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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
22/60

第十九話:覚醒する左腕/憤怒(イラ) 対(バーサス) 虚飾(ヴァニティ)

どうも皆様、一週間ぶりの更新となります。

新人小説家のハルトです。


漸く、ラストスパートです。

え?characters fileの更新はまだかって?…少々お待ちください……。


実際本編の方を描くのが楽しすぎる的なのがあって少し困ります、はい。(言い訳)


では、出来るだけ活動報告の方の更新も頑張りますのでどうか最後までお付き合い下さい。

さて、第十九話、どうぞ。

世界は、虚飾に満たされた。

万物に関わらず生命は、その活動自体を無と無駄だと感じ停止してしまい。

まるでもぬけの殻となっている、ただ独りを除き。


ヘカトンケイルをどうにか打ち伏した俺は、救出できたという蒼実 凍花を学園までの届け役として、目覚めた繭の方まで駆けていた。


無論、繭が目覚めた数秒後。

俺の身体は死んだ、正確には止まっているというのが正しい言葉だろうが、それと同時に落とした承器。


「アナタ、……いえ、違うわね、動ける訳じゃあないの残念、目の前に救蹴られるかもしれない存在が居るというのにとっっても哀れ」


厄介な左腕のおかげか、目の前のものが見えてはいる、言葉も聞こえてはいる。

生きてもいる、けれど非力だ、今の自分は


今や個人の停止など関係ないと言わんばかりに地球という、惑星そのものすらも侵食され、その動きを止めんとしている。

動かぬ地平に蔓延るのは人類でも、天止でもない、悪意に満ち溢れ外道を踏んだ屑以下のバケモノ共。


目の前で今にも殺されそうな彼女(あおみ)を見て、(ばけもの)の言葉を聞いて息が詰まる。

この数秒が、数分、数時間にも感じるほどに。


ただ、何故だろうか。

一つだけ胸の辺りに、乾燥して剥がし取りたくなる瘡蓋(かさぶた)の様な感覚がある。


赤の他人だろう、まだ会って数日と経っていない、化け物と罵られもした。

……だが、今のコレはおかしいだろう。


何故、彼女が巻き込まれなければならなかったのか。

単なる一般人であった彼女がもしかすれば、巻き込まれなければ、幸せな日常を(すご)し戦いなどにすら無縁(むえん)であったろう彼女が。


何故、新たに(つな)がりを作ったというのに、心の内を明せる友人(はなび)らを奪われなければならない?散々奪われただろう。


そんな思いを抱く中、小型災獄共によって彼女(あおみ)へ振り上げられる凶刃。


「……暁はどんなヒトになりたいの?」


止まった呼吸、止まった考えの中で目の前に映るのは鮮明な景色。

いつかの記憶、忘れていた過去の断片。


「俺?俺は……別に何でも」


深層意識の中で目覚め、初めて抱くの感情の名は"怒り"。

適当にそこらの罵倒にケチを付けるようなものではない、己の目的から外れた要らぬものでさえも巻き込み戦いへと引き込んだ、化け物共への怒りの感情。


その感情に感化され、動き出した鼓動と共に、落とした承器を風を切り裂き僅か予測秒数にして0.5秒の速度で100mという距離を、投擲。


回転しつつ飛んで行った刃は、凶刃が振り下ろされるよりも速く、鋭く生命活動を停止した彼女を狙った小型災獄共を容易く切断し。


頞部陀の背後にある瓦礫へと突き刺さった。


「アナタ……ふぅん。

ま、いいわ、ワタシは疲れちゃったし、アナタこの状況で何が出来るっての?」


動き出した此方を視認し、無傷の頞部陀は飄々と話し出す。


「もし、このまま虚飾を倒して世界が終わってしまっても、世界が元に戻っても俺には関係の無い事だ、単に俺は……お前に心底ムカついて仕方がない」


両者、少しの沈黙、約100m。

相手からすれば此方よりも速く埋められる距離、此方からすれば相手に追いつくこと無く消耗した身体は一撃で仕留められることだろう。


「そう?ならどうするの?」


頞部陀は言う、飄々と如何にも自分は悪くありませんと言った態度で。


「……今此処で、叩き潰す」


此方から放たれた言葉の瞬間、頞部陀は。


「そう、けれど……今のアナタは私に勝てないのだから、世界が虚飾に呑まれるまであと約10分、せいぜい頑張りなさい、実験体」


頞部陀は静かに、獄門(ゲート)を開き去っていく、同じく地上に蔓延る災獄共も背に続き……。


実験体という言葉に頭に何か深い釘でも突き刺さったかのような痛みが走る、が此度では災獄共に加えて目の前の女をも殺せない。

……実力差、独りという事、何よりも優先順位を履き違えてはならないからだ。


地上に残ったのは、虚飾の竜と己のみ。


「ナnジ、ナゼ、イカル」


発された言の葉、何処か蒼実と花火を混ぜ合わせたかのような女の電子音。


「生きることを虚飾とは思わない、それに……お前を目覚めさせるために巻き込まれ、巻き込んだヤツらへの怒りだ、これで充分だろう」


「ヨロシイ、ナラバ」


「さっさとお前は」


両者の間にて紡がれる言葉は数秒とかからない答えであった。


「死んでしまえ」


「キョショクトカセ」


瞬間、相手から放たれる帯状の光。

白きその光は周りの空気すら虚飾と見なし変えていきながら複数本に分裂、増殖し此方を穿たんと飛んでいく中で。


青年の脳裏に焼き付くは無数の言の葉。

目覚めし怒りを(ほど)き放つ、左腕に蠢く力の脈動。

此方の背後の影より伸びるは、竜の影、力の鼓動を感じ新たなる力に目覚めん。


──詠唱、開始


「一つ、(おう)(いずみ)より()てし()(いだ)く」


「嗚呼、何とも醜禍(しゆうか)か。

黄昏(たそがれ)手繰(たぐ)られ、(なんじ)享受(きょうじゅ)するは(つみ)の一角」


()(いか)(くる)姿(すがた)不道理(ふどうり)へと抗う者、力で(ことごと)くを滅殺(めっさつ)せんと()乱心者(らんしんしゃ)か」


詠唱最中、(あかつき)に飛んでいく帯状の光は容易く憤怒の目覚めの前に打ち砕かれる、容易くボリボリと喰らうかの如く。

先まで蹂躙していた力が折られる様は、力の差を象徴するかのようで。


偏向(へんこう)あれど、()憤怒(ふんぬ)より不変(ふへん)


「ただ一遍(いっぺん)()らぎはない」


「ただ()らうのは不道理(ふどうり)のみ」


(あら)る魂は不合理(ふごうり)()()せし(やいば)顕現(あらわれ)りは醜禍を()()くす()てなき(すがた)


「───乖離(かいり)


乖離(ディスケバンス) 鎮魂歌(レクイェイム)序章(プロローグ):憤怒(イラ)


詠唱の終わりと同時に、世界の半分を包みかけていた虚飾の渦とぶつかり合うは憤怒の咆哮。

誰の憤怒か、彼の憤怒か、答えは単純、世界そのものの憤怒である。


憤怒と虚飾の奔流、憤怒(イラ)虚飾(ヴァニティ)の奔流のぶつけ合いは地を揺らし、空を震わせ、海を畝り荒らす。


それを邪魔するものはなく、先に動いたのは奔流の中を一条の光の如く、憤怒が駆け抜けていた。


左腕に巻かれた包帯はまるで竜の尾の様に左腕より伸び(いで)て、動き一つ一つの瞬間に(あかつき)が纏う"ソレ"は黄昏にも紅色にも近しき色の竜の頭部とも言えようか。


正確には契約した竜が彼の怒りに呼応して、変化したもの。


虚飾(ヴァニティ)もソレの脅威を感じ取ったか、其の体躯を見る見るとウチに大きく、空に広がる雲でさえ越えんとする程にまで巨と化けるが……。


途端に、轟音響く。

空を覆い尽くす雲は掻き消える、真夜中。

地平の上に広がる月でさえハッキリと見えるほどに空は、無雲となると共に吹き荒れる暴風。


その轟音の元は、無論の事。

ぶつかる巨大な白き竜と、竜を纏いし一人の男、世界の半分は世界を破壊せんとする化け物共へ向けられた憤怒の波に。

その半分は、全てが無駄と生きることすら空だと判断される虚飾の渦へ変わっていきながら。


虚飾から憤怒の波に包まれて目覚める蒼実や、他の仲間。


「……あれは」


空でぶつかり合う竜と竜を、地平に吹き荒れる暴風の中で、足掻き虚飾を打倒し核となった赤の他人(はなび)を救わんとする竜を見て、静かに希望を抱き託す。


決着の行方は如何に、夜明けは訪れるのか。

戦いは未だに続く。

「次回予告」


激闘は続き、(ヴァニティ)(あかつき)は喰らいあう。

世界を虚飾という滅びで満たす為。

世界を満たす不合理へ憤怒する為。


憤怒と虚飾の(たたか)い、決着(けっちゃく)


そして訪れた

夜明(よあ)けの(さき)に、新たなる(なかま)(たたか)いの(きざ)し。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第二十話:夜明(よあ)け/そして()はまた……


「夜は明けた、憤怒と其の仲間によって。」

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