまうなどとゴンゴドウラン、ユダンテンテキと言う奴だな」
四字熟語さえ間違う其の浅はかな知識量。
名を黒縄之獄、無雲・尼剌部陀。
八転獄道の二柱目。
高く、高く人には観測不可能な宙より下へ眼を向け、地平では容易く殲滅される小型の災獄。
「さて、喜劇の前の序曲を始めよう、我が子らの目覚めはまだだ」
「君も、まだ速いんじゃないの?出るのがさ」
尼剌部陀の背後に"立った"外套の者。
宙にて対峙する人の形をとった二体の存在。
体現者とも、なんと形容すべき様子か、一触即発などと軽い四字で言えるそれでは無い。
「……何者だ」
「そうだね、君たちと"同じ"」
振り向く剌部陀、視線が合い両者の間にて捻れる空間。
人としての気迫や強さの圧に非ず、単純な力比べという訳でもなく。
空間を捻り削るは尼剌部陀、彼女/彼とも呼ぶべき外套者、両者の眼による波である。
「成程……貴様、今此処で殺すぞ」
「私が今回の件へ介入するかは分からない、世界次第だよ」
外套者と厄災の対話は、それきりであった。
"介入"するかは世界次第であり、彼女/彼にとってそれ以外は行動の理念に反し。
尼剌部陀の方も、これより始まる喜劇を指揮する指揮者として観覧する立場でもある。
つまり、俗に言う彼らにとっての此処での死合は互いの為にならないと言う奴に値する。
その為。
「去れ、塊よ、我が喜劇を穢すな」
「君こそ、さっさと帰って"王"にでも怒られちゃえば良いじゃないか、下手をすれば君だって死ぬかもしれないよ?」
「死など我々にとっては、微塵なカスに過ぎん、所詮は死、恐ろしいなどとも考えぬ」
確かに、と彼/彼女は納得。
特にこれと言っての敵対行動をするまでも無く、まるで存在自体が幻覚、幻聴の類の様に掻き消え。
静かに、厄災の訪れを告げる。
真の厄災の序曲としての、所詮は前座に過ぎず。
されど、それに気付くものは居ない。
この街を渦巻く災いの渦は、畝り捻れ奔流と化して無間へ誘う闇と変わる。
「さて……今こそ始めよう、太陽の焔は揺らぎ暖かき春風は掻き消え、恐怖と絶望のみが世界を包む最恐の喜劇を!」
深海、地平の底よりの咆吼。
人類という種の耳に届かぬ、遠く遠く、されど確実に厄災と化すであろうモノ。
彼にとっての喜劇、彼らにとっての悲劇。
そして世界にとっての終わりの始まり。
「この興奮なんと形容すべきか!……嬉しいと?それとも悲しいか?美麗というか?綺麗かなぁ……嗚呼!言の葉とはなんともありふれている!醜いな!やはり滅するべきだ!」
狂っていると言うべきなのだ。
其の狂い様は、まさに獄の名に相応しい。
「ほう、天止の小娘……この私に挑む、と?」
宙の上の上、天界があるであろう方より射られる己へ向けた殺意の気配。
放たれる光の矢、一本ではなく何重、幾重にも重なり一に見える音速射。
当然の様に音を置き去りに宙さえ穿ち、かの原初にも届きうる可能性の奇跡。
指揮者気取りの尼剌部陀は、右手で光の矢をいとも容易く掴み取り握り砕く。
「貴方は人類の脅威です、父である"神"の命を受け娘である私が貴方を殺します」
「名は?」
「脅威に名を名乗る必要はありません」
宙にて始まる神の娘と獄の名を持つ最凶。
地平での京都攻防戦。
始まりの鐘の音は、今。
to be continued……。
「次回予告」
麗しきかな、喜劇の連鎖。
人が喰らわれ、人が死に、人が嘆き、人が怒る。
許されぬ下らぬ眼を持つ、貴様の存在。
私が正し、私が裁き、私が倒し、私が滅す。
「砕くことなかれ、我が喜劇、嗚呼、神の娘よ。」
「否、砕く、貴様は許さぬ生かさぬ叩き潰す」
真逆、対比。
裁きを下す天の使い。
喜劇の前の余興を楽しむ尼剌部陀。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第二十六話:天国、地獄、大地獄
「私が殺し、私が正し、私が裁き、私が滅す、そして悪は掻き消え正義だけがこの世に残る」




