010話 勇者、隠れる
2,3の山を飛び越え、オレは温暖な気候であるパルメイロ王国の海岸沿いに降り立った。
なぜ召喚されたばかりのオレが国の名前や特徴が分かるのか、については勇者だからとしか言いようがなかった。
【スキル】勇者の地図 LEVEL01
頭の中に浮かび上がる全世界の詳細な地図。
LEVEL01では訪れた場所のみ知ることができるが、LEVELがあがれば
未到達の場所であっても表示されるようになる。
周囲に魔物の気配を感じる。そこで思い出す。
さっき倒した魔物が魔王軍の四天王と名乗っていたが、瞬殺だった。
魔王が四天王より強いことは間違いないだろうが、いまのオレの力なら倒すのは容易いのだろう。
だが、オレには関係ない。
あのまま王に会ったところで、魔王討伐の命令をされるだけだろう。
誰かの命令で動くのはもうごめんだ。
オレはオレの生きたいように生きると決めたのだ。
降り立った時には周囲に魔物の気配もあったが今はすっかり姿を消していた、
おそらく野生の勘のようなものでオレとの力の差を感じたのだろう。
しかし、ここまでの力は厄介だ。強すぎる。
人間でもちょっと魔法などを齧ったものであればオレの力を見抜いてしまう。
というかオーラ的なものでいやでも勇者と分かってしまうのだろう。
少し力を抑える必要がある。
だが、この力はオレが自由に生きるために必要な力だ。
ある程度の力を残しつつ、圧倒的な部分のみ隠す必要がある。
【スキル】勇者の隠匿 LEVEL01
自身の力を隠すスキル。
LEVEL01では本来の力の殆どを隠すことしかできないが、
LEVELがあがればスキルや割合などを自由に選択できるようになる。
「よし」
【スキル】勇者の隠匿を使う。
水面に映る自分の姿を見る。
銀色の短髪にやや焼けた肌、青い目に引き締まった体格。身長もこの正解の平均以上くらいはありそうだ。
能力については一般的な冒険者や、あの塔にいた騎士団くらいの力に感じるはずだ。
これで少しは目立たなくなっただろう。
オレは海の背を向けて、背後にそびえる森に入っていく。
【スキル】勇者の地図により、この森を抜けた先に町があることが分かっている。
オレはその町に向かうことにした。