009話 勇者、魔物を倒す
「ガァァッ!!、バ、バカなっ!」
獣のような声をあげて断末魔を叫ぶカイザン。
「こ、この私がっ!!、魔王軍四天王の私がっ!」
「うるせぇっ!」
オレは剣を上段から振り下ろす。
そして吹き飛んでいた頭と胴体を綺麗に縦に真っ二つに斬り裂いた。
まだ何か声を上げていたカイザンだったが、黒い霧になり、そして次第に霧散していく。
「おおっ、ま、魔族を倒した!」
「それも、四天王と言っていたぞ!」
「さすがは勇者様だっ!」
またそれか。
塔から降りてきた者たちは、オレがカイザンを倒したことに歓声を上げる。
一度逃げていた近衛兵団や弓兵たちも様子がおかしいことを知り、ここに戻ってきていた。
塔から降りてきた者たち以外にも、何人かは宰相がカイザンに変わったところを見ていたようだ。
だがオレには関係ない。
そもそも俺は近衛兵団を斬り殺しているのだ。
目の前に立ったものを斬り殺しただけで、それが騎士だろうが、近衛兵だろうが、魔族だろうが関係ないだけだ。
オレは騒いでいる連中を一瞥する。
そいつらは勝手なことを言って騒いでいる。
【スキル】勇者の創造 LEVEL01
想像したものを創造するスキル。
LEVEL01では創造できるものに限りがあるが、LEVELがあがればその制限はなくなっていく。
勇者が無敵と言われる所以のスキルである。
オレは飛行能力のスキルを創造する。
それを自分に付与する。
【スキル】勇者の付与 LEVEL01
勇者の力を分け与えるスキル。
LEVEL01では自分もしくは自分の持ち物にのみ付与可能だが、LEVELがあがれば
分け与える対象は生き物だけでなく、無機質のものにも可能となる。
もちろんアイテムに付与を与えることもできる。
なお、付与解除もセットになったスキルである。
「ゆ、勇者様、なにとぞ王に会ってくだされ!」
オレはそういった大臣らしき人物を一睨みしたあと、飛行能力でその場を飛び去った。
飛び立つときに時が止まったような感覚があった。
あそこにいた連中は、さっきまでそこにいたはずのオレの姿が見えないことに困惑しているころだろう。