表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を希望します!  作者: 黛ちまた
学園編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/360

035.食料自給率アップを目指します!

大事なことです、食料。

 領地経営とはなんぞや。

 私が知るのは組織運営ぐらいである。

 それも限られた人数の、組織運営をするボスの仕事が恙無く行えるようにする為のサポート。

 かたや領地経営とは、そこに生きる人たちの生活を支え、領地の将来のことを考えて、有事の際の備えをし、治安や衛生面、食料事情を守るなど、多岐に渡る。

 こんなことなら、戦略シミュレーションゲームにも手を出しておけば良かった。

 何も知らん今の状態よりはいくらかマシだったのではなかろうか。

 乙女ゲーは、ひたすら攻略対象しか見てないからね!


 カーライル王国は多民族国家ではない為、文化、慣習が単一である。

 これは領地経営においてやりやすい。

 民族が異なれば、文化や慣習、信仰が異なる。そうなると考え方が異なるということだから、他民族間での摩擦も増える。

 双方を尊重しつつ集合体を運営するということは、思う以上に難しいことだ。

 前世では、結局その運営が出来ずに弾圧を繰り返した独裁国家は少なくなかった。

 多様性を認めるということは、そんなに容易いことではない。


 アルト侯爵領も勿論単一民族により形成されている。

 カーライル王国は特に宗教色の強い国ではない。というより、あまりそういった文化がない。

 人の心の拠り所となる宗教の存在感が薄いのは、良いことなのか悪いことなのか。

 暴利を貪るような宗教団体であれば、無いに越したことはない。

 ただ、心の支えがないということは、何かが起きて、例えば大飢饉が起きるなどがあった場合に、暴動は起きやすくなるのではないだろうか。

 何故なら大抵の宗教は目先の辛苦を、神があなたに与えたもうた試練、といって我慢を望むからだ。

 それがないということは、不満の矛先は全て領地を運営する貴族に向かう。

 こちらの世界では貴族は絶対的権力者であるから、そうそう平民が貴族に対して反抗することはないとしても、生きるか死ぬかの極限状態に追い込まれたなら、それは絶対ではないだろう。

 どうせ死ぬなら、と自暴自棄になることは容易に予想される。


 アルト侯爵領は3つの領地を持つ。

 その内の一つをルシアンは預かっているということだった。

 ルシアンが預かる領地はカーライル王国の中でも北に位置し、冬になれば雪に領地の大半が埋もれてしまう、耕作可能エリアも少ない、かなり厳しい領地だった。

 アルト侯爵は管理しやすい南の領地を勧めたようなんだけど、最初から簡単な領地では、領地経営そのものを無意識に誤認識しそうだから、難しいぐらいが丁度いいと断ったらしい。

 凄いな、この16歳?!


 過酷な環境下というのもあって、人口は少なく、凍死してしまう領民も少なくないという。

 初夏にようやく雪が解けたところで、大慌てで野菜を作るらしい。

 ただ、その夏も短いので、領民たちは結局食料をアルト侯爵領の別の領地から買い付けるしかないのだそうだ。

 これは、辛い。

 真冬時には豪雪で家の1階部分は埋もれてしまい、家から出られないとのこと。

 日本の豪雪地帯も凄いことになってたもんなぁ…。

 あまりの豪雪っぷりに倒壊する家も多く、春には家を建て直す為に木材が必要となるのだが、あまり木材を伐採すると山の斜面が滑りやすくなり、雪崩が起きたときに、木があるとないとでは被害も大きく変わるし、木があることで山が持つ水の貯水量も変わる。

 そうなると山の木の伐採量も管理しなくてはならない。


 初っ端から難易度高すぎて目眩がした。

 ルシアン、これ本当に何とかするの?

 アルト侯爵でも上手くやれてないんでしょ?

 領民は自分たちの土地の厳しさが悪いのであって、過去の領主のように何もしてくれないのではなく、ちゃんと生きる為の食料を配給してくれるアルト侯爵に感謝していた。

 かつては別の貴族が治めていたが、領民を顧みず、己のことのみに財を費やし、最終的には領民の反乱に倒れた。

 王室としてもあまりに難しい土地であるが故に、適当な貴族を見つけては領地として与えようとしたが断られ、結局アルト侯爵に引き受けてもらった訳だが、さすがにそれも申し訳なさすぎるということで、南の領地も一緒に賜ったのだそうだ。


「この領地が抱える問題点は、まず第一に食料問題です。領民から納付された財源の殆どは冬を越す為の食料を購入する資金に回ります。

それから、倒壊してしまった家屋の補修に回すと、残りません」


 温室でも作れるならまだ食料自給率も上がろうものだけど、一年の半分が雪の中ではなぁ……。


「第二が野生動物の凶暴化です。野生動物にとっても過酷な環境な為、畑を襲って食料を奪うのです」


 きゃーーっ!!!

 なんて恐ろしいの!!

 作っても作っても足りないなんて!


「命がいくつあっても足りませんね……」


「厳しい環境です。

とりあえず食料問題を解決したいと思っているのですが、いかんせん耕作可能期間が短いですからね」


 そういえば、前世の北国はきのことかの名産地だったなぁ。


「ノウランドの山ではきのこは取れますか?」


 その北国の名前はノウランドという。


「きのこですか? えぇ、山で採れるようですよ? それがどうかしましたか?」


「きのこも食べてるんですよね?」


「そうですね。乾燥させて食べるようです。」


 乾燥きのこの入ったチーズリゾットとか美味しそう。


 きのこの入った炊き込みご飯とか、きのこと魚のホイル焼きとか、大根を摩り下ろした鍋にだしと醤油で味付けして、きのこをたっぷり入れて煮る。

 みぞれ鍋ですね。

 冬に食べると本当美味しい。


 マッシュルームのアヒージョとかも美味しいし。


「今度きのこ料理作りますね」


 ルシアンは微笑んで、是非、と頷いた。


 冬の山だと、あとは何だろう。

 ジビエとか?

 ノウランドの生態系と、食生活を知りたいなー。

 太陽光を浴びなくても育てられる野菜……。

 もやしとか、ホワイトアスパラガスかな。

 ただ、その場合は電気による光が必要だったような……。

 前世の電気って、本当凄いものだったんだなぁ、と今更しみじみ。

 野菜類は購入したとして、日持ちしないだろうと思うんだけど、そのへんどうしてるんだろう?


「購入した野菜はどうやって保存してるのですか?雪の中に埋めているとか?」


 雪の下人参的な。

 甘さ増しちゃって美味しい。


「乾燥させてるようです」


 乾燥もいいけど、乾燥させちゃうと野菜の栄養価の殆どがなくなっちゃうじゃん。

 ザワークラウトとか、キムチとか、漬物とか、ピクルスとか、そういった発酵食品の作り方、本に書いてあったりしないかな。

 さすがにそこまでやったことはない。知識でしか分からない。

 ぬか床は作ったことあるけど。あとピクルスぐらいか。

 それもちょっとうろ覚えだ。

 ザワークラウトなら、船乗りに必須の筈。そのへんに聞けば分かるかな?

 魚類を発酵食品化させるのもあったなぁ、そういえば。


「ルシアン、ノウランドの食生活が知りたいです」


 それならこちらにありますよ、とルシアンが机の引き出しから出してくれた書類は、ノウランドについてまとめたもののようだ。


 山に存在する鹿や猪を罠で狩り、きのこや木の実を冬に向けて採取する。

 鹿や猪の肉は燻製にされることが殆どで、その臭いはきつく、ノウランド住民でなければ食べられない程、野性味溢れる臭いだとのこと。

 きのこも乾燥させ、木の実はすり潰して粉にし、液体と混ぜて平らに伸ばして焼いて食べる。

 野菜類はそのほとんどを輸入に頼り、領地内で取れた野菜は栄養価は高いものの、少量の為直ぐに枯渇する。

 領民が罹患する病気の大半は心臓関連で、凍傷による壊死などで身体の一部が欠損しているものが少なくない。

 男は山で捕獲した獣の皮や毛などを街などで売ることを生業とする。ノウランドの皮や毛の質は良い為、高値で売れるが、彼らには学がない為、金額をだまされることが多い。

 女は布を織り、畑を耕し、子を産み育て、家事をする。

 色々厳しい!

 これだけ厳しい環境下では子供を学校に通わせるとかも難しいだろうし。

 何処から手を付けるのが正解なんだろうな、コレ。

 あ、食料自給率アップか。

 お米とか育てないのかな。

 ノウランドの地図を見ていく。


「耕作可能な期間は短いですが、土地は広いですよ」


 お米をと考えると、平地が望ましい。


「この辺が平地ですか?」


「そうです、ただ、この辺は土が畑に適していないので、放置されていますね」


 適してない? と聞くと、柔らかすぎるようです、と教えてくれた。


 水田にぴったりじゃないの。

 山から流れる川から近いことが、ここの土を柔らかくさせているのかも知れない。


「ルシアン、水田というものをご存知ですか?」


「いいえ、それは何ですか?」


「あちらでは、東北……北国はお米の名産地であることが多いのです。

多分、山の栄養を雪解け水が含んでいて、それが川に流れ、その水をたっぷり吸うのでお米が美味しく育つのだと思います。

こちらのお米は水田に適していないかも知れないので、探さないといけないかも知れませんが」


「もう少し詳しく伺ってもいいですか?」


 水田に興味を持ってくれたらしい。


 紙に絵を描いていく。下手だけど。

 山からの水が流れる川をひいて、敢えてその水を水田の中に一定量溜めておくものなのだと説明する。

 ただ、そんなに人を配置出来ない筈だし、虫だって付くだろうし。

 虫は合鴨農法でいいかも知れないけど、野生動物に襲われる可能性がなぁ。


「これは、なかなか良さそうですね。問題点は米につく虫と野生動物ですか?」


「はい、畑仕事をするのが女性ばかりとなると、これだけの大きさの畑を見るのは難しいですから。

そういえば、合鴨農法というものがありましたよ」


「合鴨農法?」

 

「合鴨を水田に放っておくのです。逃げられないようにはしておいた上でですが。合鴨はお米についた虫を探して食べてくれるんですよ。夜になったら合鴨は小屋にしまわないといけませんけど」


 そしてある程度経つと合鴨は美味しくいただかれちゃうんだけどね。

 食料が少ない環境下では家畜を飼うこともままならないだろうけど、これなら合鴨を飼えるし、餌代いらないし、最終的に良質なタンパク質になるし、良いことづくめだ。


 ネズミとかモグラが米を狙わないようにする為に、畑の周りに彼岸花を植えたりするのも知恵だったなぁ。


「ネズミやモグラ対策として、畑の周りに彼岸花を植えると、彼岸花は毒を持ってますから、彼岸花をかじったネズミたちは死んでしまうんですね」


 珍しくルシアンが感心したような表情をしている。

 大抵のことを知ってるルシアンなので、こんな表情は本当に珍しい。


「大変理に適っていますね。それだとネズミやモグラの魔石も採取出来そうです。

最低限の手数で最大限の効果を発揮する、素晴らしいですね」


 魔石が採取出来るならやってみたいことがあるよ。

 魔石の電力?で除菌と温度調節したい。


「室内の温度がどれぐらいなのか分かりませんが、部分的に25度ぐらいを維持出来るなら、光がなくても水だけで作れる野菜がありますよ」


「それは何と言う野菜ですか?」


「豆もやしといって、大豆を使うのが多いみたいです。

大豆を、雑菌が繁殖しないように、日に当てないように育てると一週間ぐらいで豆もやしが出来ます。

雪を溶かせば水は沢山あるので、いいかも知れませんね」


 シャキシャキして、豆の部分も大豆なだけあって栄養価も高くて、美味しいんだよね。

 茹でたのを水を切って、塩とごま油で味付けしてゴマをかければもやしのナムルですよ。

 少しの野菜と、たっぷりのもやしと、すりおろした山芋をかけたお鍋とかも美味しいし、いいかも。

 お味噌とかあるといいんだけどなー。

 とりあえずお米ともやしとお味噌をノウランドに取り入れてみたい。

 お米が採れるようになったら、脱穀後の藁を牛や馬に食べさせるのもいいね。牛が育てば牛乳飲めるし。牛乳出来たらヨーグルトやチーズ作れるし。

 そんな話をルシアンにすると、ルシアンは笑顔で頷いた。


「いいですね、ノウランドの民の生活が豊かになります」


 それから、とりあえず何を準備すべきかをまとめると、それをロイエに渡した。


 ・水耕栽培に適した米を探す

 ・大豆を手に入れる

 ・ザワークラウトの作り方を調べる

 ・合鴨の確保と飼育方法を調べる

 ・彼岸花の入手


 目指せ、ノウランドの食料自給率アップ!



誤字脱字報告ありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 宗教の必要性が薄いのは良いことだネ。人は自分たちではどうにもならないものに直面すると神頼み始める生き物だからね(・ω・)
[気になる点] コメは元々亜熱帯の植物で、夏(暑い時期)の期間と気温が重要です。水田の水の温度も生長に重要で雪解け水等の低温度の水を利用する場合は、直に水田に引かず一旦貯水地などで溜めて水温を上げてか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ