第二十一話:第三部隊の休暇
どうも、皆様、更新が遅れて申し訳ありません
新人小説家のハルトと申します。
今回の話で休暇シリーズ終了となり、次回から始まるのは第二章となっております。
皆様、今後とも「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」をよろしくお願いします。
「ねぇ見た?」
「見た見た!」
街中、彼の近くを過ぎ去っていく一般人全てが彼の方を何度か見てザワザワと声を立てている。
神威原コーポレーション、その社長の息子にして御曹司である神威原 嵐乃丞。
その風貌は、街を歩く知らぬ聞かぬの一般人を男だろうが女だろうが此方へ振り向かせる程のイケメンである。
「めっっちゃ、あの子可愛くね?」
「って、アレじゃん、ナンタラ……コーポレーションの社長の娘じゃなかった?」
その隣を歩くのは、似通った顔をした神威原の社長の娘で彼の妹である神威原 傘守。
同じく男、女に関わらず射止めるほどの美貌を持つ。
特に兄妹仲は悪くは無いが、滅多に二人で出かけることは無く。
何故、二人揃って街を歩くのかと聞かれれば数刻前に遡り……。
「暇だね」
「だね」
休暇を貰い、東京にある一つ目の邸宅でゴロゴロとしていた兄妹は暇を持て余していた。
そんな時に窓から見えたのが、彼である、そう三神 暁。
蒼御 凍花救出作戦時に相当数の災獄を殲滅、中型の災獄ヘカトンケイル、そして巨大な災獄?のヴァニティですら伏した友人。
彼と彼女は特に彼に友人としての真摯な好意を向けていて、彼を見かければ走って追いかけるほどである……ので。
「あ、三神」
「何処!?何処にいる?何処に!」
「うるさい、兄、そこ」
窓から傘守は指をさした瞬間。
兄である嵐乃丞は直ぐ様、残像が残るかという速さで部屋着を洗濯カゴに脱ぎ捨てては、外出用の服に着替えれば既に外出洋服に着替えていた傘守を背に背負い。
外へ、自室のある2階窓から飛び出した。
「三神っ!」
「やっほー」
やる気無さげなお嬢様である傘守と、やる気まみれの嵐乃丞とその姿を見てギョッと驚き逃走を図る暁の丸一日を掛けた逃走劇の始まり、という訳である。
「居ないね、三神」
「居ないな、三神」
兄妹二人して、街中を散策するその姿はテレビでも有名である為に一般人からすれば、物凄い豪華なそれであるのだ、と散策する二人の前に。
「何してるの?アナタ達」
「あ、ルシアちゃん」
「お、ルシア」
ルシア・エスペランタ・A・アテルマ。
黙示録戦争に来た避難民で、災獄に人一倍の怨みを持つ子である。
東京都内の商店街内に有名企業の社長の息子、娘と有名な恋愛ドラマの主演女優が居るという豪華どころの話では、というかテレビの撮影かと思う位のそれではある。
が、無論の事、彼と彼女プラス一人も巻き込まれて探すのは。
「なんで私まで」
「なんやかんやで、ルシアちゃんも三神の事気になるタイプでしょ」
「というか、行動というか話しかけ方というか、色々見てればわかるよなぁ?」
一つの淡白気味の溜息を着いて、結局の事情説明の後、三神探しに巻き込まれるルシア。
……確かに、気になりはする。
彼女もとい彼とは違う形。
左腕の存在、ヴァニティとの戦いの際に見せたあの紅の黄昏、契約族であり半災獄であるバハムート、何故彼の伝承器が錆びて壊れかけなのか、ヘカトンケイルとの戦いでも見せていた黄昏の粒子。
……謎が多すぎて、今の私では手に負える存在ではない、そんなこんなで頭を回す私を見て傘守は。
「どしたの、また考え事?」
「……まぁ、そんな所」
彼女なりに心配してくれ、休日らしい何気ない会話を続け私たちは暁を探す。
商店街内に逃げて来たようで、中々これまた見つからない、何よりも主婦が多い。
こんなに人が居る中で、人一人を探すというのは。
その頃、三神 暁はと言えば刃を交えていた。
音も聞こえぬ無音の空間内、対峙するのはローブで顔を隠した誰か、相手から放たれる疾風の如く剣戟は速く重く鋭いものだ。
「ちぃ…っ…」
「…………」
受けるに精一杯を賭けて、致命傷を何とか避けているという状態である。
しかも相手は執拗に己が左腕を狙ってくる、何なのか、そう思った矢先。
自分は右手に握る承器をそこまでの段取りを一撃目より狙っていたかのように容易く、相手の地の構えより放たれた逆袈裟に対応が遅れ、無様にも承器を弾き飛ばされる。
一つの瞬きの隙を逃さぬかのように、喉元に突き付けられる刃、刃の形状からして西洋剣の類。
何処かで見たはずの、何処かで習ったはずの、何処かで……ハッキリと思い出す記憶の奥深く、幼い頃だったか。
己を護ってくれた一条の風と剣、教え込まれた其の技術、己を育てたミリアス・アールヴの剣術それそのままだった。
何故なのか、動揺を隠せない、あの作戦の後、埋葬には参加出来ずともルシファーから遺骨の入った箱もこの手で受け取り、この手で埋めてきた。
今になって亡霊にでもなって出てきたつもりか、今になって何をしに来たのか。
「っ……」
少しだけ胸の中にある痒い物を、押さえながらまるで煙を払う様、相手の剣を弾くように左腕を振れば。
それは元から居なかったか、はたまた幻覚だったか、小さな光の粒になって育ての親の姿形を模した存在は消えた。
それに安堵して幽霊でも、亡霊でも見たような顔をして呆然と足から崩れる自分を支えたのは
「こんなとこに居たのか」
「ようやく見つけた〜」
「全く……」
有名企業の王子と姫、それにドラマの有名子役であり女優の第三部隊。
それ以降の記憶はなく、気絶したのか、いつの間にやら見知らぬ天井というか学園内の保健室に運ばれた。
休日だと言うのに他の部隊の奴に迷惑をかけるな、と保健室の天止の先生には少し注意された。
なんやかんやあり、各々が各々の休日を過ごしていた…第一部隊も、第二部隊も第三部隊も。
唯一つ、あの幻覚か、それとも本当にそこに居た育ての親の存在。
そして蒼実救出作戦時に出現した白き竜、脳裏に焼き付き出てた言葉、左腕に刻まれた両翼紋。
災獄という存在、天止という存在についても……世界は必ず変革の刻を迫られる。
天止という味方が敵になるかもしれない、人との争いがまた起きるかもしれない、災獄が何者か理解した瞬間、其の時は世界そのものが変わるかもしれない。
しれない、という可能性を持って生きなければならない。
皆がそれを抱き生きて戦う、無論の事、自分も、いつか訪れる平穏な日々の為に、そして欠如した記憶を取り戻す為にも。
To Be Continued……。
「次回予告」
季節は夏に入る少し前、6月。
自分達は、南方への訓練を兼ねての遠征を行う事となった。
南方にある学園。
強力な災獄の出現報告が最近多くなってきていると、新東京都内でも噂の学園でもある。
約一ヶ月にも及ぶ訓練遠征。
楽しみでもありながら、胸の内に何か嫌な予感がしないことも無い。
ざわめきを感じながら、揺らり揺られて。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第二十二話:新たなる地へ。
「楽しみではあるけれど、少しだけ嫌な予感がするんだ」




