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転生を希望します!  作者: 黛ちまた
学園編

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022.モブですが何か?

 不貞腐れた私とルシアンの顔を交互に見て、笑いが堪えきれなくなったアルト侯爵は、顔を背けて必死に笑いを殺しているが、肩がかなり震えてるからね。

 うふふっ、殺意芽生えちゃうなー。


 頭にきたので「お父様、笑いすぎですわ」と、敢えて嫌味でお父様呼びしてみた。


「いや、すまない。冗談でルシアンに言ったことがまことしやかに噂になってると聞いて、ミチル姫は怒ってるだろうし、ルシアンは幸せそうにしてるだろうと思っていたら、本当にそのままだったものだから、ちょっとね。くくっ」


 侯爵夫人も怒るどころかにこにこしている。

 どうなってるんだ、この夫婦は……。


「ルシアンも、ほどほどにな?」と注意になってない注意をする侯爵に、私はため息しか出なかった。


 こんな不本意な噂が立ってすぐに、うちの両親から来た連絡は、さっさと結婚しなさい、だった。

 逃がしてはならない、みたいな印象を受ける手紙だった!

 いやいやいや、親なんだからさ、抗議しようよ?! 結婚前にそんなことになったのは本当なのか?! どういうことなんだ?! ちゃんと責任取ってもらえるんでしょうね?! みたいなさ……。

 ……あぁ、結局同じことか……がっかり……。


「アレクサンドリア伯からも催促のご連絡をいただいているからね、早くウェディングドレスを仕立てなくてはね。招待客に関しても、私とアレクサンドリア伯との間で決めておくから心配はいらないよ」


 キレイなドレスを作りましょうね、とウキウキしちゃってる夫人に、はは、と乾いた笑顔しか向けられなかった。


「ミチル姫は、結婚に際して、何かご要望はおありかな?」


 そんなの、色々あるに決まってるがな!!


「ルシアンから聞いてる限りでは、姫専用のキッチンと、今後使うことになるだろう研究室を屋敷に用意する予定なんだが。それから、寮で仕えているエマという侍女を伯爵から当家に雇用し直すこと。

それ以外に何か思いつくものはあるかい?」


 おお……。まさかエマのことまで考えていてくれてたとは……。ちょっとミチル感動。


「そこまでご対応いただけるのであれば、私から他にはございません」


「何かあったらすぐに言うようにね」


「ご配慮ありがとうございます」


「いやいや、なに。愚息が本当に申し訳ないね」と、またにやにやし出した侯爵。


 私の殺意を感じたのか、ふふふ、と笑っていたが。







 ウェディングドレスは全額アルト侯爵家が持つということになっているようで、デザインに関しては侯爵夫人と私の二人で決めることになった。っていうか夫人が。


 あーでもない、こーでもない、で時間ばかりが過ぎていき、着せ替え人形の私は大分疲弊していた。

 そんな私を見て、ルシアンが言った。


「母上、ミチルが何を着ても似合うので悩む気持ちは分かりますが、主役はミチルなのですから、ミチルの意見を聞いたほうがいいと思います」


 ね、と微笑みかけてくるルシアン。


「ちなみに花婿としては、このあたりのデザインがミチルの清楚さを活かしていて、良いと思います」


 そう言ってルシアンが出したデザインは、エンパイア(胸の下で絞って、そこから流すタイプのドレスをそう呼ぶらしい)タイプ。

 Vネックの胸元には邪魔にならない程度の緩めの刺繍、袖は肘の上までの五分丈で、肘に向かってレースが広がっており、胸の下の絞る部分にはレースの花が施され、胸より下はシルクのスリープドレスの上に細かい刺繍がされたレースが重なり、とても品がいい。

 ベールはヘッドドレス付きタイプで、横の髪を後ろに編み上げた所にベールのヘッドドレスの花飾りを差し込む。長さはかなりあって、ドレスより長い。

 ……踏みそう!

 でも、可愛さと大人っぽさもあって、ステキだ。こんなステキなドレス、私なんかが着ちゃっていいのかな?


「本当、とても似合いそうだわ。いかが?」


「えぇ、凄く、ステキですね」


 似合うとは思えないけど、やはり私にもある乙女心が、このドレスをステキだと言っている。


「ではこちらにしましょう」


 夫人は仕立て職人に、ウェディングドレスとタキシードとその他小物のオーダーを次々と出していく。

 決まり始めると早いもんなんだな、こういうのって……。

 それをルシアンとお茶を飲みながらぼんやりと見つめる。


「ミチルの知るもう一つの世界では、結婚はどのような感じなのですか?」


「結婚式全般を統括してくれる営利組織があって、どのような結婚式にするか、誰を招待するか、来て下さった方に渡す物を何にするか、どのような料理を出すかを決めていくのです」


 式そのものも、神前式やら人前式やらレストランウェディングやら、色々ある。

 分かりやすいのは神前式かな、と思ったので、その説明をしていくと、ルシアンは「その指輪の交換というのは、どういう意味を持つのですか?」と聞いてきた。


「左手の薬指は心臓に一番近いと言われている指で、その指に結婚指輪をはめることで、相手の心を自分のものにする、そんな意味だったかと。

あと、左手薬指に指輪をしている人は既婚者の証なので、相手の心うんぬんよりも、こちらのほうが意味合いとしては大きかったと思います」


 まったく夢のない説明で申し訳ない。

 でもその既婚者の証すら意味のない人たちもいた訳で。


「その結婚指輪というもの、いいですね。作りたいです」


 ルシアンが心臓うんぬんと既婚の証のどちらに興味を持ってそんなことを言っているのか分からないけど、そんなのがない世界でお揃いの指輪とかさ、バカップル全開じゃない!?


「ただでさえ学生でありながら結婚していて、指輪だなんて、いくらなんでもあからさますぎませんか?」


 さすがに恥ずかしい!!


「ミチル、ご存じないようなので説明しておきますと、学園に私たち以外の既婚者はいますよ?」


 うっそ?!


「先生ではなくてですか?」


 話を聞いていくと、王族なんかでは7歳ぐらいで婚姻を結ぶ場合もあるようだ。

 ただその場合、離婚する可能性も上がったりするので、学園でお互いの人となりを知ってから、というのが主流にはなっているものの、今でもあるにはあるらしい。

 そりゃそうか。貴族だものね。


 私のクラスにも、ルシアンのクラスにも、既婚の生徒はいるとのこと。

 同じ年同士の婚約というのも当たり前ではないから、片方が在学中の婚姻もあるとのことで、下手をすると在学中におめでたなんかもあって、辞めていくこともあるらしい……。

 貴族の世界は奥深いわぁ……。

 生々しくて私の倫理観に結構抵触しちゃってるわぁ…。


「ですから、別に大丈夫だと思いますが、ミチルが嫌ならやめておきましょう。卒業後に作ればいいだけですから」


 結婚指輪か……うーん……そうだな……。

 ……あ、そうか、そもそも何で学生結婚することになったかと言えば、皇女対策だった。


「指輪、作りましょう」


「え?」


 私の言葉が予想外だったようで、ルシアンが聞き返した。


「私たちが婚姻しており、お揃いの指輪をして、誰から見ても入り込む隙がないと思わせないといけません。そうでなければ何の為に早めて結婚するのか意味がなくなってしまいますわ」


 ついでに結婚指輪文化を流行らせよう。

 どうせならアルト家に儲けてもらおう。

 屋敷やらドレスやらなんやかやとお金使ってもらうのだし。


「アルト侯爵家に、宝石の採れる鉱山はありませんか?」


 アレクサンドリア家は、こんな名前なのに鉱山を持ってない。

 完全に名前負けだよね!


「ありますよ。サファイアが採れます」


「サファイア、いいですね」


 サムシングフォーですよ!

 新婚ほやほやの英国人男性が、結婚に際してサムシングフォーを用意したって話を散々してたからね。覚えてますよ。


「あちらの話をしてもいいですか?」


「えぇ、勿論」


「サムシングフォーというおまじないがあるのです。

先祖代々受け継がれている財産や宝物、という意味のサムシングオールド。

新生活への一歩を踏み出す、という意味のサムシングニュー。

幸せな生活を送っている人の、幸福をおすそ分けしてもらう、という意味のサムシングボロード。

花嫁の清らかさと誠実な愛情、という意味のサムシングブルー。

この4つを結婚式に取り入れると、幸せな結婚が送れる、というものです。

古いもの、新しいもの、借りたもの、青いもの、ですね」


 なかなかステキだよね。


 ルシアンは執事に紙とペンを持って来させ、私の言ったサムシングフォーをメモしていった。


「サファイアを結婚指輪に埋め込んで、サムシングブルーにしたいのですね?」


「可能であれば」


 こうなったら、全力でルシアンに愛されてる感を前面に出して行こうと思います!

 俺の嫁を表す指輪に、しかも幸せな結婚を願ってのサムシングフォーですよ。

 新妻の為に用意された屋敷。

 いいんじゃないの、祝福されまくってる結婚って雰囲気が出てると思いますよ!!

 あぁもう、自棄ですよ、自棄!! これぐらいふっきらないとやってられない!

 やってやるわ!!


 ルシアンのアスコットタイに付けるブローチ、用意したら付けてくれるかな?

 アスコットタイも一緒に。

 ふふ……ネクタイを相手に送る意味は、あなたに首ったけ。ついでにネクタイピンは、あなたは私のもの、って意味ですよ。うふふふふふ。


「ルシアン、私、これからいくつかあなたにプレゼントするものがありますわ。準備出来次第、お贈りしますね」


「私にですか? 嬉しいです。それは、伺っても大丈夫なものですか?」


「香水と時計ですわね。

香水の意味は、あなたと親密になりたい、というものです。それから、時計は、あなたを束縛したい、という意味です」


 直球だったので、さすがのルシアンもちょっと顔が赤い。

 やめろ、可愛い。


「念の為言っておきますが、皇女対策ですよ?」


「それでも、嬉しいです」







 それにしても、在学中に結婚する生徒が私たち以外にもいたなんて。これは知らなかった。

 っていうかそんな仕組みだったことを知らなかった。

 まぁ、ミチルの知識って偏ってるから仕方ないよね。


 結婚式は3か月後の9月中旬だ。

 ジューンブライドとかに思い入れはないから大丈夫だ。

 何しろ、ジューンブライドしといて、部下の女性と浮気して、別の部下が刺殺される切っ掛けになった上司がいるからな!!


 9月から住む屋敷には、私専用のキッチンがあると言うから、楽しみだ。

 料理が好きなだけ出来るじゃないですか。

 前世の私の趣味は乙女ゲームと料理だったのだから。

 乙女ゲームは心の栄養。料理は身体の栄養。


 そういえば、皇女ってどんな人なんだろう。

 ものごっつい美少女だったりして?

 ……え? ルシアン、何で私を選んだ……? っていう状況になったりして……?

 あぁ、そういえばキャロルだってそうだった。

 あんな可愛くて華奢で細くて、男子なら断然キャロルなんじゃ?! って思ったのに、貴族の男子諸君はキャロルに見向きもしなかったんだよね。

 なんでだろう?

 可愛いだけならモニカもずば抜けて可愛いもんねぇ。

 ある時からモニカの、他人近寄らせないオーラがなくなって、とっつきやすい侯爵家の美少女!に変貌してたからなぁ。

 可愛いけど無茶苦茶なキャロルを選ぶ必要ないよなぁ……可愛くて身分のある令嬢いっぱいいるもんね。

 貴族に必須な空気読むスキルもキャロル持ってないしなぁ……それが致命的かも。

 今話題の皇女だって、皇女だけど立場微妙だよねぇ。

 貴族社会で、立場が不安定な人は敬遠されるからなぁ。厳しい世界だよね。

 女帝も、余計なこと考えないで、妹のバフェット公爵の子息と娘を結婚させるとかすれば良かったのに。

 やっぱり、息子が可愛かったのかなぁ。


 あぁ、なんかこうしていると余計なことばっかり考えちゃうなぁ。

 元々何でも考えてしまう所がある上に、基本がネガティブ思考だから、考えたって良い方向に行きっこないって分かっているのに。

 考えたって、自分のことじゃなければ、答えは全て私以外のところにあって、どうしようもないってこれまでの経験で嫌っていうほど知ってる。

 自分で決められることは、実はそう多くはない。

 でも私は、ルシアンを誰にも渡さないって、これまでも何度となく決めてきたのだ。

 キャロルが私に文句を言って来たときも、皇女が来るのを阻止する為に、ルシアンの結婚が最適だと言い切ったときも、無意識なのか意識的なのかはこの際どうでもいいけど、その選択をしてきた訳だ。

 つまり、どういうことかと言うと、現時点の私は今生の人生を諦めてないってことだ。

 昼間も思ったけれど、皇女だろうがキャロルだろうが、全力でお相手させていただきますよ!

 モブはヒロインと違って苦労経験が多い訳ですよ。不足分はその経験値で補えるだけ補ってやる。

 やるだけやって駄目だったら、それこそ大いなる力による補正が入って人生が崩壊するなら、とっとと転生させてくれっていうんだ。


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