001話 死ぬ理由
何でもない日常。
同じことの繰り返し。
嫌なことの繰り返し。
現代日本に生まれ育ったオレ。
この国は平和だ。
だが、それはある一定の条件を満たしている者にとっては、という事実がある。
目立たない。
調和を乱さない。
逆らわない。
無個性に纏められた者たちにとって、この国は平和なのだろ。
ある程度の教育を受けられ、成人し、働き、納税し、結婚して子供を育てる。
やがて年老い、年金をもらって死ぬ。
そう生きれる人間にとっては平和なのだろう。
だが、どれか一つでも欠けたモノにとってはこの国は途端に暮らしづらくなる。
リタイアは認められない。
調和が乱れるからだ。
オレも欠けた側のモノだ。
どれか一つどころじゃない。
全部欠けている。
俺は隙間だらけ、穴だらけのモノだ。
この世界は優しくない。
オレの大事なモノをすべて奪っていった。
両親、妹、飼い犬までも。
この世界は優しくない。
アイツらにはあるものがオレにはない。
親、兄弟、友達、恋人…
この世界は優しくない。
アイツらにできることがオレにはできない。
勉強、運動、仕事…
こんなことばっかりだ。
最後に笑ったのはいつだったか。
覚えていない。
もうどうでもいい。
もう死んでもいい。
もうこんな人生終わってもいい。
助けるふりして強要されるのはゴメンだ。
助けるふりして誘導されるのはゴメンだ。
助けるふりして命令されるのはゴメンだ。
もうどうでもいい。
どうせ死ぬなら好きなことしてから死のう。
オレの好きなことってなんだったっけ?
もういいや。
生まれ変わったら誰にも命令されずに生きていたい。