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いざ、ドングリ池へ

 そして、数日後。


「タキさん、いよいよ今日ですよ」


 その日、タキさんはコンちゃんの声で目を覚ましました。


「今日ですよ。ドングリ池で願いが叶う日です」


 それを聞いた瞬間、タキさんは飛び起き、つい直前まで寝ていたのが嘘であるかのように目を輝かせます。


「本当ですか⁉︎」


「ええ、本当ですよ」


 タキさんの頭の中は、ドングリ池のことでいっぱいです。


「コンさん、早くいきましょう!」


「タキさん、その前に朝ごはんですよ。身支度も済ませないと。今日は南の森に行くんですからね」


「南の森……ですか?」


 タキさんは首をこてりと傾けます。


「北の森があるなら、南の森もあると思いません? 川の向こうが南の森です。川の向こうには行ったことがないですよね?」


「ええ」


 ふふふ、とコンちゃんは笑います。


「さ、ご飯を食べましょうよ」


「そうしましょう」


 くるみと焼いた魚の干物を食べて、カバンにたくさんの果物や木の実を詰めて、空っぽのひょうたんの水筒を持って、いよいよ出発です。


「なんで空っぽなんです?」


「川で水を詰めますから。ここには水がないんですよ」


 言われてみればそうでした。

 ここにはシンクがあるのに水道は通っていないのです。そして今までは、コンちゃんが毎日川の水をたくさんのひょうたんに詰めて持ってきていたのです。


「それじゃ、いきましょう」


「ええ。道すがら、願い事を叶える手順もお教えしますね」


 いよいよ、ドングリ池へと出発です。


 まずは南の森に行くために、オンボロ橋を目指します。


「まずはオンボロ橋を渡って、南の森に行きましょう。橋は結構オンボロでオンボロ橋なんて呼ばれてますけど、怖がりのマイクさんですら渡れるくらいですから、大丈夫です」


「……本当ですか?」


「ええ」


 オンボロ橋、なんて聞いてしまえば、不安にかられてしまうのは当たり前です。でも、森の怖がりのマイクくんですら渡れるというのは……それは単純に橋を渡るのに慣れているせいでしょうか? それともマイクくんがクマなので、もし落ちても泳げるからなのでしょうか? それとも、本当に橋がそこまでボロボロでないのでしょうか?


「オンボロ橋を渡り終わったら、木の実の森にいきます。そこでドングリを拾いましょう。ドングリを池に投げ込まないと、願いは叶いませんから」


「分かりました」


「それから……おっと。オンボロ橋に着きましたよ」


 その橋を見たタキさんは、思わず絶句。

 だってその橋は、クマでしかも怖がりのマイクくんが渡れるというのが嘘ではないかと思えるほど、ボロボロだったのです。

 橋の下では、普段よりも量の増えた水がごうごうと流れています。

 タキさんは、怖がりのマイクくんがこの橋を渡れるのは、きっと慣れのせいだと思いました。


「……これ、本当に渡れるんですか?」


「ええ。ここと、こっちと、この辺と、この辺り、あとはこちらの方を踏んで行けば、ほら!」


 コンちゃんが踏んでいいところを、実際に橋を渡りながら説明してくれます。コンちゃんはあっという間に南の森に着いてしまいました。


「私は水を汲みますので、タキさん、橋を渡ってきてください!」


「ええーっ! ……わ、分かりました!」


 コンちゃんで水を汲み始めたのを見て、タキさんはコンちゃんが歩いたところを、そろーり、そろり、歩いていきます。渡らないと、ドングリ池には行けませんからね。

 そろーり、そろり。

 そろそろり。

 なんと、橋を渡るのに、コンちゃんが使った時間の3倍ほどの時間を使ってしまいました!

 でも、コンちゃんにとってはちょうど良かったようです。タキさんが橋を渡り終えたと同時に、橋に戻ってきました。


「よかった、無事に渡れたようですね」


「怖かったですよ……この橋、ドングリ池にお願いして直してもらいません?」


「うーん……私たちとしては、このぐらい壊れていた方がありがたいんですけどねえ……」


 タキさんは考えます。

(こんなにオンボロだと、動物たちだけしか渡れない。人間でも渡れるけれど……多分普通なら怖がって渡らない。……ああ、だからありがたいのか)


「じゃ、やめておきましょうか」


「ええ、そうしましょう」


 そしてコンちゃんとタキさんは、そのまま木の実の森へと向かいました。

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