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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第十八話:蒼、奪還/滅び為かの目覚め

どうも、皆様。

久方ぶりGWぶりの更新となります、新人小説家のハルトです。

お待たせ致しました、十八話の更新となります、前回の更新以降大変沢山の読者様や先輩方にお読みいただき大変感無量であります。


では、第十八話、お楽しみください。

繭の破壊及び災獄掃討作戦の名目で行われる、蒼実 凍花救出作戦ダーケスアンブルフ。

作戦は、最終段階へと移行していた。


「戻ってこい!アオっ!」


そう激しく叫ぶ、彼女の手の先には。


「花……」


深海の如く暗く黒く、先の見えぬ(なげき)の中で膝を抱え、蹲る小さな少女が居た。

彼女の名は蒼実 凍花、本来巻き込まれるはずのない運命に翻弄された少女である。


繭の中、(なげき)は彼女を縛り付ける枷、杭として深く深く足に打ち込まれている。

皆が外で戦う様子、其れを映画館のスクリーンの様に永遠に淡々と見せ付けられている。


「もう、生きるのが辛い」


繭の中、蒼実がふいに呟く言葉。

其の言葉は重く、現在(いま)の心を現すには、丁度良いと言うべき言葉であった。


「……」


彼女(はなび)は其の言葉を聞き、黙するしかなかった。


「私は人に迷惑をかけることしか出来なかった


ただ自分に与えられた役割を線路に沿って辿っていただけ、ここまでが本当の私の人生だから、もう……戻れない」


震える唇から紡がれる言葉。

彼女(はなび)の手を拒絶か、恨めしく思うものか、其れは彼女(あおみ)にしか解らぬもの。


花火は唇を悔しそうに、拒絶であっても、軽蔑されたとしてもそれでも救わんと噛み締めて。


「……オレはお前に救われた、お前に返しきれていない恩が嫌って位にある、それを返せないで何が親友だ」


己を叱責し、されど友を救うが為の言葉。


「…けれど花。

私はもう生きていられない、皆に迷惑をかける、それだけの事なのだから、此処で死な…」


「馬鹿野郎……!」


溢れる涙は悔しさからか、それともその言葉への悲しさからか。

否、それらに当て嵌らず其れは友を思う思いから出るものだ。


「死なせない!絶対に、助けて、帰る……!」


彼女(あおみ)に伸ばされる花火の手は、ゆったりと静かに赤く染まる、肌は剥離し爪は剥がれ筋肉繊維が顕になり水の中にふわりと広がる赤いインクの様に、血液がじわりと広がる。


嘆きという、彼女(あおみ)が受けて来た重責が痛みへ形を変えて花火の手に貫き、切り裂き、剥がし削る。


「迷惑なんて、幾らでもかけて来やがれ!

皆!お前を待ってる!」


その言葉は、彼女(あおみ)という存在が手を伸ばすには充分過ぎる言葉で、(なげき)という深海から引き上げられ蒼の奪還は漸っと、果たされたのであった。


「逃げるぞ!」


花火は、繭の中から救ったボロッボロの制服姿、疲労困憊と言った顔をした蒼実をおぶるような形で抱え、何かを質問するよりも早く。


「……凍花、帰ってきたか」


「学園長すいません、心配……かけて」


花火のデバイスを介し、何となくではあるものの互いの無事と心の内を察しつつ謝る蒼実に。


「おかえり」


言われた言葉は、一つの救いとも言えよう。


「……ただいま」


その光景はいつかの静かな平和な日常を彷彿とさせるようでもあったと、そんな思いに耽る暇も無く、繭は振動し始めていく。


「うおっ……」


少しのノイズ音と共に切り替わる通信音声、デバイスから風見鶏の声が響く。


「繭の生命反応の揺らぎを確認、繭の上から退却を推奨、地上の災獄は北風さんが対応中、一際反応の強い個体はハデスさんと戦闘中、生命反応は大きな反応の方が微弱」


「バケモンは?」


「バケモンって言うのそろそろ止めてあげたら良いのに……こほん、三神さんの生命反応は微弱ではあるもののそれ以上にヘカトンケイルの生命反応は微弱となっています」


ほっ、と蒼実と花火はほんの少しだけ安堵の息を漏らしつつ、そのお互いの様子に少しの笑みを見せながら。


「行くぞ、凍花」


「えぇ、行って」


青臭いながら照れくさそうに、それでも助けてくれた事に、助けられた事へ。

互いに嬉しそうに笑いながら、蒼実をおぶり地上にいる災獄に警戒しながらも繭から飛び降りようとした瞬間。


繭は、核を奪取された事に反応したか。

静かに音も立てずして開き始めていた。

花火がそれに気づき驚くまでに数秒、その間に蒼実を視認できる限り、北風の居る方へと乱雑に投げ。


其の数秒後、花火を貫くは繭の隙間から溢れる幾数万の帯状の光、迸るのは鮮明なる痛み。

それは正しく油断大敵というもので、帯状の光は容易く花火をするりと絡め持ちあげ取り込んでいく。


「花……?」


蒼実は北風に支えられながら、何とか立ち上がれば開き次なる姿へと変わる繭と、核として取り込まれた花火を披露まみれの眼で見つめ。


核を再度取り込んだ繭の姿は、否。

繭と言うより巨大な竜。


其の白き翼は神々しささえも、恐怖すらも感じ世界を救うたらん者らを撃滅せんとし。

白き体躯は威光を放ちながら、妖しく光り。


六つの眼には赤と蒼の憐憫とも言える眼に宿す。その名。

遠く天に頂る存在と激闘を繰り広げ、死にかけとも捉えられる頞部陀の口から呟かれた。


「嗚呼…虚飾の竜ヴァニティ、世界を虚飾で…」


「何を、ブツブツとォ……!」


先に通信にて報告された戦闘通知による生命反応、それは真逆のものであった。

身体を覆う剛毛より溢れ出るは鮮血、病によるものか肌は爛れ毛の合間に肌が割れたような傷口が沢山着いている。


天の頂きは単なる小さな病に敗けかけていた。

対して獄の一柱は、傷一つ、無い。


「さて、達しなくなってきたし暴発も出来ないし、アナタの技にはもう飽きちゃった、もう少しマトモなのを用意しておく事ね」


女のフリをした"地獄"はひらりひらりと飄々とした態度で、目覚めた繭の元へと去っていく。

事件(やくさい)は終わらない。


場面は変わる、オペレーションルームより。


「……あれは」


各部隊のオペレーターの顔も、学園長であるルシファーの顔でさえも今までの作戦が無にしかならぬと言わんばかりの顔つきで、何もかもが空である、何もかもが無駄である。


全てが虚飾であった、と証明するものに変わってしまっていた。


そう、これこそがヴァニティの(ちから)にして旧暦(ロストヒストリー)を含めた人類への(ふくしゅう)


どの誰の顔も、否、否、否。


学園に避難した避難民や天界に至るまで全ての生命の顔が、否。

地球という惑星に今生きる生命の全てを虚飾で染めた、顕現してから数秒の出来事だ。


まるで時そのものが止まった様に、全ての生命は虚飾ヘ至り其の生命活動を無駄だと判断し、停止させたのだ。

その様子に感無量するは唯一体、頞部陀のみ。


「あは、アッハハハハハハッッ!達する!達してしまうわ!嗚呼!可哀想で哀れで非力な私の妹!」


「せぇぇっかく救けられたのにぃぃ!ざぁぁぁんねェェェェェンッッ!!」


天の頂きに敗することすらも無く、人類の足掻き虚しく地上に響いたのは、生命活動を停止させた其奴にとっての傀儡にして元妹の前で。


獄の発狂とも言えるか、それとも快楽に達し興奮のイキかの様な奇っ怪な笑い声のみ。


「ハぁァ〜、さて、これ壊しといてネ♡」


一つまるで、単なるお芝居でも見せつけられた様な呆れた溜息を着いた後。

近隣に群がる小型の災獄はその命令に忠実に従いながら、停止した彼女(とうか)へと襲いかかる。


人類という歴史に終わりが着いた今。

語り部は居らず、神の介入すらも許す事はなく、奇跡は起き……。


ガタン、小型の虫のような災獄連中はその音に振り向いた、怪しく光る眼、虚飾の竜、頞部陀が捉えたのは力の胎動。

次の瞬きの内に捉えたのは、真なる覚醒への鎮魂歌(レクイエム)


to be continued。

「次回予告」


虚飾にさえ対抗せんと喰らいつく。

左腕の力は今、疾走(はし)る。


鎮魂歌を今、響かせよ。

(なげき)をへし折る為に。

鎮魂歌を今、響かせよ。

過去(おもに)を砕く為に。

鎮魂歌を今、青年は背負う。


誰かを想い、背負った罪の名は

「憤怒」。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第十九話:覚醒する左腕/憤怒(イラ)(バーサス)虚飾(ヴァニティ)

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