第二十話:夜明け/そして陽はまた……
どうも皆様、こんばんは。
そしてここまでのご愛読のこと、誠にありがとうございます、新人小説家のハルトと申す者です。
第一章、最終話となる第二十話の更新となります、いやぁ何やかんやありつつ漸くとなりますね、はい。
正直、自分でここまで続けられるなんてのは思ってもおらず途中で挫折してしまうものだと感じていました、ですが皆様の応援もあり此処まで何とかやりきることが出来ました。
ありがたい限りですね、はい、まだ終わりませんよ、次回は合間の外伝や登場人物の掘り下げを行った後に第二章のスタートとなりますので、もっと皆様に「彼は誰の紅、蒼く咲く凍りの花」という物語であり世界について知ってもらいたいと思っています。
では、第二十話、どうぞ。
静かに広がる波、それは虚飾から解き放たれた人々にさえ見えるものだった。
空に拡がっているのは無雲の荒くも優しい紅き憤怒の空と、雲に包まれ神々しさがありながら何も無い暗闇だけの黒き虚飾の空。
避難民でいっぱいの体育技場を抜け出す、名も知れぬ二人の子供。
眠れぬ少年と少女は、空を駆け抜ける紅き光を学園内から目撃する。
その光はとても温かく、だが怒りに満ちたものであり、少なからず其の少年と少女からすれば、テレビの中に映る英雄に近しいものであったのだ。
その頃、月浮かぶ真夜中の空では。
「キサマ、キサマ、キサマァァァァァァ!!」
あと少しで虚飾で世界が終わらんとする所を、邪魔され逆に押されかけている竜が咆哮を上げ、黄昏と紅に包まれ駆け抜ける青年へと光を幾度も放っていた。
「虚飾は、お前は世界に必要ない、そして……さっさと、其の胸ン中に閉じ込めてる奴を返せ」
光を真正面より力の根源とも言える左拳を荒々しく振るい砕き、へし折り、叩き割っていく。
一撃一撃が空気を震わせ、そして憤怒の篭もるものだ、強く拳を振るう度。
更に紅く、黄昏の光は強くなると共に翼を羽ばたかせ接近してくる巨大な白竜とぶつかり合う拳。
幾ら鮮血が飛び出そうが、幾ら骨が折れ、筋肉を潰されようが、ただひたすらに核に要る彼奴を取り戻すまで、と。
「落ちろォッ────!」
紅き黄昏の光を受けて、空を蹴り相手の腹部と思わしき巨大化した身体へと拳を叩き込み、白き虚飾はその一撃を受け、揺らぐ巨体はゆっくりと地へ堕ち。
建物の瓦礫は飛び弾け、堕ちた巨体が地を割り、地平は断崖と化して。
「くっ……」
虚飾の堕ちた衝撃にて発生した暴風を受けながら、その戦いの結末を、蒼実は見た。
巨大な竜の上に立つ、先の英雄か、はたまた先の厄災になりうる可能性を秘めた青年の姿を。
そんな事も気に止める暇もなく、倒れ伏した竜は再度、不死の権能を用いて蘇り胴の上にズカズカと立つ青年を殺さんと胴を揺らし破れ折れた翼を広げ、光を放たんとするが。
「もう、休め」
行動を起こすよりも速く、彼は異形となる左腕にて虚飾の中心部に在る核を穿ち何かを掴んだ事を確認すれば、其れを思い切り引き抜いて。
その先に見えたのは、彼女の一番の友である花火の姿であった。
ボロボロになった制服姿で気絶しているのか、はたまた疲れで眠っているのか、瞼を閉じ寝息の様なものを立てている。
「花火……花火!」
巨大な竜の遺骸を乗り越え、異形の青年に救られた彼女をしっかりと抱き留めて、泣く。
ひたすらに泣く、離れて欲しくないもの、手放したくないものを握りしめ。
何処か、いつか平穏な日々を謳歌ていた幼き日の彼女の様に共に、世界から虚飾の渦は消え去って行った。
そして作戦の時間制限である陽は静かに昇り、ゆっくりと新たなる始まりと翼の終わりを告げる。
「……鎮魂歌 終幕」
紅黄昏の光は帰依、だるんと下がった包帯とボロボロの身体。
鎮魂歌の終幕、その後、静かにデバイスから風見鶏 都の声がする。
「皆さん、お疲れ様でした」
「よくやった皆。
そしてすまない、暁、またお前に……」
学園長のその言葉に、少しの沈黙と共に自分は静かに言葉を返す。
「今はいい、何とか生きて帰れただけ儲けものだろ」
「そうだな、また後で話そう。
取り敢えず作戦終了を確認した、第二部隊、第三部隊を向かわせる為、待機とする」
作戦は終わった、黄昏とその仲間たちにより。
そして蒼実 凍花はデバイスでの通信終了と共に涙を拭い、花火を子を寝かせる母のように膝に乗せながら。
「……三神 暁」
何処か硬い表情で、それでも何処か温かさを感じる声で。
「なんだ」
「私は貴方の事を誤解していた、先ず謝ります、ごめんなさい、それと今回の作戦で私の友人である花火を……」
はァァァ〜、と異形の腕で額を抱えながら大きな溜息を着けば。
「堅苦しい」
何処か疲労と面倒くささを顕にしたかのような顔で一つ、そう告げる。
「えっ」
「面倒臭い、堅苦しい、折角色々と片が着いたというのにお前は、すぐそうやって堅苦しい言葉を並べ立てては人の心を掻き乱す」
「で、でも……」
「でも、だっても、クソッタレもない、要は信頼を置いたというのならそう言えば……」
自分は少しのイラつきというのを覚えながら、そう言葉に淡々と鋭い刃を振るうように話していけば、珍しくというか。
急にと言うか、蒼実は目を涙ぐませながら遂にはポロポロ泣き出した。
「いや、待て、何故泣く!?」
この後、聞いた事によれば余りに急に強く言われるもんで感情の起伏というのを起こしてしまったらしい。
何故か、北風やれ、三日月の姉妹やれ、花火にもオペレーターである風見鶏にも、他の部隊の連中からもボコボコに怒られたのは少し先の話である。
数分後に他の部隊の連中と北風、黒が迎えに来た。
その後、学園まで無事、誰も死亡すること無く帰ってきた皆は治療や休暇、病院での入院を命じられ一週間ほどが過ぎた。
街は修復途中だ、それでも直ってきてはいる。
何せ天止や他の種族の連携などの話もあるが相当な大規模作戦、しかも少数部隊での防衛や討伐作戦と来たので普通の事だろう。
蒼実 凍花は幸いか、傷などが余り深くなく項付近の"傷"も、作戦中や誘拐時に受けた傷と共に治療され精神的な方も相当な回復を見せている。
花火 蓮華は傷が深かった様で、暫く意識は無かったものの流石のタフネスか、戦いから三日で意識を取り戻したそうだ。
意識を取り戻した直後「凍花は何処だ!?」と大騒ぎで煩かったらしい。
北風は小型の災獄に着けられた傷が多く、入院とまでは行かなかったが傷が治療された後は疲弊した心身の為の休暇を命じられたそうだ。
本人曰く「修復中の街とはいえ、皆が居ないと余り出ても楽しくない」とかなんとか。
三日月の姉妹は二人とも無事だったそう。
気絶していたとはいえ、大きく頭を打ったので意識の混迷はあったのだとか。
そして、自分は。
「……バハムート」
病院の一室。
必死に修復される街を観て、静かに己の契約した竜の名を呼ぶ。
「何だ、暁」
「最近、何だか変な感じがする」
「変な感じ、とは?」
言葉には言い表せない"空"。
そう静かに告げ、バハムートは人形のような姿であれど自分の胸の辺りを小さな爪先で突く。
「罪を背負ったのは貴様だ、自業自得だ、暁、貴様は段々と壊れて行く、その腕の侵食も必ず進む、虚飾と憤怒を受け継いだ貴様はいつか……」
「言われなくても、わかっている」
「ならば言うな、貴様は間抜けだ、阿呆だ、非情になれば良かったというものを」
そんな会話の以前、あの戦いの一日後。
自分は、虚飾の遺骸を確認しに学園長と学園前まで来ていた。
「……暁」
「何だ、学園長」
俗に言うメディアからの記者会見の後、スーツ姿の学園長と共に巨大な竜の遺骸を見つめる自分。
「……やめてくれ、ルシファーでいい」
「ならルシファー、母さんは死んだな」
ルシファーはその言葉を聞きたくはなかったかのように目を瞑る。
育ての親であるミリアス・アールヴは喫茶ミカミの崩落に巻き込まれて死んだそうで、この後も些細なものだが葬式が控えてるそうで、自分は傷の治療が控えている為参加出来ない。
「…知っていたのか…」
「悲しい、が……何故か泣けない、胸の内に湧くのは怒りばかりだ、どうして助けてやれなかったのか、どうしてもっとちゃんと話が出来なかったのか」
無意識の内に、自分は眼から落ちた塩っぽい液体を気にも留めることは無く、淡々と話していく。
「……悲しいと言うことなのか?これが」
「今回の戦いでお前は怒りという感情を覚えた、それが戦いの最中で、お前が成長するのは嫌なものだな…ミリアスもきっと…暁?」
「これが悲しいということならば、お前の言っていた虚飾というのは何が苦しくて何が辛くて、どうして」
静かな怒りを覚えながら、無情の青年は遺骸へと近づき左手を伸ばした瞬間。
遺骸は一瞬にして灰となり消滅、彼の左腕には白く、純白な、異形と化した腕に不相応で似合わぬ竜の両翼紋が刻まれるのであった。
「次回予告」
夜明けは訪れ、一つ目の罪は封印された。
彼らに訪れる一時の平和と休息。
休暇の命を受け、街を歩く第一部隊の面々。
戦闘訓練を欠かすことは無い第二部隊。
各々の時間を過ごす第三部隊。
少しの休息の中で、拡がる対話と絆。
ほんの少しだけ、今は彼らに平穏と安寧を。
次回
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第二十.五話:それぞれの休暇【第一部隊編】
【次章予告】
燃ゆる炎、吹き荒れる南の風。
立ち塞がる災い。
虚飾、憤怒、そして新たなる地を舞台に集う。
傲慢なる地平の王者。
怠惰を喰らう海原の王者。
罪へ仇なすは、目覚めし焔と風か。
そして降臨せし獄の柱、下されし八の議の使者。
闘い、越えろ、己の過去を砕く為に。
「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」
第二章:焔は燃ゆる北の風を受けて/南方訓練遠征編
「焔は目覚め、北風は吹き荒れる」




