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第18話

投稿し忘れてました。申し訳ありません。

 今日俺は、陽菜ちゃんと一緒に織姫の家へ来ている。何故陽菜ちゃんも一緒にいるのか――この度「織姫復活作戦」を行なうにあたり、織姫の気持ちを理解してあげられる人が多い方がいいと思ったのだ。


 スピカさんも協力してくれることになっているが、彼女は実家を離れて一人暮らしをしているため、如何せん織姫や俺たちと簡単には会いづらい。理恵ちゃんの家も、織姫や俺の家と離れているため同様だ。


 そこで俺は、陽菜ちゃんを巻き込むことにした。もちろん、織姫には事情を話す許可をとってある。勝手に織姫の事情を話したら、俺は、おしゃべり女になっちまうからな。


 織姫には、陽菜ちゃんは高梨の外見に囚われず、中身のクズっぷりを理解している俺の親友だと話してある。陽菜ちゃんにはこのまえの高梨の階段の踊り場での発言を教えたから、陽菜ちゃんの中での高梨の株価は大暴落だ。俺が付き纏われてるって、前に言ってあったから、ただでさえ低かった高梨への陽菜ちゃんの評価は、最低レベル。今の彼女の高梨を見る目は、まるでゴミを見るかのようだ。

 

  本当は俺も素直に顔に出したいのだが、俺は学校でも有名になり過ぎているためにそうも明ら様な態度は出来ない。有名な美少女が「ぐいぐいしてくる人怖い…」とするから味方してくれる人が多いのであって、「来ないでよキモい!」とすれば自意識過剰等という人もいるかもしれない。


  子役をやってたお陰か、感情を顔に出すかどうかのコントロールも役にたってると思う。まあ、やつは、陽菜ちゃんの目線の変化に気づいてないようだけどな。


 それはそうと、最近の陽菜ちゃんの高梨への目線は、俺からするとほんとに怖い。表情がこわいんじゃなくて、なんていうか、冷たい目。ゴミを見るような冷めた目だ。俺があの目を向けられたら、ちびっちゃう気がする。元子役の美少女が学校でおもらしなんかしたら騒ぎになりそうだが(笑)。高梨、気づかないなんて鈍感過ぎだろ。


決行日である土曜日の午後、俺たちは執事の波多野さんが運転してくれる俺の家の車から降り立った。


「ごきげんよう。私は、嶺泉高校でお宅の織姫ちゃんの同級生の、久我美波と申します。」

「同じく私も織姫ちゃんの同級生の桃井陽菜といいます。」


いかにも専業主婦、といった感じのベガのお母さんは、娘から事前に聞いてはいたはずだが俺たちと車を見て目を白黒させた。



一言二言世間話をしていくと、どうやら気に入られたらしく目に見えて機嫌が良くなっていく。



「あら〜、お二人とも美人さんだねぇ。どうも、織姫の母です。ウチの織姫は見ての通り不出来ですけれど、これからも仲良くしてやってもらえたら嬉しいわ。」


「お母様、織姫ちゃんは不出来なんかじゃありませんよ。織姫ちゃんは――」


「いいよ、美波ちゃん。お母さんの口癖みたいなもんだから気にしないで。美波ちゃん、陽菜ちゃんあがってあがって。ほら、お母さんどいて。」


「あははは、それじゃあお邪魔します。私達は、織姫ちゃんの部屋でお勉強会をさせて頂きますね。」


  持ってきていた手土産を渡し、芳子さんが用意しておいてくれたおやつをありがたく受け取って、秘密の花園(ベガのへや)を目指して階段を上がっていく。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 親である私達に反抗するためか、高校にあがってから織姫は、髪を茶髪に染め、濃いめのメイクをするようになった。あの子は、乙女と勇士の妹なのに何をやらせてもできないから、⚫️⚫️先生の教育本を参考にして、高校に入ってからはとりあえず放置していたわ。まったく、絵なんかを描いてる暇があるのなら、兄や姉に追いつこうと努力するべきでしょう。


 そんな織姫が昨日、おかしなことを言い出したの。「明日、友達を家に呼んでもいい?」って言うから、当然、「友達と遊んでいるそんな暇があったら勉強でもしなさい」って言ってやったわ。

  だけど、織姫が言うには、明日家に連れてくる子のうち片方は、久我美波という成績学年トップで、物凄く美人な元子役の子らしい。実際に織姫の言う通りに美人かどうかはどうでもいいけれど、学年トップの子なら家に呼んでもいいかと思ったわ。織姫のことは放任とは言っても、親としては、子供にいい成績をとってほしいものね。勉強会っていうなら許可してあげましょう。


  もう片方の子は桃井陽菜といって、クラスで一番女子力のあるかわいらしい淑やかな子らしい。二人は仲良しで、ベガとも友達だというけど、本当なのかしら?


  ベガが言っていた日に、黒く光る綺麗な外国の車がやってきた。都内では片田舎と揶揄される地元では、一際浮いて見える。中からは二人の少女が降りてくる。先に降りてきたのはふんわりとした雰囲気の、低い位置でツインテールにしている可愛らしい女の子。後から降りてきたのは、お嬢様然とした正統派の美少女。


  少し話をしただけでも わかる、優秀さとお育ちのよさ。二人とも、素晴らしい親御さんに育てられたのだろう。

 

  ベガにも少し、その出来の良さを分けてくれないかしら。それにしても、ベガが()()()ちゃんとしたお友達をつくってくれて良かったわ!



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


  秘密の花園(ベガのへや)は、俺以外の女の子の部屋を詳しく見たことがないからわからないが…子役時代のドラマのセットやよくある創作物を参考にして考慮するならば、どこか寂しい部屋だった。


  ベガが普段使っている勉強机の横に、似たような作りの机がもう1つある。両方とも、かなり古いデザインであることから、親戚の誰かから譲り受けたものであることが推察された。


  椅子の背には、子供が拙くマジックペンで落書きをしてしまったのだろうか。それぞれ「ぺか゜」「すぴか」とある。まだ小さい妹が落書きしてしまったのをニコニコして許し、母親に叱られるのを慰める姉の姿が目に浮かぶようだ。


  ベガの机に教科書が立っていたりペンポーチが乗っていたりと生活感があるのに対して、スピカさんが大学に入るまで使っていた机はそのままとっておいてあるものの不自然に整っていて、やはりここに住んでいないのかと感じさせられた。

 

  二段ベッドも同様だ。下はベガが寝るために使っているようだが、上はなにやら箱がいくつか置いてある。


  畳んである丈の低い机を取り出し、カーペットと座布団の上に腰かける。


 織姫に伝えてある通り、2人には数学の問題集をひたすら解いてもらい、2人の分からないところには俺がヒントを出した。


 1時間くらいたっただろうか。そろそろ織姫に今日の訪問の目的を話そうかな。織姫には、勉強会をするとしか言ってない。

 

 陽菜ちゃんに目配せする。陽菜ちゃんは俺の目配せに気づいたのか、軽く頷く。俺たちの様子を見て不思議に思ったのか、織姫はキョトンと首をかしげている。


「あのさ……、織姫ちゃん。あなたのお姉ちゃん――スピカさんと昔みたいに仲良くなれるって言ったら……どうする?」


「え……。なんでいきなり……。そりゃ仲良くなれるんなら、昔みたいになりたいけれどさ、でもダメだよ。お姉ちゃんは、私はなんかと住んでる世界、視てるものが違うんだよ。だから馬なんて合いっこない。」


 彼女は手に持っていたシャーペンをぽとりと落とす。相当動揺しているようだ。


 んー、やっぱりそこまで思い詰めてたかー。織姫は、「自分なんかじゃ」って、自分を過小評価し過ぎなんだよね。やっぱり俺たちが織姫の認識を改めさせなきゃ。承認欲求があり過ぎたからこそ、高梨なんてやつに捕まっちゃったわけだからね。


そもそも、ベガは大器晩成型の努力家なのだ。絵ばかりにかまけていたのではなく、母親の期待に応えようとしてきていた。中学受験だって最難関級のアグネスを専願にしなければ他にいけるところがあっただろう。中学受験のことを理解していない親戚がそれを勝手に出涸らしだなんだと揶揄していただけだ。

上の中か下ぐらいの嶺泉高校に通っていることが、ベガが不出来ではない証拠の1つだ。


「それはさ、織姫ちゃんがそう一方的に思ってるだけかもよ?」

「うん。私もそう思うよ。美波ちゃんから織姫ちゃんのことしついて聞かせてもらったけれど、きっとスピカさんは、織姫ちゃんのことを出来の悪い妹だなん思ってないよ。お姉ちゃんってのは、妹のことを可愛く思うもんだよ。私も弟がいるんだけど、可愛いもん。」


「お、お姉ちゃんが私のこと、可愛いだなんて思ってるかな……?」


 うん。織姫にいろいろ言っても、そう状況は変わらないから、宣言だけして、織姫を今度スピカさんに会わせちゃおう!


「うん。きっと思ってるよ。だって、私、スピカさんともう会ってきて話してきたんだよ?」


「え!?」


 莉江ちゃん繋がりで(織姫は理恵ちゃんのことを知らないから、スピカさんの家庭教師の時の教え子って言ったよ)、スピカさんと会ってきて話をしてきた旨を話す。


「そうだったんだー……。私のいない所でこんなに……。」


「いない所で話を進めちゃったのはごめんね? 織姫ちゃんに話すと、会うのを断られるかと思っとんだよね。ほら、スピカさんに対して苦手意識持ってるみたいだし。」


「まあ、確かに私に最初に話を持ってきてたら断ってたかも……。」


「あとね、スピカさんってものすんごくシスコンなんだよ?」


「シ、シスコンって、あ、あの、お姉ちゃんが妹のこと大好きってやつ?」


 織姫のお姉ちゃん、頭良くて真面目なクールビューティーなのに、妹の織姫について熱く語るんだよ?俺もびっくりしちゃった。人は見た目じゃ分からないね(笑)ご本人には失礼だけど、ちょっと引くくらいの語り口だった。



「うちのお姉ちゃんが……?アグネスの聖百合が?」


「まあ、会ってみればわかるよ! 大丈夫、織姫ちゃんからじゃあ連絡しづらいだろうから、私達が会えるように算段をつけとくね!」

「うん! 私と美波ちゃんに任せて。仲を取り持つよ!」


「2人ともありがとう……。」


 こうしてスピカさんき会うことについて、織姫からの前向きな発言が聞けたので順調に進んでいると言っていいと思う。あとは、実際に織姫がスピカさんと会って、スピカさんからの愛情を織姫が感じることができれば、スピカさんとの関係は良好なものになるだろう。そうすれば、織姫の心情をわかってくれる、織姫に身近な人が1人増えて、織姫の自身への過小評価もなんとかなる。



 今週の土曜日。計画通りにいけば、この計画の『プランA』は達成できるはずだ。


誤字があれば、誤字報告していただければ嬉しいです。

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