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コンちゃんの幸せ

 さて、タキさんとコンちゃんが去った、根っこ広場では。


「タキさんって……タヌキだったのね」


「まあ、最初にコンに会った時、嫌悪感丸出しだったからな、あいつ」


「まあまあ、ライくん落ち着きなよー」


「そういや、タヌキも化けれるんだったな! すっかり忘れちまってたよ」


「た、大変な思いで、こ、ここまで来たんだね」


 隠れていたリコちゃん、ライくん、トイくん、スーくん、マイクくんがぞろぞろと出てきて、口々に言いました。


「願いも叶えて大丈夫そうだったしなー」


「そうだな」


 トイくんとスーくんの言葉に、みんなはうんうんとうなづきます。


「むしろ叶えない方が悪いわよ。それより……。

 ……コンちゃんのお人好しの理由って……そういうことだったのね」


「ああ、コンちゃん……可哀想すぎるよー」


「……そういやコンは、突然この森にやってきたからよぉ、どうしてなのかと思ってたが……まさか、捨てられてたなんて……信じらんねぇ」


「ぐずっ……コンはいっつも笑って俺のイタズラも許してくれるけど……ほんとはすっごく傷ついてたんだな……」


「でも……コンちゃんは、つ、強いねぇ……。ほ、本当に……優しいねぇ」


 コンちゃんの事を思って、リコちゃん、トイくん、ライくん、スーくん、マイクくんが口々に言いました。


「……無理しなくてもいいのによぉ、コンの奴……」


 そう言うトイくんに、リコちゃんは首を振ります。


「多分コンちゃんは……無理をしてるつもりじゃないと思うわよ。コンちゃんは多分、本気で自分を犠牲にしてでも、私たちに幸せでいてほしいと思ってる」


「コンちゃんが幸せじゃないと、僕らだってしあわせなんかじゃないやいっ!」


 珍しくトイくんが、語尾を伸ばすことなく喋ります。その声は、とても悲しそうで、苦しそうでした。


「でも……リコの言う通りだ。たとえ無理をしてるって自覚があったとしたって、コンは俺らが幸せならそれでいいって思ってる」


 スーくんが言い、マイクくんも考え込んでしまいます。


「こ、コンちゃんは……ほ、本当は我慢してばっかりで、苦しくないのかなぁ」


 うんうんとみんなは考えて、そして。


「……私たちも、根っこ広場に行きましょう。コンちゃんが幸せになれますようにって、お願いするの」


 リコちゃんが、そう言いました。

 たちまちみんなが賛成し、先に行ったコンちゃんやタキさんに気付かれないよう、後からドングリ池へと向かいます。


 一方その頃、コンちゃんとタキさんは。


「……コンさん」


「何でしょう?」


「……皆のために我慢ばかりして、苦しくないのですか?」


 タキさんが、森のみんなと同じことを考えていました。

 しかし、コンちゃんは目をパチクリさせて、次の瞬間には「ふふふ」と笑いだしました。


「いいえ! 私は毎日、とっても楽しいですし、幸せですよ?」


「……どうしてです?」


「リコさんの歌は毎日綺麗に響きますし、幸せにしてくれます。だから私はいつも、喉が良くなるように蜂蜜りんごの飴をリコさんに作るんです。ああ、もちろん他の方にも渡していますよ?

 トイさんはいつもたくさんのものを食べていますから、私にたくさん美味しい食べ物の見分け方を教えてくれます。だから私は美味しい食べ物を見つけたり作ったりしたら、一番にトイさんにあげるんです。もちろんその後に他のみんなにも教えてあげたり、作ったものを渡したりします。

 ライさんは暴れん坊ですけれど寂しがりやですから、一人ぼっちの寂しさがよく分かるんですね。だから私が一人ぼっちでいるといつもそばにいてくれます。だからライさんが暴れちゃった時は、今度は私が間に入って助けるんです。

 スーさんはいたずら好きですけれど、そのいたずらがみんなを笑わせて楽しませてくれるので、自分が仕掛けられる分には、ちょっとくらいなら我慢できます。他の方が仕掛けられた時には、仕掛けられた側の方には申し訳ないですが楽しませてもらったのは事実なので、その代わりに2匹の間に入って仲直りさせます。あと、たまに度が過ぎたいたずらの時をしていた時はちゃんと注意しますよ? ちゃんとスーさんもその時は反省してくれますしね。

 マイクさんは怖がりですけれど、勇敢なんです。本当に困っていることがあると、勇気を振り絞って助けてくれます。なので、マイクさんが怖がっている時には、逆に私が応援するんです」


 コンちゃんはニコニコ笑います。


「みんなが喜んでくれるなら、苦労なんて吹っ飛ぶんですよ。私はみんなに幸せをもらっています。ですから、同じだけ幸せを返してあげるんです。その中に少しくらい我慢や苦労があったって、喜んでもらえるなら私も嬉しいんですよ」


 タキさんはコンちゃんが幸せだと知ってホッとし、森のみんなのことをよく見ていることに驚きました。


(ああ、本当にコンさんは森の仲間が大好きなんだ。そして、きっと本当に幸せなんだなぁ)


 タキさんはそのことに気付き、自分のさっきの質問が少し恥ずかしくなりました。


「さ、ドングリ池はこっちですよ」


 コンちゃんに呼ばれて、タキさんはハッとします。そして慌ててコンちゃんの後を追いかけるのでした。

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