表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を希望します!  作者: 黛ちまた
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/360

075.虹色の魔石と赤い糸

 剣術大会も無事に終わり、週末を迎えた。


 一体どんな無理難題を言われるのかと戦々恐々としていた私に、ルシアンは魔石を作りましょう、と言った。

 なんだろう、その散歩でも行こうか、みたいな軽さは。


「魔石?」


 はい、とルシアンは頷く。


「先日読んでいた書物に面白い記述があって、是非ミチルと試してみたいと思ったんです」


 面白い記述? なんだろう??


「私もミチルも、作れる魔石は黄色でしょう?」


 頷く。

 そう、私もルシアンも魔石は黄色だ。


「虹色の魔石が作れるのです」


 虹色?!

 そんなものが作れるの?!


「カーネリアン先生にも質問して、作り方が判明したので、ミチルも試してみたらどうかと」


 へぇーっ。

 魔石も色々あるんだね。

 ……で終わる訳はないですよ。


「ルシアン、何を企んでいるのですか?」


 このイケメンが、何の脈絡もなく魔石を作りましょう、珍しい色なんですよ、なんて言う筈ない。

 絶対何かある筈。


「ミチルはごまかせませんね」と言ってルシアンは苦笑した。


 ほら、やっぱり!


「人生で一度だけ、ある方法を用いると虹色の魔石を作れるのです」


 へぇ。

 人生で一度だけ。

 それだけで普通じゃない感出てます。


 部屋から出て行く前に、セラが淹れてくれたお茶を飲む。


「その魔石は食べられるんですが、自分が食べても意味はありません」


 ふむふむ?

 食べれる魔石とな?

 一生に一度しか作れない上に食べられる??


「自分以外の他者がその魔石を食べると、魂が結びつき、来世でも出会える、と言われています」


 え、何その乙女チックな話。


「……ルシアンは私の虹色の魔石を食べたいと言うことですか?」


 ルシアンって、結構こういうの好きだよね。


「はい。出来れば私のをミチルに食べていただきたいとも思ってますが、それは無理強いはしません。ミチルの魔石だけいただければそれで。

それを、剣術大会で優勝したご褒美にいただきたいのです」


 また、そうやって。

 ルシアンはいつもそう。

 私のことを好き好き言うけど、自分にもその気持ちを向けて欲しいと言う欲求が薄い。


「来世で私がルシアンに気付かなくてもいいのですか?」


「私が見つけます。見つけて、絶対に逃がしません」


 ……そうでした。

 ルシアンはこういう人でした。


「それなら、私もルシアンの魔石をいただいた方がいいのでは? その方が私もルシアンと出会えるのでしょう?」


 どちらかと言うとそっちの方が重要なんじゃないだろうか?

 来世もイケメンに転生しそうなルシアンと、どうなるか分からない私だったら、そのチートな技は私が持っていた方が良いような気がしてならない。

 でも、見つけられるだけなのかな?


「受け取って下さるのですか?」


 驚いてるし。

 なんでそこで驚くかな。


「それは、出会うだけなのですか?」


 前世の記憶がなかったら、いくら出会えてもなんだか駄目なような気も……いや、出会えるだけで幸運なのか?


「そこまではカーネリアン先生もご存知ありませんでしたね」


 そっかー。

 私としては、出来たら来世もルシアンと出会って、前世の記憶もあって……っていうのがベストだけど、そんな美味しい話はないか。


 なんとなくご機嫌度がアップしたように見えるルシアンから、虹色の魔石の作り方を教わる。

 身体中を回る魔力を心臓に集め、それから、足から順に頭に向けて魔力を流していく。

 これを七回繰り返し、頭にいった魔力を心臓に戻し、魔力を球体になるようにイメージしてから、そのひと欠片を魔石にする。

 そうすると虹色の魔石が出来るらしい。

 不思議だ。

 聞いてる限り、そんなに難しそうには思えない。




 いやいやいや、なにこれ……。

 朝からずっとやってるけど、出来ないんですよ、虹色の魔石……。

 黄色い魔石ばかりが出来ていく。


 ルシアンは気にした風でもなく、「お昼にしましょう、疲れてるでしょうし」と休憩を提案する。


 お昼はサンドイッチにしてもらったので、取りに行って来ます、と言ってルシアンは部屋を出て行った。

 立ち上がってお茶を淹れる。


 うーん……虹色の魔石。

 聞いている通りにちゃんと魔力も流せているし、集まった魔力からひと欠片取り、魔石にするのも出来てるように思えるのに、何がいけないんだろう?

 気合いか?

 気合いなのか?


 私はルシアンが戻って来る前にもう一度試してみることにした。

 魔力を心臓に集め、足から頭に向けて魔力を流し、また心臓に戻し…これを七回繰り返す。

 心臓に戻した魔力を丸めて、まん丸になるようにイメージしていく。


 虹色の魔石……。

 これがあれば、私は来世でもルシアンと出会うことが出来る!

 お願い、虹色の魔石になって!

 どうか私を来世でもルシアンに会わせて下さい! そしてあわよくば、前世の記憶を二人とも持ってますように!!

 強く強く、己の欲望を念じてから魔力のひと欠片を魔石に変えていく。


 そっと目を開けると、手の上に虹色の魔石があった。


「……っ!!」


 出来た!

 出来たよ!!

 私が来世でも、ルシアンと出会えるチートアイテムが!

 本当か嘘か分からないけど、虹色の魔石は出来た!


「やったー!」


 魔石を握りしめて飛び跳ねて回転していたら、ふふっ、と笑う声がして、ぎくっとした。


 こ、これは……。


 そっとドアの方を振り返ると、ルシアンが肩を震わせて笑っていた。


「る、ルシアン……いつからそこに……?!」


「やったーのあたりから」


 ええええええ?!

 一番見られたくないとこから全部見てるじゃないですか?!


「喜んで跳ねるミチルがとても可愛くて、見ていたのですけど、あまりに可愛くて笑いが堪えられなくなってしまって……」


 いいから! それ以上言わなくていいです!!


 ルシアンはドアを閉めると、バスケットをテーブルの上に置いた。

 料理長が作ってくれたサンドイッチがたっぷり入っている。

 私は赤い顔のまま、しれっとお茶をルシアンに出し、椅子に座った。

 ルシアンは私の横に座ると、私のおでこにキスをする。


「出来たのでしょう?」


 虹色の魔石のことだろう。


「いただけますか?」


 私は頷き、ルシアンに魔石を差し出す。

 手のひらの上で虹色に光る魔石は、パッと見、オパールのようにも見える。

 ルシアンは私の魔石を手にすると、魔石にキスをした。

 どきっとする。

 自分がキスされたみたいな気持ちになる。


 ぎゅっと魔石を握ると、ルシアンは目を閉じた。

 祈るように、魔石を握った手を額に当てる。


 ……あの、喜びすぎだと思う……。


「ありがとうございます、ミチル」


 ルシアンは手の中の私の魔石を口に入れる。ルシアンの喉が上下した。飲み込んだのだと思う。

 次の瞬間、私の心臓がどくん! と跳ねた。


「?!」


 え、何?!


 身構えるものの、それ以上は何もなかった。


「ミチル、口を開けて?」


「?」


 なんだろう、サンドイッチはまだバスケットの中だけど。

 ルシアンは胸ポケットから虹色の魔石を取り出した。


「それは……!」


 ルシアンの虹色の魔石?

 あれ? もう作ったの? 作ってあったってこと?


「あーん」


 控えめに口を開けると、ルシアンは魔石を私の口の中に入れた。

 驚いたことに、舌の上で魔石が溶けた。


「?!」


 味はなかった。

 溶けてしまったけど、液体になった風でもないので、どうすればいいのか分からない。

 そう言えばさっき、ルシアンが嚥下した時に、私の心臓がどきっとした。

 同じようにすればいいのかな?

 そう思って飲み込んでみる。


「!」


 ルシアンはちょっと目を細め、俯いた。

 あ、ルシアンも同じようになったんだ。


「ルシアン、大丈夫ですか?」


 だ、大丈夫かな?

 ルシアンの顔を覗き込む。

 顔を上げたルシアンは、とろけるような目で私を見る。

 な、何?!


「これで、ミチルは永遠に私のものですね」


 え、永遠?!

 いくら来世でも出会えるからって、そんな大袈裟な……。

 ……大袈裟……。

 ……まさか?!


「こ、この虹色の魔石って……」


 ルシアンが、不確かな情報だけで動く筈がない。

 ある程度の確証を得てから私にこの話をした筈。


 ルシアンは嘘は吐いてないんだと思う。

 ただ、教えてくれた情報が断片的なだけで。

 カーネリアン先生は、虹色の魔石の作り方は知っていても、詳しい効果を知らなかった。


「私だけがミチルの魔石を取り込めば、私は来世以降もミチルを見つけ出すことが出来る。

お互いに取り込んだ場合は、魂が結びついて、来世以降も必ず出会うのです」


「?!」


「私の魔石は、ミチルが眠っている時にでも口にしていただこうかと思っていたのですが……」


 さっきいただきましたね……。

 自分から下さいって言っちゃってるしね……。

 っていうか寝てる時って、私の意思は無視ですか……。

 それ普通に無理強いって言わない……?


「来世の私を、ルシアンが好ましく思うか分からないではないですか?」


 ご機嫌なルシアンはバスケットからサンドイッチを取り出し、テーブルに並べていく。


「記憶は引き継がれます」


 ルシアンの手からサンドイッチを餌付けされている間にしてもらった話では、ルシアンはゼファス様──マグダレナ教会に援助をする代わりに、各地の転生者や、転生に関するありとあらゆる情報を集めてもらったらしい。

 その結果は一つ一つは大したものではなかったけど、まとめてみた結果、ルシアンは一つの結論に至ったという。


・虹色の魔石は魂の一部を結晶化したものである。

・作成できるのは、一度のみ。

・虹色の魔石を他者が口にすると、口にした他者は、魔石の主が何処にいるのか分かるとのこと。

・お互いに虹色の魔石を取り込んだ結果、魂が欠けた魂を引き寄せる為、生まれ変わっても絶対に近くに生まれること。そして、前世の記憶を保持すること。


 どうも、過去の転生者で来世も記憶を持ち続けたいと、生涯を研究に捧げた人が何人もいたらしい。

 そういった人たちの研究結果を、ルシアンは手に入れたのだそうだ。

 ははぁ……みんな、色々考えるもんだなぁ……私なんて、なったらいいなーぐらいしか思わなかったって言うのに。


 前世で言うなら、運命の赤い糸みたいなものを、ルシアンは己の意思で作った、っていうことか。

 それにしても……病んでるというか……ルシアンがこんなに私を好きだとは思わなかったよ……。

 永遠て……。


「ルシアン……私のこと、好きすぎじゃありませんか?」


 今生は良いとして、来世でもっと好きな人が現れたらどうするんだろう……。


「私がこの記憶を持ったまま、ミチル以外を愛する筈ありませんよ」


 そうかなー。

 そんなの分からないと思うけどなー。


「ミチル、私にも食べさせて下さい」


 言われるままにサンドイッチをルシアンの口に運ぶ。


 やってしまった後だから、取り返しもつかないんだけど、いいのかな、コレ。


「そんなに嫌でしたか?」


 子犬みたいな顔をするルシアン。

 もー、それ卑怯だから!


「私はいいのですが、ルシアンの方が大丈夫なのかなと、そればかり気になります」


「私が望んだことなのに、私の心配をミチルがするんですか?」


 当然でしょう。


「来世の自分に自信がないです」


 ルシアンに好きになってもらえるかな……何で来世の心配までしなくちゃならんのだ……。


「最も心配が不要な部分ですよ」


 ルシアンが私の指を舐めて、びっくりして我に返った。


「!」


 私の指に垂れた照り焼きチキンのソースを、ルシアンが舐めたのだ。

 って言うか、いつのまにか私、ルシアンにサンドイッチ食べさせてるし!

 もしかして考えごとしてるときに誘導された……?


「あ、気が付きました?」


「……っ!」


 ルシアンはふふ、と笑う。


「今回は随分長い時間考え事をしてましたね。

私にサンドイッチを食べさせて下さいましたし」


 ……ルシアンは、私の悪い癖を、上手くコントロールしすぎだ……。


 はぁ……もう、考えても仕方ない。

 終わっちゃってるし。


「……ルシアンが、もうミチルに飽きたって思っても、私はルシアンに付き纏いますからね……観念して下さいませ」


「はい」


 満面の笑みを浮かべて、ルシアンは私にキスをした。


ルシアンは…恐ろしい程に…ミチルが全てなのです…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ