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彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花  作者: 新人小説家ハルト
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第九話:破滅の左腕、絶望の右腕

どうも、新人小説家のハルトと申す者です。

第九話、ガッツリな戦闘でございます。


破滅、絶望と悪いワードが入りますけどね?大丈夫っすよ。

主人公君は強いんで!


では、どうぞ、お楽しみください。

12月25日、クリスマス短番外編投稿予定でもございますのでどうか、ご期待ください。

彼女らが逃げてから数分後。

学園長、蒼御、黒、白はオペレータールームに到着。


そして一階生徒玄関前廊下では……


「チィッ……!」


鈍く重い音が鮮血に染った廊下へ響き渡る。

拳と拳が当たる音。

巨大な右腕は、風を切り、その風は頬に掠りすらするだけで頬の皮が裂けてしまうほどの速さで振り上げられ、花火の"燃ゆる拳"と拮抗していく。


「Kvrrrrrrrruuuuゥゥ!」


だが、押されているのは確実である。

徐々に攻め立てていた花火も二階階段近くの所にまで、追い詰められていく。それも一応の事、作戦の内であり背後の方へと視線を傾け。


「くっ……化けモン、今だ!」


「分かってる」


冷静に、そして落ち着いた口調で三神は言葉を一蹴し。

がら空きであるヘカトンケイルの股の間を、花火の背後から、身を乗り出し左横から廊下を一足で蹴り上げ接近、スライディングし股をくぐりぬければ背後へと回る。


それを援護するかのように、スライディングとほぼ同時に右横、花火の右肩に銃口を乗せるようにして放たれる頭部ような場所を狙った、二発目の弾丸。

弾丸が放たれた直後に、体勢を落としつつ三神が背後へ回った瞬間に同じく正面へと、一歩踏み込むのみで近づくことの出来る距離。


その一撃、巨なる右腕が振り上げられるよりも早く。


「ボルデウケスッ!!」


人の拳より何回りか大きい右拳を振りかぶりながら、そう叫ぶ花火。


得意の我流震脚(がりゅうしんきゃく)を行いながら、全身の筋肉を強ばらせ、全身が焔そのものの様なヘカトンケイルにも匹敵する程の大きさを持つ人型の捻れた両角を持つ焔王(センオウ)を己の影のように"叫び"で呼び出し。


相手の腹部と思われる部分に花火は(ほのお)による推進力を得ながら、拳を焔王(センオウ)と共に叩き込み、北風の放った弾丸は頭部を貫き、背後より三神は心臓を穿たんとヘカトンケイルの体型が人型であることに起因して、一刀のもとに刺突を放つ。


だがそんなものは屁でもないというかのように、災獄ヘカトンケイルは鮮血すら流さず、弾丸は皮膚に当たると共に弾かれ、花火の拳は硬い鉄の板を殴るような音を鳴らしその拳を痺れさせ、三神もまた同様。


全くと言っていいほどに微動だにせず、花火の上部へと振り上げた右腕を、突如として逆方向へとてつもない音を立てながら回転させ。


思い切り花火の胴体の骨をひしゃげさせながら胴体前面全体に叩き込んで血を多量の血液を吐きながら、まるで軽い野球ボールを投げるような形で、音速に至らないかという音を立てつつ吹き飛び、奥の壁へと叩きつけられる花火。


「Kvvrsyaaaaaa!!」


雄叫びと共に目線を背後に居る三神の方へ首を回転させて振り向き、右足らしき部分で後方にしなった蹴りを放つ。

寸前、バハムートの力を借り鋼鉄の様な硬さを持つ翼でその蹴りを防御するものの、先の様な重い一撃……ではなく。

残像が残る程の速さ、的確さで両翼の間を細い針で刺すかのようにして三神の両膝の皿を割ったかと思えばそれらを粉々に砕き。


その痛みで両翼を解除した瞬間に全身へと叩き込まれる蹴り、フィニッシュと言わんばかりのカカト落としを浮かされた身体へ諸にくらい、花火と反対方向の床に叩きつけられてしまう。


場面は変わり、オペレータールーム。


「……あの二人が、あんなに一瞬で」


喧騒の中、黒はそう呟いた。

オペレータールームでは忙しなく、二年生らのオペレーターが動いており、学園長ルシファーでさえ余談さえする暇もなく前面に広がるモニターで街の様子などに気を配るしかなかった。


「あんなに弱いんだね、あの二人」


「……そういうことを言わないの」


白のそんな状況把握ができてないのではないか、とも言うべき言葉を御するかのような返しをして。


「二人共、ここから離れるようなことはするなよ。あの三人に任せるべきだからな……」


ルシファーがその会話の合間に入るようにして言う、そんな中、蒼御は呆然と、ただ友人らが赤子の手をひねるかの如くやられる姿を、続々と避難してくる他の二年生らの誘導を兼ねつつ見ている他なかった。


街の方には災獄が降り立つ兆候は見られず、更に場面は変化して天界(パラダイム)

天止(テンシ)らもその様子を眺めるしかない、天界は基本的に地上、天門(パラダイム)を潜らねば行き来できぬものである、しかも人間(ヒト)への助力をするには熾天止(セラフ)達の許可が必要不可欠である。


堕天止(ダテンシ)の様に熾天止(セラフ)達からの裁量で決定が下され堕天()とされでもしない限りは、それ故に助力は不可能に近いものだと、とある一人。

否、一天止が天界(パラダイム)よりやられる二人の契約者の様子を眺めていた。


そして、地上では……


「来て……ヤルダバオト」


吹き飛ばされ、傷を負った二人を護る様な形で北風 南が偽神とも呼ぶべき己が契約族を呼び出しヘカトンケイルと拮抗状態を作る形にて応戦していた。


「Kvrrrraaッ!!」


血に飢えた笑みを浮かべながら、傍から見れば空気が何度も何度も破裂するような音と共に周りへ、轟音を立てるほどの衝撃波が起こってるようにしか見えぬほどの速度にて、打撃を放つ肉塊の様な怪物と。


「邪魔でス、南の友人を殺すなド、言語道断、死して傷つけた罪を償いなさイ」


相手の放つ言語を理解しているのか、相手の打撃をまるで"その空間ごと"貫くかのようにして、二等辺三角形とも言う形にとがった腕を振り回し、そんな言葉を返す不定形な金と銀の三角形で構成された存在ヤルダバオト。


猛烈にぶつかり合う二体、その間に弾丸を放ち続ける北風 南。

だがその戦い、長く続くことはなかった。


「Krausyuuuuuuuuゥ!!」


瞬間。


「……え?」


巨大な腕が、不定形な三角形の胴体を貫いた。

一瞬の出来事である、その一瞬の出来事に北風は着いてこれず。

ヤルダバオトは消滅、北風は正面突破とも言うべきタックルの形を作って音速で駆け抜けてきた怪物(ヘカトンケイル)に吹き飛ばされ意識を失った。


そして、怪物(ヘカトンケイル)は、見事。

見事というべきなのだろうか。

意識を失っている彼女(はなび)を、人型のような形をした肉塊(ひだりて)で持ち上げ、赤ん坊が親にたかいたかいとされる様に軽く放り投げ、落ちてきた彼女(はなび)の心臓を。


胴体事ぐしゃり、と。

潰して見せた。


落ちてきた彼女(はなび)は、とても安らかで、だけれども何処か寂しげで。

忙しなく動いていた世界の時は、この瞬間だけは冷たく止まっていた様な気がして。


「ぁ……あぁ……うああ……!!」


オペレータールームにて、泣き崩れ叫ぶ蒼御と苦い虫を噛み潰すかのようで唇を血で濡らす学園長、目を背ける黒、その光景は恐らく二度と忘れることは無い白。

そして、目を覚ましかけていた(あかつき)


(くれない)彼女(あお)は見て聞いた。


そして泣き叫ぶ声と共に左腕から鼓動が響く。

紅は目を覚ます、一時的なものでも構わない、目の前の怪物(くず)を殺せるなら、と。

彼は鼓動を解き放つ。


──□零□・□低□除──


解き放たれる左腕。

オペレータールームからも、天界からも、そして彼の契約族からも左腕の存在は知れている。

だがそれでも、この今に見た彼は別物で、そして何処か壊れていた。


周りに飛び散る鮮血を鎧の如く、そして獣の様に身に纏い。

彼、いや、彼らは右腕に彼女(はなび)の頭を引き寄せるような形で大事そうに握りしめ、その姿を顕とする。


此処に放たれて"しまった"のは零番目。

さぁ、満たせ。さぁ、唸れ。

さぁ、蹂躙せよ。

そして狂乱の宴の中、唯一雄叫びを上げて咽び泣き叫べ、そして疾走せん。

『この紅、止まることを知らぬ』。

「次回予告」


駆け抜ける獣の様な姿、紅の彼。

それに引き寄せられるかのように。

呼応するかのように泣き続ける、蒼の彼女。


彼よ、悲しみを背負い。

涙の中……紅き一撃にて、絶望に終止符を。

終止符の後に、待ち受けるものは。


次回

「彼は誰の紅 蒼く咲く凍りの花」

第十話:悲しみ、血の涙、そして……


「彼はまた進む、彼女もまた、進むのだろう」

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