第9話 『妨害工作』上
お久しぶりですね~
今日から3日連続投稿です。
最近、ある女子生徒――山本織姫がヤツに急接近し出した。織姫は、ヤツの彼女にでもなりたいようだ。俺は、それを止めなければならない。それは、とある事情を知ってしまっているからだ。たとえ、前世に織姫から虐められいたとしても――
前世でも織姫とヤツは、付き合っていた。正確に言うと、ハーレムメンバーの一員だったのだが。織姫は、チャラい性格をしており、髪の毛を染め、スカートはパンツが見えるんじゃないかというギリギリまで上げていた。そして、俺は織姫を含む、ヤツの取り巻きとヤツに虐められていた。
水を入れられた体操着の袋、何かするだけで彼女の派閥の子から「キモーい」「まじジャマなんだけどぉ」と言われる教室、etc.…
まあ、ヤツのイジメが1番酷かったから、織姫のイジメなんか可愛いくらいだったんだけどな。
俺は、大してヤツらのハーレム事情には興味ないし、関わるだけ無駄なので、関わらないようにしていた。
そんなある日、物凄いニュースが、噂に疎い俺の耳にも飛び込んできた。織姫が――妊娠した――とのことだった。噂を聞くに、ヤツとアンナコトやソンナコトをヤっちゃたらしいのだ。うん、普通に不味い。ヤっちゃったら子供ができるのは自然の摂理だが、いくらなんでも、にゃまはマズいと思う。俺は、ベガにも多少虐められていたが、織姫に同情してしまった。高梨、やっぱお前は屑だと。
そしてその噂が立った日から織姫は学校に来なくなった。それから何日かして、織姫は退学したと、剛力先生からホームルームで知らされた。
織姫について、様々な憶測が流れた。
高梨が揉み消すために金を使った、とか。何人もの男性と援助交際していて、子供の父親は高梨ではなくそいつらだ、とか。
真偽の程は定かではない。織姫の派閥はその後、No.2だった朝霞麗奈が何事もなかったかのように、トップに成り代わっていた。怖い。
織姫の両親はしつけに特に厳しくて、娘が高校デビューしてからはかなり関係が悪化していたという。妊娠が発覚した時、敬虔なカトリックだった母親が烈火の勢いで怒ったという。
結局、高梨はしばらく大人しくしていたが、何とか上手くやったのだろう。「織姫ちゃん、最近来ないね〜」とか平気でのたまう男だ。あくまで彼女の一友達でしたー、という風でいたのだ。
そもそも、現代日本の高校においてハーレムをつくるには、口先が非常に重要なのだろう。
彼女も被害者だと思った。実際に高梨が子供の父親だったのかはどうでもいい。このまま放っておけば、前世と同様に彼女が退学していってしまう可能性が高いのだ。偽善かもしれないが、手をこまねいているわけにいかない。
だが、虐めに関わっていたので俺は彼女に苦手意識がある。だから、こちらの正体を気取らせずに行動するのがいいだろう。
そんな俺の所に、タイミングよく、興味深いニュースが飛び込んできた。今度、2人が遊園地でデートをするらしいのだ。このことは、俺と仲のいい友達グループの子から聞いた。このグループだと何故か俺が中心になっている。これが、スクールカーストつてやつだろうか……。でも今はその話は割愛する。
俺は、その話を聞いた時、「へえ〜、そうなんだ~」と答えたものの、心の中ではニンマリしていた。ヤツのデートをぶっ壊してやるちょうどいい機会だ。デートを楽しみにしている織姫には悪いけれど、のちのち彼女の為にもなる。いくらヤツが女好きとはいえ、妊娠させたらポイする酷いヤツだからな。
◆◆◆
今日が、彼らのデートがある日曜日。普段なら昼近くまでのんびり寝ているのだが、俺は昨日、栗原さんに早く起こして下さいと頼み、6時起きしていた。
栗原さんが部屋から出ていったあと、俺は出かける準備をする。忘れちゃならないのは、変装道具だ。といっても、帽子とマスクくらいだが。俺は顔が売れているので、遊園地にいたとなると、誰かしらが写真を撮ってネット上にあげる。今はネットが発達しているのでインスタやTwitterなど情報拡散ツールはいくらでもあるから注意しなきゃいけない。政治家ならOKだけど、芸能人を許可を撮らずに撮影してアップするのは法律違反だったと思う。でも世の中そんな人はざらにいるのだ。というわけで、帽子とサングラスをを用意する。ちなみに、このサングラスは、人が多い所に行く時はいつも携帯し、毎回お世話になっている愛用品だ。そしてもちろん、日焼け止めを塗ることも忘れない。
波多野さんに頼み、遊園地まで開園前に着くように送って貰う。ちなみにこの遊園地は、小学生の時にドラマの撮影で来たことがある。波多野さんには、「お嬢様、突然遊園地に行くとはどうされたのですか? お友達も御一緒でしょうか?」と車内で言われたので、「ええ、そういったところね」と誤魔化しておいた。こんな優しい波多野さんに嘘をつくのは、心が痛むなあ……
帰りに迎えに来てもらう時間を伝え、波多野さんが運転する車は去っていった。それじゃあ俺は、待ち伏せするかな。鞄から帽子とサングラスを取り出して装着する。ヤツと織姫は電車で来るらしい(情報を仕入れた子が言っていた)ので、遊園地の最寄り駅の改札脇まで移動し、待機する。
遊園地開園10分前になったくらいに立て続けに2人が来た。
「お、ベガ来たか。ベガ、今日はよろしくな。」
「うん!……こちらこそよろしくね。」
ん? 織姫が照れている。こんなふうに、一人の乙女らしく顔を恥ずかしそうに赤らめることもあるんだ。彼女の一側面を知ってしまったな。 でも、ヤツが織姫にした仕打ちは、忘れちゃあいけない。ヤツは彼女をヤり捨てしたんだならな。
「それじゃあ、行こうか。」
「うん……♡」
それじゃあ俺も始めようか。ヤツの魔の手から彼女を守るための妨害工作を。
嫌な展開かもしれませんが、ベガはちゃんとハッピーエンドに持ち込みます。ざまぁされる予定なのは高梨だけです。