盗人です!
よろしくお願いします!
カジノの1件以来
俺は恐れている
何を?
決まっている。
キースをだ...
教会に帰るとキースは入り口に仁王立ちだった。
余りの剣幕にジャイロも逃げ出そうとした位だ
俺はすぐさまジャイロ袖を持つ
「お願いだジャイロ。俺を見捨てないでくれ。今逃げられると俺は殺されてしまう!」
ジャイロは首をふる
「俺を巻き込むな!大体奴は補佐神官だろうが!つまりお前の部下、なんでお前がビビってんだよ!」
そうか!
よく考えてみれば俺が上司なのだ
なにも恐れることはない。
もうなにも怖くない!!
するととんでもないスピードで俺の目の前に来たキースはジャイロに話しかける
「いつもブラド様の面倒を見て頂いてありがとうございます。ブラド様は常識が少々かけているのでご迷惑をおかけしていると思いますがこれからも仲良くして頂けると幸いです」
おかんか!
するといきなりキースが俺の尻を捲る
やめて!俺にはそんな趣味ないから!
ノーマル、ノーマルなんだよ俺は!
バチンッと音が鳴り響く
「すいませんジャイロ様。これから門限を破り街に出かけた件でブラド様しばらく罰を受けて頂きます。本日は厳しいかと思いますがまた遊んであげて下さい。」
ニッコリ笑うとキースは尻叩きを再開した。
いっ痛い!
痛すぎる!
前世でだってないのに!
「やめろキース、俺はお前の上席だぞ?いっ痛い!やめ、やめろぉおおおおおお!!」
キースは100回叩くまでやめなかった。
キースには補佐神官だ。
自身の階級は準神官
神官の一歩手前
そこそこにエリートだ。
そして俺は神官だ
トップエリートだ。
何故だ
何故キースは俺に逆らう
キースに聞いたところ
「ブラド様はまだお若いので教育面での補佐も私の仕事に含まれております。因みに尻叩きは罰としての私の権限内に含まれておりますのでご安心を」
もうやだこの子ったら
尻叩きが権限に含まれている?
それ立場逆転してない?
ねえおかしくない?
あと普段はブラド神官って言う癖に怒ってる時だけ様付けも辞めてくれない?
普通に怖くて反論しづらいから
「これも教育ですので」
恐怖政治や!
そんなわけでキースは怖い
カジノに行って飯食いたいけどキースがやたらと巡回してくるから行けない
修学旅行か!
はよ寝ろ!
そんなわけで夜は出れない
ならば昼はどうか?
連日の裁判尽くしの結果
俺がこの街にいる限り嘘は通用しないと浸透したせいか
裁判はめっきり減った
お給金も結構減ったが
まあそれは大丈夫
神官ってだけどそこそこお金はある
具体的に言えば毎日カジノジャイロを連れて行っても半分以上余る程度にはある。
神官すげー!
ってなわけで、休日に教会を出てジャイロを探す。
しかし困った事にジャイロが見つからない。
参ったな
こんなん初めてだ
って昼間に探した事もなかったな。
ん?
そういやあいつ学生じゃん!
チンピラみたいな顔だからとっくに社会人かと思ったわ
じゃあ俺1人じゃん...
1人でコミュ障の俺がカジノ行けるわけねえじゃんか!
...帰るか。
帰ろうとすると子供の泣き声が聞こえる
そして大人の怒鳴り声も
「返してよぉー!婆ちゃんに飯喰わせるんだ!」
ちっこいガキが叫んでいた。
まあ俺もガキだが
聞いちゃったし、なんか悲しいストーリーがありそうだしちょっと話しでも聞くか
暇だし
「済まんな、このような通りで声が聞こえたもんで気になった。少し話しを聞かせてもらえないだろうか?」
俺は神官のバッジを見せてガキの首根っこを捕まえているマッチョにいう
「おぉ!真聖の神官様か!丁度良かった、このガキがうちの大根盗んでったんだよ、そんで今捕まえたら騒いでたってわけだ。」
盗人か!
万引きはいかんな。
ダメ、ゼッタイだ!
「でも婆ちゃん飯食わないと死んじゃうもん!婆ちゃんずっと飯食ってないんだ。俺らにばっか食わせて。だから婆ちゃんにくわせたいんだ!頼むよ!」
なにこれ
どうしよ
万引きなのに裁けない。
ちゃっかりどっちも触れておいたからどっちも嘘はついてない
まあガキの方は嘘ついてもなんもないかもしれんが。
婆ちゃんか...
「ならその大根は私が買おう。これは手間賃も含める申し訳ないな、八百屋の。それと他にもいくつか買ってもいいか?」
銀貨を三枚程渡すと八百屋のマッチョは1人じゃ抱えない程の野菜を売ってくれた。
「ほれ、なにをしている。俺1人で持てるわけないだろう。その婆さんの所に連れて行け!」
盗人は笑顔で荷物を半分もった。
スキップする程余裕があるならもう少し持て!
裏路地は入るとかなり寂れてはいるが大きめの家にたどり着いた。
盗人が大きな声で言った
「ただいまー!婆ちゃん飯だぞー!真聖様が飯買ってくれたんだ!今日はいっぱい食えるぞー!」
中に入ると子供がめちゃくちゃいた。
多分30人近くいる。
大きめの家だがこれでは手狭だろう...
「うわー!飯だ!」
「真聖様ってなーに?」
「ええ?俺よりちっこいじゃんこいつ」
「今日はいっぱいたべれる?」
同時にあちこちで話すからなんもわからん!
1番おっきいのでも10歳にいかないくらいか...
ここは孤児院なのだろう。
「ザック!お前また街で悪さしたんじゃないだろうね?迷惑はかけてない...お客様かい?」
80歳オーバーっぽい婆さんが目の前に現れた
腰は曲がり
明らかに栄養不足なガリガリの身体
ザックつうのかあの盗人は
「ごめん!婆ちゃん!飯盗もうとしたら捕まって、そこにいる真聖様に助けられたんだ!飯も買ってくれたんだ!見てよ!この量!これで婆ちゃんも食えるだろ?」
あらやだ!
この素直!
嘘ついても合わせてやろうと思ってたのに
すると婆さんの顔が真っ赤になる
「辞めろって言ってるだろ!人様に迷惑はかけちゃいけない!何回言わすんだい!」
ザックも言い返す
「それでも、婆ちゃんが死ぬよりいい!婆ちゃんが飯食えるなら俺は何回だって婆ちゃんに怒られるよ!だから...飯食ってよ...やだよ婆ちゃん...」
こういうのテレビで映ったらすぐチャンネル変える派だった俺には耐性がない。
それも日本じゃ間近にこんな事を感じる瞬間もない。
だけどいざ目の前にあると善人でなくても大抵の人がなんとかしてやりたいと思うだろう
「ザック、良くお聞き。婆ちゃんはどっちにしてもそんなには生きれない。これからお前たちが生きてくにはみんなで力を合わせなきゃならん。これからいっぱい辛い事がある。だからこんな事で泣くな。婆ちゃんは随分と長生きしたよ。」
ザックは泣き止まない。
周りの子も釣られて泣く
35歳の俺も釣られて泣く
違う!
目にゴミが入ったんだい!
「真聖様って言ったかい?どうもありがとう。お陰で今日この子達が飯を食う事ができる。本当にありがとう」
そう言って婆さんは俺の手を握る
「生憎お礼はなんにもできない。見ての通りスカンピンでね。せめて一緒に飯を食って行っておくれ」
なにかできることはないだろうか
「お婆さん、少し話し聞かせてもらえますか?」
婆さんは元々修道院で働いてたらしい
歳をとって引退した頃に捨て子を見つけて育てたんだとか
そしたらそれをみた住人が婆さんの家の前に次々と子供を捨てていったそうだ。
その全てを婆さんは受け入れた。
国に相談もしたらしい。
でもこの国では孤児院もすでに手一杯で受け入れられなかったそうだ。
婆さんは私財を全て投げうったが、それでも限界がきた
既に働きに出た子もいるが、遠方のためにたまにしか来れてないらしい
それでもその子達も少ない給金を定期的に運んでくれるのだとか
1番小さな子で3歳程
この子達が成人する前に自分は死ぬであろうこと
死んだら誰面倒をみるのか
だから今のうちに全員で生き残れるように7歳以上の子達を近くのお店でお手伝いとして雇ってもらえるように頼みこんでいるのだとか
安い給金でも構わないと言っても小さな教養もない子供だ
なかなかうまくいかず、年長組みも半分程度しか働けてはいないそうだ。
うーん
これはまずい
解決方法がわからん!
参ったなーと思ってたら飯ができたのでとりあえず食う事にする。
「はいみんな手を合わせて、頂きます!」
「「「頂きます」」」
メニューは野菜と芋のスープだ
正直ゲロまずい
そもそも野菜が嫌いなのに
味付けは薄い塩味のみ
しくったな...調味料も買うべきだったか...
あんなに買ったのにこの人数だとスープ1人二杯だ。
それでも皆喜んでいる。
にしても野菜とか綺麗に切れてるし
芋とかも丁度良い柔らかさだ
マズいけど
ふむ。
「お婆さん、提案なんですけどいいですか?」
婆さんはこっちを見て答える
「なんだい?出来ることがあるなら言っておくれ。」
俺は婆さんを真っ直ぐ見て言う
「この子達全員で商売しませんか?」
俺が考えたのはこうだ
ここは裏通りだけれど表通りの商会や冒険者ギルドなどからも比較的近く、人通りもそれなりにある。
しかし飯屋はない。
反対側の表通りに集中しているからだ。
しかしここで飯屋を開いてもこの見た目だ。
客は寄り付かない
なら弁当はどうだろうか?
けれど弁当は複数の種類を作る必要があるし、なにより他と差別化できない。
ならば持ち運びできる目新しいパンはどうだろうか?
それならばこの見た目でもさくっと買って
なおかつその見た目を見た人が興味を持ってくれるのでは?
安易な考えだが失敗したなら残ったのは全てこの子達が食べればいい。
そう提案した。
「資金は私が提供します。最初は儲け度外視でいきましょう。その内利益が出るようであれば半分半分という事でどうでしょうか?」
貯金はそこそこある
そして金もほぼ食材と包装だけだ。
まあ大丈夫だろう。
「こちらとしては有り難い話しだ。悪い事はなにもない。しかし難しい物はこの子達には...」
大丈夫。
基本おんなじ物しか作んないから
「ここで販売するのは主に3つ!焼きそばパンとナポリタンドッグに、ホットドッグです!」
俺が好きな物しか販売しないからな。
その日の内にザックや子供達を連れて材料だけ買って家に戻る。
明日の朝また来ると伝えて俺も家に帰る
キースがうるさいからだ。
やっぱりキースは表で仁王立ちだ
え?今日はなんもしてないよ?
してないよね?
「ブラド神官、今日はどこで何をしていましたか?」
あ、なーんだ知らないのかー
「いえ、知ってますよ?それを貴方口から聞きたいのです」
え?
え?
悪い事してないよ?
僕は良いスライムだよ!
「貴方は人で、神官です。はぁ。なんで子供達を連れて大量に小麦粉や肉などを購入していたのですか?それも1日で消化仕切れない量を。」
あ、あぁ。
それね!
美味しそうだったからね!
ついね!
「次嘘ついたら張り倒します。何故ですか?」
キース君?
こ、怖いなぁ。
「あの、お婆さんが1人で30人くらいの子供の面倒を見ていてね?もう長くないからみんな成人できるかって心配しててね?仕事にもつけないし困っててね?だからその」
雇っちゃった!
「バカですか?雇っちゃった?勢いですか?勢いでしょう?貴方どこに属しているかわかってますか?教会の、しかも神官が、孤児の子供を集めて商売を始める!それを事後報告する神官がどこにいるんです!!」
こ、ここー!
なんて
うっそー!
ま、まった!
嘘が嘘!
ごめんなさい!
「はぁ、何故そのような事を相談もせずに?」
だって見てられなかったんだ。
あいつらちっこい癖に
自分達だって大して食ってないのに
みんなガリガリなのに
その婆さんの事みんな好きなんだよ。
万引きしたら婆さんが死ぬ程怒るのに
怒られてもいいからご飯食べてって
そう言ったんだよ?
見捨てられないよ...
でも、ごめんね?
「...わかりました。事情は教会には伝えておきます。明日行くのでしょう?私も見に行きますのでそのつもりで!」
いいの?
「良くないです!良くないですけど、神官がお決めになったのでしょう?見捨てないと。ならば補佐するのが仕事ですからね。と言っても限度はあります。教会の看板を汚すような事や、利益が全くでず赤字続きなら残念ですが諦めなさい」
...
「ありがとう、キース。初めて思ったよ、キースが補佐神官で良かったって!」
あ、あれ?
なんで怒ってるの?
素直な気持ち伝えただけじゃん!
あ、ダメ!
お尻は最近治ったばっかりだからぁああああああ!!
そうして翌日
真っ赤なお尻を抑えながらブラドとキースは婆さんの家に向かう
テクノブレイカーの天敵は子供。